4.憂鬱な月曜日


月曜日


鳴り響く目覚まし時計をゆっくりと止める

そういえば、この目覚まし時計は彩花と一緒に色違いでお揃いの物を買ったんだった


買い換えないとな‥


こういうものが残っていると引きずる気がする



‥やっぱり、彩花とはもうダメなのだろうか



リビングへ行くとテーブルに朝食が置いてある

母さんはすでに仕事に出ており

真凛は月火水は部活の朝練なので、家には誰もいない

ゆっくりと朝食を食べながら時間を確認する

まだ時間に余裕がありそうだったので、まだスッキリしていない頭をシャワーで覚ます事にした




高校の最寄駅

高校がある方向とは逆側の改札へ向かう

俺と彩花は家の最寄駅が違うので、登校時はいつもここで待ち合わせをしている


何故逆側の改札なのかと言うと、単純に人通りが少ないので待ち合わせしやすいのと、少しでも長い時間高校に向かいながら手を繋いでいられるという理由もあったりする



「おはようございます、海君」


「おはよう、彩花」


お淑やかでいながらも華のある笑顔で挨拶をしてくる彩花に俺はちゃんと笑顔で返せただろうか


彩花が手を繋いでくる

‥あの写真の、手を繋いでいる姿を思い出してしまう

胸の内をもやもやと侵食するこれは‥‥嫌悪感だろうか?


気持ちが落ち着かない


胸がザワつく



やっぱり彩花とは、もうダメなのか‥確認したい



「彩花‥ちょっといい?」


そう言い、返事も聞かずに人目のつかない所に移動し、彩花を抱きしめた


「海君‥‥?」


彩花は困惑しているが


「ごめん‥少しだけ‥このままでいさせて‥」


手を繋いでいる時も、抱きしめている時も、あれだけ温かいと感じていたのに


今は‥


心は寒いと感じていた


つられるように体も震える


「大丈夫だよ‥」


彩花が優しい声で頭を撫でてくる


胸のザワつきが広がる


あぁ‥


やっぱり‥


俺が今の彩花に抱くこれは疑いようもなく


どうしようもなく‥







嫌悪感だった







「もう大丈夫。ごめんね?」


「ううん、嬉しかった」


「学校行こうか」


「はい、行きましょう」


また、笑顔で手を差し出してくる彩花の手を、俺は無理して笑顔を作って繋いだ




一時間目の授業が終わった休み時間、大地からメッセージが届いた

ちなみに、俺と空橋が同じクラスで大地と彩花が同じクラスである



大地:一時間目が始まる前に花島が保健室に行ったけど、ひょっとして朝別れたのか?


海:いや、まだ別れてもないし、あの事言ってもいないけど‥登校の時は別に普通だったけど


大地:そっか。保健室へは?


海:次の休み時間に行ってみる。ただ、今日の昼は行くのやめとく。委員会とでも言っといて


大地:分かった



ちなみにいつも昼は暗黙の了解で晴れたら屋上、雨が降っていたら食堂に集まっている

今日は今は曇っているが昼前に降りはじめるかもしれない


次の休み時間

保健室へ向かう前に大地からメッセージが届いた


大地:花島が戻ってきた。軽い貧血だったらしい


俺は安心したように息を吐いた

それは彩花に何もなくて良かったからなのか

彩花と顔を合わせずに済んだからなのか

自分でもよく分からなかった



昼になったので空橋にも今日は一緒には行かないと伝え、教室を出る

教室からも見えていたが、廊下の窓から外を見ると小雨が降っていた

‥そう言えば折り畳み傘を忘れた


あまり食欲も無かったので購買で10秒チャージを買い、その場で飲み込む

さて‥どうしよう

特に理由もなく体育館に行くと何人かの顔見知りがYシャツでバスケをしていたので混ぜてもらった

久しぶりのバスケは楽しかった




放課後、今日はもう彩花と顔を合わせたくなかったのでメッセージを送る事にする


海:悪い、用事があるから先に帰る


先に帰っててだと待たれる気がしたので先に帰ると送り、顔を合わせないようにすぐに学校を出る


雨の冷たさが心地いい

このまま嫌な気持ちも流してくれれば‥


電車には乗らずに雨にうたれながら考える

ごちゃごちゃとした頭の中を必死で纏めるように



彩花はまだ俺を好きでいてくれているのだろうか?

‥‥関係ない

それとも、もう俺の事は好きではないのだろうか?

‥‥彩花は浮気をした

浮気させてしまう方にも問題があるのかな?

‥‥だから明日

ダメな彼氏でごめんな

‥‥別れよう



ずぶ濡れのままに家に帰る

まだ誰も帰ってきていないようなので玄関で濡れた制服を脱いで部屋へ向かう

着替えだけ済ましてそのままベッドへ倒れ込むようにして眠りについた




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