54.女子怖ぇ‥‥


「ね、蓮華君。罰ゲーム決まった?」


「そうだよ、ツキ。早く罰ゲーム決めてよー」


朝のHR前、桜乃とサキが両サイドで俺の机に腰を下ろすようにしながら笑顔で聞いてくる。


俺は机に肘をつくわけにもいかず、椅子の背もたれに背中を倒して溜息を吐いた。


「何でお前等、罰ゲームなのに嬉しそうなんだよ。つーか、ほんとに仲良くなったのな」




テストの結果発表から3日経って、昨日の夜のバイトの時に真山から聞いた事だ。


一応テストで桜乃にも負けたサキが桜乃に罰ゲームについて聞いたところ、桜乃はサキと2人で話をしてみたいからと喫茶店でお茶を奢るのを罰ゲームにしたらしい。


それを真山と夕日がこっそり後をつけて、いつオラ無駄バトルが始まっても止められるようにハラハラしながら見守っていたら‥‥ってこいつ等そんなに仲悪かったのか?

確かに桜乃とサキが一緒にいたり話したりしてるとこって見た事無かったかもしれんけど。


とまあ、見守っていたら何か共通の趣味だか知らんが好きなものの話でお互いが知らなかった事とかで盛り上がって、そんで仲良くなったとか。


真山は、桜乃はもっとエグい罰ゲームをすると思ってたとか言ってたけど、何だよエグい罰ゲームって。

女子怖ぇ‥‥




「仲良くはなったけど、友達ではないよ」


「うん、好敵手ってやつだねー」


ほう、テストか?サキは学年2位を奪われたからなぁ。運動の方だと桜乃が勝つ気がするし。



「犬山君、今日の部活の事なんですけど‥‥あ!葉月君、おはようございます」


桜乃とサキの話を聞いていると、ふいに声をかけられた。


「ん?ああ、おはよう」


クラスは知らんが、木之下‥‥だったっけ。

バスケ部だけあって背は桜乃と同じくらいで髪は黒のショート。目鼻立ちがはっきりした猫っぽい顔から活発なイメージが湧くんだが、雰囲気はふわふわしている。


木之下は手を小さく振りながらまたねと言って犬山の方へと歩いて行った。


最近よく犬山のとこに来たついでに挨拶されるんだが、テストの結果を見に行く時に少し話しただけなのに律儀なやつだなー。


なんて考えていると桜乃とサキが顔を近づけて小声で何か話していた。

耳を澄ませてみると‥‥


「‥‥桜乃、どう見る?」


「うん、少し匂うね」


何その格好いい会話。






昼休みになって、いつもの4人で昼飯を食っていると柊木が朝の事についての話を切り出した。


「犬山のとこに最近木之下だっけ?よく来るけどいい感じなん?」


「いやいや、違うよ。ただの部活の話」


犬山は顔を赤くしてフルフルと首を振る。


「狙ってるなら、木之下さん結構人気あるから早めに動いた方がいいぞ。可愛い女子ランキング暫定3位だし」


弁当の箸を止めて猿川も話に乗ってきたが、可愛い女子ランキング?


「何だ?そのランキング」


「まだ1年男子の半分しか集計取れてないけど、新聞部の男子でアンケート取ってるんだよ」


新聞部はヒマなのか‥‥?新聞作れよ。

いや、ひょっとして新聞として公表‥は、しないか。色々と顰蹙買いそうだし。


「そう言えばこの面子には聞いて無かったし、丁度いい機会だから教えてくれ。ルックスが1番可愛いと思う女子は?」


ルックスねぇ‥‥それなら


「俺は桜乃ちゃんかな」


猿川は内ポケットから手帳とペンを取り出してメモしていく。


「櫻井さん‥っと。すでに櫻井さんは2位と倍の差をつけて1位だぞ」


幼馴染としての贔屓目で見なくても桜乃のルックスは圧倒的だからなぁ。


「俺は——」


柊木が身を乗り出したが、


「夕日さんね」


猿川は聞くまでもなくメモに書き込む。


「先に言うなよっ!いや、そうだけど」


「ははっ、夕日さんは今4位だな」


顔を赤くする柊木に猿川が可笑しそうに応じる。

最後に犬山が口を開いた。


「僕は、さ‥木之下さんで」


「木之下さんね、了解」


全員言い終わったところで、柊木が質問する。


「なあ、2位って誰なんだ?」


それはちょっと気になった。

まだ暫定らしいが、1位が桜乃で、3位が木之下、4位が夕日と。2位は?


「2位は5組の白雪さんだよ」


白雪‥‥何か聞いた事あるような‥‥

あ!思い出した。

攻略対象の生徒会副会長の義妹か。桜乃が生徒会に入った場合、何かと桜乃を気にかける義兄にヤキモキして嫌がらせをするようになってゆく。

Good Endだと嫌がらせが義兄にバレて断罪系で、True Endだと桜乃と和解して、お互いにお弁当を作ってきて『どっちが美味しい?』なんて微笑ましい感じで終わる。

ライバルキャラだし、そりゃ可愛いだろうさ。

多分関わる事は無いと思うけど。



そういえば‥‥


「サキは何位だったりするんだ?」


「三崎さん?今は6位だぞ」


6位か。つーかサキならもう少し上でもおかしくないと思ったが。


「そもそも、うちの学校で派手な見た目の子が6位って凄いと思うぞ?嫁の順位が低くて不満か?」


俺の微妙な顔を察したのか、猿川がニヤけた顔でそう補足した。って、


「嫁じゃねーよ。嫁だったら桜乃ちゃんに票いれねーだろ」



だけど‥‥多分だけど、サキの好きなやつって俺なんだよな。

俺はサキを恋人にしたい対象として好きか?この答えはまだ出ない。


この前サキに抱きつかれた時にドキドキはしたけど、俺だって男だし例えば大前とかに抱きつかれてもドキドキはする‥‥と思う。

試しに抱きついてみてくれなんて言えんが。



「今日の帰りのHRで体育祭の種目決めあったよね?何出る?」


考え事の途中で犬山から切り出された別の話題により、その後は体育祭についての話になった。





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