44.葉月蓮華の3分間クッキング


GW明けの週末、母を空港まで見送った俺は帰路についていた。


ちなみに、見送りの際、


『蓮華ちゃん、また来るからねぇー』


母さんはそう涙ながらに手を振ってゲートに入ったのだが、見送りに行くとあれがセットで付いてくるならもう行きたくない。

マジ恥ずい。



っと、雨が降ってきた。


家までの道のりを走ると、家のすぐ近くで珍しい組み合わせの知り合いを見つけた。


「おっす。珍しい組み合わせだな」


そこにいたのは、向かいの家からはみ出ている木の下で雨宿りをしていた真山と夕日だった。


「えっ!?葉月君?」

「あら?葉月君何してるの?」


「いや、そこが俺ん家なんだが」


と向かいの家を指さす。


「「えっ!?」」


「で、真山と夕日は何してんの?」


「私達は情報交‥じゃなくて、今度桃たん家で勉強会やるじゃん?その辺りを含めたガールズトークをね」


と真山が答えると


「そそ。それで向こうにあるランチが美味しいって噂の喫茶店に行こうとしてたら急に降ってきてー」


そう夕日が続いた。


そう言えば、勉強会の場所は夕日の家に決まったな。

流石に10人でファミレスとかは迷惑か?という話から、夕日が家広いからうちでどう?と立候補した。


「外で雨宿りもあれだし、ちょっと濡れてるしうち来るか?」


「「行きたいっ!」」


「おう、お前ら仲いいな」


というわけで家に招待した。




「「お邪魔しまーす」」


「どうぞー」


「あれ?親とかは?仕事かな?」


と夕日が聞くので


「あー‥母さんなら少し前までならいたが‥‥」


と、事情を説明した。


「へー‥それじゃあ料理とかも自分でするの?」


今度は真山から聞かれる。

そうだな。ついでだし‥


「ああ。今から作るけど食うか?」


「「食べたいっ!」」


こいつらほんと仲いいな。




台所で準備をしていると夕日が喋りかけてきた。

真山はキョロキョロしている。


「ねー、葉月君は料理できる子の方が好き?」


「まあ、出来ないよりはできる方がいいんじゃねーか?」


「桜乃料理上手いよねー」


「ああ。この前食ったけど、マジ美味かったわ」


と、そこで真山も話に入ってきた。


「わかにゃんも料理頑張ってるよ!」


「前に手怪我した時食ったけど、確かに美味かったなー‥‥って夕日と真山はどうなんだよ?」


そう聞くと、2人は露骨に視線を逸らした。

夕日はまだいいとして、シェフの娘どうしたよ。




うし。準備完了。


「はい、葉月蓮華の3分間クッキングー。シーフードヌードルにお湯を入れて3分待ちます」


「え‥‥料理ってまさかソレ?」

「いや、美味しいけどさ」


「冗談だよ。まっ、これを使いはするが」


というわけで本格的に調理に入る。



まずは金ザルでスープと麺&具を分ける。


フライパンでバターを溶かして小麦粉を加えたら、シーフードヌードルのスープと牛乳を少しづつ入れて‥‥

シーフード風味のホワイトソースの完成。


次に取り分けた麺と玉ねぎをみじん切りにして、別のフライパンにオリーブオイルを敷いてご飯と一緒にみじん切りにした麺と玉ねぎとシーフードヌードルの具を入れて塩胡椒で味を整えつつ炒めて‥‥

海鮮ソバ飯風炒飯の完成。


後は半熟のオムレツを作れば‥‥終了!


ちなみに調理中も桜乃とサキの自慢をしあっていたが、夕日と桜乃は分かるが、サキにもいい友達ができたみたいで良かったわ。


「ほい、お待たせ。これをこうして‥‥」


形を整えた炒飯の上にオムレツを乗せて、オムレツに切れ目を入れて炒飯を包み込むようにして、上からホワイトソースをかければオムライスの完成だ。


「ふぁー!美味しそう!」

「いやー、料理もできるんだね」


「いや、料理歴1ヶ月だぞ」


「「は?」」


「えっと‥もしかして‥人に料理を作ったの初めて?」


と夕日が吃り


「つまり、葉月君の手料理を初めて食べるのが私達だったり‥‥?」


と真山が続く。


「ああ、そうだが。それよりあったかい内に食ってくれ」


そう言うと2人は



「「ごめんなさい!」」



と手を合わせてから食べ始めた。

いや、いただきます‥だよな?

命をいただきますなんて諸説もあるし、ごめんなさいって言う人もいるって事か?




「くぁぁぁあああ、めっちゃ美味しい!」


夕日が吠えた。美味いみたいで良かったわ。


「葉月君、苦手というか出来ない事はないわけ?」


と真山が聞いてくるが、いや


「興味無い事はできねーぞ?」


「例えば?」


「そうだな。絵とか下手だと思うが」


「ちょっとこれに何か描いてみて!」


真山がメモ帳とペンを渡してきたので描いてみる事にした。

んー‥‥まぁ、適当に‥ここを‥こうして‥‥うわ。これ分かるかな。


「ほい、これ何だ?」






「「UMA?」」






「おー!よく分かったな。馬だよ。何だ、意外と上手く描けたっぽいな」

何かイントネーションおかしかったが。



その瞬間、2人がむせた。



「何かやたら首が長い◯ッシー系の謎生物にしか見えないんだけど‥‥」

「ぷっ‥くくっ‥‥これヤバい‥‥女子グループに流さないと‥‥画伯爆誕‥っと」


何か2人でボソボソ言ってる。



って俺も食うか。

うむ、美味い。






次の日、教室に入るとクラスの女子が口元を押さえたり、温かい目で見てきたが何なんだろうか。



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