第4話

「司書さん。話があります」


「なんですか。」


司書はそういうと手に持っていた本をパタンと閉じた。


「雨ですね。」


「そうですね。」


外は雨が激しく降っており、とても止みそうにない。


「俺は雨が嫌いです。」


「そうなんですね。」


「司書さんはどうなんですか?」


「私は好きですよ。雨。」


司書は窓を覗きながらそう答える


「どうしてですか?」


「そうですね。私も昔も雨は嫌いでした。」


「そうなんですね。じゃあなんで好きになれたんですか?」


「私は雨に感謝しているのですよ。」


「感謝……?」


「ええ、だって雨が降るから晴れが待ち遠しくなるのではありませんか。」


「でも、雨って憂鬱な気持ちになりませんか?」


「なりますよ。でも、そんなことで憂鬱になんてなりたくないって思いの方が強いのだと思います」


「そうですか。俺はとても雨が嫌いです。」


「それは、憂鬱になるからですよね?」


「ええ。」


「珍しいですね。あなたが天気如きにそのようなことを思うなど。」


「俺はそんな人間ですよ。」


生徒は笑いながら答える。


「いえ、あなたはとても優しい。それは紛れもない事実です。」


「わかりませんよ。こう見えてなんかやらかしてーー」


「それでもですよ。あなたは優しい。私が言うのですから優しいのですよ。だから、雨なんかに気を取られないで頑張りなさい。」


生徒は呆れとときめきの混じったため息をつく。


「そうですね。ありがとうございます」


「では、いってらっしゃい。」

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