第6話

「司書さん。話があります」


「なんですか。」


司書はそういうと手に持っていた本をパタンと閉じた。


「校則とはなんのためにあるんでしょうか?」


「校則ですか。」


「僕は今度の生徒会長選の立候補したいと思います。そこで、校則をある程度緩くするのを制約として掲げているのですが、正直校則自体に疑問を抱いているのです。」


「私も校則について少し疑問に思っていた部分はあるので一緒に考えていきましょうか。あそこの椅子にでも座りますか?」


「え、でも、司書さん忙しいんじゃーー」


「忙しくなんかないですよ。あなたほぼ毎日私と話してるのにわからないんですか?」


「いえ、いいなら大丈夫ですが」


2人はいつもの場所を離れ、図書室の中央に設置されているテーブルへ向かった。そこではある生徒は勉学に勤しみ、またある生徒は友達との会話を楽しんでいる。


「では、紙とペンを持ってきますね。」


「はい。」


司書は事務所に戻る。生徒は居心地が悪そうにテーブルに座ったままである。



それからしばらくして司書が戻ってくる。


「すみません、探すのに時間がかかってしまって。」


「いえ、大丈夫です。早く始めましょう。」


「では、あなたは特に何の校則をなくしたいのですか?」


「俺は、自転車通学の禁止と髪の風紀違反の緩和です。」


「なるほど。まあ、私がいたときとはあまり変わってないですね。」


司書は少し悩むと話し出した。


「では、私の考えを話しますね。私は最低限の校則以外は要らないと思います。例えば、風紀面の髪の長さなど勉強に関係ないことですね」


「それは僕も思います。勉強に関係ないからと言って禁止することは矛盾しているのではないのかと思うのです。」


「少し話が変わりますがアメリカではあなたと同じ考えかた、つまり勉学に関係ないから規制しないという考え方です。では、それを主張してみてはいかがですか?」


「…………」


「あの、大丈夫ですか?」


「あ、すみません。どうしてそんなに協力してくれるのかと。」


「嫌でしたか?」


「いえ!別にそんなわけでは!ただ、俺が会長になったらこの時間も無くなっちゃうんじゃ

ないかと思って。」


「私はあなたのために頑張ってるんじゃないですよ。」


「へ⁉︎」


生徒は思ってもいないような声を出し、手で口を塞いだ。


「私はあなたのためではなく、あなたの夢のために頑張っているのですよ。だからあなたにーー」


「嘘……ですよね……」


2人の間に電気のような緊張が走り、空気がピリつく。


「司書さん。ホントのこと言ってください。あなたはどうして。」


「君はすごいね。本当に優しい。」


生徒はその日見た司書の顔を忘れることはないだろう。笑顔の裏にある悲しみと尊敬。そして、その泣き出しそうな目を。


「す、すみません。今日はこれで。」


「ええ、では。いってらっしゃい。」


こうして、2人の昼休みは終えないまま終えた。

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