事後処理班
クルスは食堂から出た足で受付に向かい、そこで出勤確認をされた。その時は、シフトの都合かリリーナは受付には居なかった。
わざわざリリーナについて尋ねるのもおかしいと思ったので、そのまま待機場所に移動した。
待機場所となっている部屋の扉を開けると、中にはすでに
「よお、お前が新入りか。ハードに働いてもらうって聞いてるぜ」
待機部屋に入るなり、寸胴の男が言った。脚が猛烈に短い上に紙も髭もぼうぼうに伸ばしきっている。
クルスは自分も髪型には気を遣っていないが、こんな奴がいるなら自分も大したことないなと安心した。
「ああ。よろしく頼む」
クルスはうなずいた。それから、部屋の中に他にも5人ほどいる事後処理班の面々にも軽く頭を下げた。
「全く、ひょろっこい体しやがって!そんなんで役に立てるのかぁ?」
「ま、頑張るよ」
クルスはつぶやくように言ってから、ベンチの片隅に腰を下ろした。
「悪いね。あの人なりのあいさつなんだ」
髪の長い青年が笑って言う。
「新入り、名前は?」
「クルスだ」
クルスは短く答えた。余計なことを言っても損をするだけだということは最近身に染みてきた。自分はもっとシンプルに生きるべきなのだ。
「腰を下ろしてもらって悪いけど、すぐ仕事だよ」
髪の長い青年は肩をすくめながら言った。
「ちなみに、俺の名前はベンドだ。ま、すぐに前線に出るって話だし、覚えてなくてもいいよ。ちなみにあっちの寸胴な人はポットさん。事後作業班班長さ」
「ベンド!一々うるせぇぞ!」
ポットはベンチから飛び上がって吠えた。
二人の名前は短かったし、単純だったので、クルスは覚えられる気がした。
数日間と言う短い付き合いにはなるのだろうが、今後世話になるのだろうから、覚えても損はない気がした。
ベンドはクルスの格好をじろじろと見つめた。
「しかし、お前、そんな格好で現場作業するつもりか?」
「俺はいつでもこの格好だが・・・」
クルスはそう言って自分の格好を見た。いつもの通り、黒いコートにネクタイと言う無難な格好だ。
「まぁ、無難ではあるけどもね」
ベンドは苦笑いを浮かべた。ポットは、すぐにわかるだろうさ、とつぶやいた。
とりとめのない会話が少し落ち着いてきたころ、ピーポポポポピーポポという音がスピーカから漏れてきた。
ポットはその音を聞くと、急いでメモを握ると、スピーカの傍の機械のボタンを押したり離したりした。
そして、その音を聞いてはメモをはじめた。
クルスは訳が分からないまま周囲を見回していた。
「今受けてるのは通信だ。上空の監視から、指示を受けててね。群れが途絶えたらすぐに作業できるように、今から準備さ」
そう言ってベンドは顔をしかめた。
「今日は忙しそうだな」
すると、事後作業班の面々がゆっくりと立ち上がり始めた。
「壁の支柱でも壊されたかもな」
ベンドは体を伸ばしながら言った。
「なんでわかったんだ?」
クルスは立ち上がりながら訪ねた。
「そりゃ、経験さ。何度も仕事してれば分かるようになるさ」
クルスの質問の意とは若干異なった答えが返ってきたが、クルスはそのまま相槌を打った。
クルスはこの「ピー」と「ポ」の組み合わせによって構成される符牒のことを全く知らなかったのだ。
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