第5話

「司書さん……。いない。」


生徒は辺りを見渡す。それでも司書の姿は見当たらない。


「まあいいか。」


生徒は図書室を去っていった。





「司書さん。話があります」


「なんですか。」


司書はそういうと手に持っていた本をパタンと閉じた。


「昨日はどうしたんですか?」


「ああ、少し用事があったんですよ。」


「用事?」


「そうですよ。ちなみに、あなたには関係ありませんので大丈夫ですよ。」


「もしかして、居なくなったりーー」


「しませんよ、心配しすぎです。で、話とはなんですか」


「いえ、今日はただ話がしたくて。昨日の分も。」


「なるほど、寂しかったんですね。」


「ち、違います!別にそんなわけではない……です……」


生徒は司書から目を逸らす。


「そうですか。では、私から質問でもしましょうかね。」


「なんですか?」


「あなたは、なぜこの図書室に来るのですか?」


「え……⁉︎」


2人の間に少しの沈黙が流れる。窓の外では忙しなく春のかぜが葉を揺らしている。


「そ、それは、あなたと話がしたいから。」


「そうですか、私もですよ。」


「そんなこと聞いて恥ずかしくないんですか?」


「恥ずかしかったら聞きませんよ。と言うより、こんな話が楽しいんですよ。」


司書は生徒の顔を覗き込むように答える。


「う、近いです。」


「フフッ」


「じゃあ、ありがとうございました。」


「はい、いってらっしゃい。」


「いってきます。」


生徒は今までで初めて返事をして部屋を去った。

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