「私も」


「嶺名さん」


「私も。好きです。あなたのことが」


「嶺名さんっ」


 抱きあう。ふたり。


「おねがいが、あります」


「僕も、同じことを、思ってます」


「私の中の、わたし。きっと、わたしも、居場所がなかったから。わたしを、ずっと、ここに、いさせてあげたい」


「僕も、そのほうがいいと思ってます」


「私が、わたしになっても。好きでいて、くれますか?」


「努力します。普通のあなたのことも。エイリアン映画を見るあなたのことも。きっと、同じように、あなたです。それは、変わらないと、思います」


「ありがとう」


 空。


 一面の、紅。街を染める、朝陽。


「もどってきて。あなたは、ここにいても、いいの。ここに。また、この景色を、眺めていいのよ」


「あ、あの。ええと」


「えっ」


「ごめんなさい。その。どうやって戻ったのか、わたしにも。ええと、とにかく、ごめん、なさい」


「あなた。名前は、分かる?」


樋片ひかた頼衣らい。レンタルショップ勤務。ええと。ごめんなさい」


「それだけ?」


「あなたのことが、好き、です」


「私も好き。わたしも、あなたも。両方好き」


『好きです。だいすき』

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