7.変わりゆく水曜日


水曜日


いつものように1人で朝食を済ませて

いつもと同じ時間に家を出る

そして、高校の最寄駅に着くといつもの待ち合わせ場所に向かおうとしてしまった自分に苦笑する


少しづつ慣れていかないとな‥


今日から彩花のいない日常が始まる




学校に着いてクラスに入ると空橋が目に見えて落ち込んでいる

ちなみに、大地と空橋には昨日メッセージで別れた事を伝えている

あの状態の彩花を空橋なら元気付けられるかもしれないという打算もあった


と、大地からメッセージが届いた


大地:花島は今日休みで、美空には話通してあるから昼に屋上で少し2人で話そうぜ


海:分かった


今日は昨日のように曇ってはいるが、雨の予報は無かったから大丈夫だろう




昼になったので教室を出て屋上へ

すでに大地がいたので声をかける


「おっす」


「おう」


2人で屋上の手すりに腕を置いて校庭を眺める

サッカーをやっているやつらが何人かいた

あいつら昼飯食ったんだろうか


「やっぱり許せなかったか?」


「あぁ、色々考えたけどダメだった」


「親の事があったから‥ってのもあるのか?」


「まぁ‥な」


「そっか‥‥‥あぁぁぁあ、共感してやれねぇのがもどかしいわ!」


「はは!お前はホントいい奴だな」


「親友だからな!」


「共感ねぇ‥んー‥‥例えばさ、俺と空橋がキスしてるところを大地が見たらどうする?それでも空橋とやっていけるか?」


「それは‥‥‥‥‥‥‥はぁ‥‥無理‥‥だな」


「だろ?」


「むしろ、泣きながら幸せにしてやってくれって海に頭を下げるかもしれん」


「は?何だそれ」


「俺が男として勝てないって思うのはお前だけだからな。海なら俺より幸せにしてやれるかもって思っちまうかもしれない」


何こいつ、俺の評価高すぎない?


「俺のこと好き過ぎない?」


「まぁ、俺が女ならお前一択だよ」


「気持ち悪っ!」


そうして2人で笑い合った

大地なりに俺を励ましてくれているのだろう

俺も女だったらこいつに惚れてるかもな




「話‥終わった?」


気付いたら後ろに空橋がいた

そういえば空橋に相談したい事があった


「おう、空橋、ちょっと聞きたい事があるんだけど」


「ん?何かな?」


「カップルが別れた時に女の子側が悪くならないような理由って何かある?」


「!お前‥」


大地が察したようだがスルーする


「えーっと‥こないだ彼氏と別れた子が彼氏が全然手を出してこない、男らしくない、って理由で振ったって言ってて、周りは分かるとか男らしい人がいいとか共感してたりしたけど‥」


「なるほど‥彩花のキャラとは違うかもだけど、その方向でいってみるか」


「ひょっとして‥」


「まぁ、俺は浮気って行為が許せないってだけで、恋人を続ける事は出来なかったけど彩花という1人の女の子が嫌いなわけではないからな」


だから悪く言われるなら俺でいい


「海北君‥」


「ったく、海らしいっつーか」


「友達として今まで通り仲良くとかは出来ないけど‥あっ、2人とも、本当に別れた理由は口外禁止な」


誰にも言わないと信じて言ってしまったが雨宮にも改めて言っておかないと




放課後

まだクラスにはかなり人が残っている中、そこそこ仲のいい奴が絡んできた

明星照史

茶髪で長めのツーブロック

このクラスの陽キャ代表みたいな奴でお調子者だが根はいい奴だ


「あれ?海まだ帰らねーの?彼女のお出迎えがないじゃん」


休んだ事を知らないのだろう

丁度いいタイミングかもしれない


「あー、実は別れたんだよ」


「は!?マジで!?」


何人かの雑談の音が止んだ

クラスメイトの何人かは聞き耳を立ててる気がする


「俺ってあんまり男らしくないじゃん?だから見限られて振られてしまったのだよ」


「ぶははは、だせー!」


「ははっ!うるせーよ!」


「でー、何やらかしたんだよ?」


「そのあたりは深く聞かないでくれ、俺の僅かな男の沽券に関わる」


「おーおー、そんな傷心な海のために今度合コンを開いてやろう」


「やだよ、照史の開く合コンとかギャルしか来なそうじゃん」


「海にはギャルの良さから説明する必要があるなー」


「いや、ギャルに偏見はないけどノリについていける気がまるでしないわ」


なんてバカな話に花を咲かせる


俺も落ち込んでいる素振りは見せていないし、これで悪評は立たないだろう



しかしこいつ、マジで合コン開いたりしないだろうな?




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