第7話

目が覚めたとき、私はベッドの上だった。軽い脳震盪をおこしたようだった。私は何が起こったのかわからないまま夏樹を探したが、彼の姿はどこにもなかった。


 翌日、私の病室に警察の方が来た。一気に空気が重くなったのがわかった。私は「なにも聞きたくない」そう思ったのか無意識に耳を塞いでいた。警察の方はゆっくりと、少しずつ話を始めた。夏樹が飲酒運転の車にはねられて死んだということ。あのとき突き飛ばしてくれたおかげで私はこうして生きているということ。たおれていた夏樹がクッキーの包みを握りしめていたということ。


私は昨日、意識が戻ってから、どこかで夏樹の死を受け入れる準備をはじめていたのかもしれない。そんな自分が許せなかった。夏樹は最期、どんな顔をしていたのだろうか。私はわからなかった。でもこんな時に思い出すのは彼の笑顔ばかりだった。あの笑顔を忘れてしまいたい、絶対に忘れたくない。ジレンマの日々だった。


私はあなたがいない十回目の夏にいる。昔と変わらない学校やこの道、セミの鳴き声。あなたが生きた証はここにある。「あなたのことが大好きでした」私は空を見上げて、そうつぶやいた。

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