02 Love,

「僕は、好きでした。あなたのことが。数日前の、いなくなるまでのあなたが」


「今のわたしも、あなたのことが、好き、だと思います。でも、それはわたしのことで、私のことじゃない」


「そうですね。あなたは、彼女じゃない」


「ごめんなさい。わたし。急に現れて。私を。あなたを。傷付けてしまって」


「あなたはここにいるだけじゃないですか。傷付いてませんよ。僕も、きっと彼女も」


「でも。わたしは。あなたの名前すら、わからない」


「そうですね。じゃあ、自己紹介から始めましょうか。僕の名前は」


「待ってっ」


「お」


「待って、ください」


 空。


 紅の、朝陽。


 街の景色。


「同じ」


 最初の、あのときと。同じ景色。


「わたし、この景色の向こう側から。来たんです」


 だから。


「今なら。あの景色の向こうへ。行けるかもしれない」


 強く、思った。


 わたしは、ここにいちゃ、いけない。いけないから。


 どこかへ行こう。この景色の向こうへ。どこか、知らないところへ。


「ありがとうございました。おすすめされたドラマ。おもしろかったです。頭と額を冷たくしたやつも。このハンカチも。ありがとうございました。好き、でした」


 紅く染まる空。その、向こうへ。

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