18.小悪魔と火曜日


火曜日


昨日、動き過ぎて全身が痛い

先週は放課後にほぼ毎日雨宮と練習していたが、やっぱり2年以上のブランクはきついかぁ‥

まあ、それでも少しはいい所見せられたかな?

バスケ好きっぽいし、そこそこいいプレイはできた‥はず

初戦の大地のマークがきつい中でのフェイドアウェイは良かった。うむ、自画自賛




家の玄関を出ると離れているが、見える所に彩花がいて、そこから目を逸らすように逃げるように足を早める


‥これも先週から変わっていない




学校に着くと


「海北君、おはよー!」

「海北先輩、おはようございます!」

「あっ、海北君やっほー!」


1年の時のクラスメイトやら、読書部の部室で見たことある人にやたらと挨拶された

一応挨拶は返すが‥何だ一体?


うーむ‥と首を傾げながらクラスに入ると、空橋もうーん‥と言わんばかりに眉間に皺を寄せ、目を瞑って腕を組みながら何かを考えているのが見えた

疑問に思いつつ、席につく


「おはー」


「おはよう」


いつも通りによもぎと朝の挨拶をすると


「よーっす、海」


照史が会話に混ざってきた

昨日散々バスケ部への勧誘を躱したがまた勧誘か?


「昨日はお疲れ、今日は妙に声掛けられたんじゃねーか?」


「おー、そうなんだよ」


「勉強ができて、昨日の球技大会での活躍で運動も出来る事が分かって、別れたって話が広まってるから彼女がいない事も分かってて、ガードも固いから彼女になったら大事にしてくれそうな超優良物件‥って話らしいぜ?」


「うげっ、何だそれ」


「俺もすでに3人から紹介してくれって言われてんだけど、どうする?紹介されてみるか?」


照史がニヤニヤしながら言うが


「悪いな‥‥そういうのはまだ、勘弁してくれ」


俺は少しだけ苦い顔をして答えた

すると照史はパァンと俺の背中を叩いて


「痛っ、て、こら!」


「まっ、気が向いたら合コンでも紹介でもしてやるから、いつでも言ってくれ」


ニヤニヤした顔のままそう言うと背中を向けて手をヒラヒラしながら自分の席に戻っていった

まったく‥ほんとにあいつはお調子者で‥いい奴だな




「ふーん‥‥まだ、ね」


よもぎが俺と照史を見ながら何か考えているようだった




昼休み

大地に誘われたので屋上へ行く


「おっす」


すると、


「海せんぱーい!地崎先輩!こんにちはー」


雨宮が来た


「ん?雨宮後輩、どした?」


「俺が誘ったんだよ、海と飯食うから来ないかって」


「へー、繋がりあったんだ?」


「昨日ちょっとな」


「そうなんですよー、地崎先輩は協力者です」


協力者?あー、バスケ部の撮影とかに協力してもらうのか

そのまま俺と大地と雨宮で雑談しながら飯を食っていると雨宮が何かを思い出したかのように聞いてきた


「海先輩は小悪魔系の後輩ってどう思いますか?」


「ちょっと何言ってるか分からない」


「クラスの友達に言われたんですよ、年上には小悪魔系後輩キャラが需要があるって」


ん?狙ってる年上でもいるのか?‥大地じゃないよな?大地っぽかったらちゃんと止めてやらんと


「小悪魔系って例えば?」


えっとー‥と言いながら雨宮がスマホを操作する


「出会い頭に抱きついたり‥」


「‥するのか?」


「できませんね。各種内臓が飛び出たり止まったり破裂します」


「グロいな‥他には?」


また、雨宮がスマホを操作する


「お弁当を作ってきたり‥それであーんとか」


「‥料理できんの?」


「できませんね。調理実習で食材が炭化しました」


「尊い犠牲だな‥他には?」


また、雨宮がスマホを操作する


「勝手に家に上がり込んで、ベッドにマーキングしつつ枕の匂いをクンカクンカと‥」


「‥‥」


「しませんよ!?うー、私には小悪魔系は無理みたいですー」


「くっ、はは!雨宮後輩はそのままで充分だよ」


「そっ、そうですよね!?あっ、この後の授業、私体育でした!着替えないと‥それでは海先輩、地崎先輩、またですー」


そう言って雨宮は手を振って駆けていった

それを見て大地が笑いながら言う


「面白いやつだな」


「ああ、あいつといると退屈しないよ」


「だろうな。お前いい顔してんだよ、雨宮といる時」


いい顔ねー

確かに、もうマジではやるつもりが無かったバスケをやれたのも雨宮のおかげだしな

正直球技大会はめちゃくちゃ楽しかった

中学の時のバスケ部の後輩に涙ぐまれた時は焦ったけど


「そうかもなー」


と返すと大地はニカッっと笑った



おう、お前の方がいい顔してるわ




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