第2話

「おはようございます」私はそう一言挨拶をして自分のデスクに腰を下ろした。私は食品を取り扱う会社の経理部に所属している。そのため他の部署と顔を合わせることが多い。朝礼後、仕事にとりかかっていると1人の男の人が経理部にやってくるのが見えた。「折笠さん、これお願いします」私は名指しで呼ばれて少々驚いたが、領収書を受け取り作業を開始した。彼はこの会社の総務部の川瀬さんだ。歳は自分の父親と同じくらいであろうか。髪には少し白髪がまじっている。その後も何人かやってきて、作業をしているうちに、終業時間をむかえていた。私は荷物をまとめて、会社を出た。すると入り口に、川瀬さんがいた。川瀬さんはこちらに向かってきて、私に「今年も来るかい?」と聞いてきた。私は迷わず「はい」と答えた。それを見た川瀬さんはどこか寂しげな顔つきで優しく私に「そうか」と言って会社を後にした。私も電車に乗り家に帰った。

部屋の前に立つと、足音で気づいたのか、世那君が隣の部屋の扉から顔をのぞかせてこちらを見ている。世那君は私に手を振ってすぐに家の中に入っていった。私も家の中に入り、お風呂に入って、冷蔵庫から冷えたビールを取りだした。ビールを飲みながら、私は引き出しの奥に大切にしまっていたものを取りだした。

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