24.家族/四葉よもぎside


今日はなずなと海とで一緒に動物園に行く日


私は朝から鏡の前でそわそわしていた


今日のために昨日急いで買いに行った服。初めて着る少しだけ胸が強調される服


‥変じゃないかな?


何でそんな服にチャレンジしようと思ったのかは自分でも分からない

ただ、多分これは‥浮かれている?


そんな事を考えながら、何度目になるのか分からない前髪の角度をまた少しかえた



そろそろ時間かもしれない

ちなみに、海が家まで迎えに来る事になっている

『女の子を‥特になずなちゃんを外で待たせたくない』って、なんだか海らしいと思った


リビングに行くと叔父と叔母がなずなを構っている


「うみおにぃちゃん、まだかなー」


「なあ、なずな。パパとその海お兄ちゃんだったらどっちの方が格好いい?」


「うみおにぃちゃん!」


叔父さん‥



そんなやり取りを見ていると、私を見た叔母が


「あれ?よもぎ?‥ふーん。これは私も挨拶しないとね」


と笑っている

そこで、タイミングよく海からメッセージが届いた


海:着いたぞー



叔母となずなと私の3人で玄関を出ると、前みたいに早速なずなが海に飛びついてくるくる回っている


なんか、いいな

2人で笑い合っている姿を見てそう思った



「海君、よもぎとなずなの母です。今日はうちの可愛い娘達をよろしくね」


「初めまして、海北海です。はい、任されました」


「ふふっ、貴方なら任せられそうね。色んな意味で」


「?はい、ありがとうございます」


「それじゃあ、よもぎも。気を付けて行ってらっしゃい」


そう言って叔母に送り出されて動物園へと向かった




「ふっふふーん♪ふっふふーん♪」


海となずなと私で並んで手を繋いで歩きながら、なずなが何か歌を口ずさんでいる


「今日は来てくれてありがとね」


「いや、あれは断れない」


「そうだね」


思わず口元が緩んだ


「しかし、なずなちゃんご機嫌だな」


「楽しみにしてたから。約束した次の日から毎朝、今日動物園?って聞いてきたからね」


「おー、それはしっかり楽しませなきゃな」


「ねぇ、うみおにぃちゃん」


「ん?どうしたの、なずなちゃん」


「なずなとおねぇちゃんね、あたらしいおようふくなの。かわいい?」


「おう、2人とも可愛いぞ」


「やったぁー」


なずなが飛び跳ねて喜んでいる


可愛い‥

海に他意はないんだろうけど‥嬉しい





「きりんさんだぁぁ」


柵が高かったので今は海がなずなを肩車していて、なずながはしゃぐので海が少し焦っている


「大丈夫?」


「最悪、足だけは絶対に掴むから宙吊りで背中に張り付いてビターンってなるかもしれない」


想像すると笑ってしまった


「楽しそうだな?」


「海もね」


2人して笑いながら、はしゃぐなずなを見上げる

ああ‥温かいな




次に動物触れ合いコーナーに来た

なずなが兎さんに人参のスティックを食べさせていて、海がその兎さんを撫でている

私はそれを写真に収める


すると、係の女の人に声をかけられた


「お写真、良かったら撮りましょうか?」


「おねぇちゃんも、おしゃしんはいって!」


私達に気付いたなずながこっちに来てと手まねきしている


「あら?親子じゃなかったんですね。少し若いけど、親子かと思っちゃいました」


「はい‥あの、写真お願いします」


そう言って、真ん中に兎さんを抱っこしたなずな

なずなを挟むように寄り添った海と私の写真を撮ってもらった


「ありがとうございます」


そう言ってカメラを受け取りながら、明日は写真立てを買いに行こう、そう思った




お昼になったので、草原のような広場にシートを広げてお弁当を食べる事にした

お弁当は私と叔母で昨日のうちに下ごしらえしておいた


「うみおにぃちゃん、あーんして」


「おう、いいぞ!どれが食べたい?」


「はんばーぐ!」


「ほい、あーん」


「あーん」


やってる方の海まであーんって口を開けてる‥ついやっちゃうよね、あれって


「この唐揚げ美味いなー」


「それ、私が作ったの。ありがとう」


「えっ?本当に?すごいな、まじで美味い」


「うん、喜んでくれると作ったかいがあるよ」



‥今日はずっと胸の奥が温かい




お昼ご飯を食べ終わると少し疲れたのか、なずなが寝てしまった

海の膝に頭を乗せてすやすやと眠るなずなの頭を海が優しげに撫でている



海がいて、私がいて、なずながいる


そこで私は幻視する

お父さんがいて、お母さんがいて、私がいて

動物園ではしゃぐ私


それは私が手に入れられなかったもので‥



心の中ではきっと私がずっと‥‥欲しかったもの



そっか‥


私は将来、海とこんな風に温かい家庭を作りたい

そう‥思ってしまったのだ


もう、こんなの

海の事が好きで好きで、大好きみたいじゃない



「しかし、気持ちよさそうに寝るな」



ああ、こんなに簡単な事に



「海もされたい?膝枕、してあげようか?」



何で今まで気づかなかったんだろう



「ははっ、そういうのは好きなやつが出来たらやってやれ」



私は海の事が‥



「好きだよ」






「私は海の事が好き」




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