34.何でアイスカフェラテがこぼれない
サキの話を聞いて、色々と知らない事が分かった。
なんでも猿川と真山は幼馴染みらしい。
小学校時代は仲も良くて一緒に遊んだり、お互いを名前で呼び合っていた。
そういえば真山も猿川を名前で呼びそうになってた気がする。
そして、中学で距離ができた。
中学になると男と女について意識し始めるものだ。
周りも、自分も。
そこで
『真山さんと猿川君っていつも一緒にいるけど付き合ってるのー?』
『真山さんって猿川君の事好きなの?』
などと周りに揶揄われたりして、真山が
『付き合ってないし!ただの幼馴染みだし!べっ、べつに好きとかじゃないし!』
と、猿川もいる前で言ったり。
一緒にいる事を指摘されたもんだから
『これからは一緒に学校行ったりするのやめよ!もう中学生になったんだし!』
と、突き放したり。
そんな言葉と態度を色々ととってしまった。
最初は猿川も真山に話しかけてはいたが、そんな猿川をどうしても恥ずかしくて避けてしまう。
何で恥ずかしくて避けてしまうのか。
そう、真山は猿川がずっと好きだった。
なんだこのツンデレ。
それで気付いたらほぼ疎遠みたいになったと。
『人は必要なだけ転ぶ』なんて言葉があるが‥‥確かマーク•ネポの言葉だな。
見事にずっこけてやがる。
ちなみにこれは通称好き避けと言うらしい。
女の子にはたまにいるとサキが言っていた。
んで、自分の行いを後悔している真山が高校では素直になりたいと同じ高校に入るために猿川が受ける高校を調べて、成績が中の上程度だった真山は受験する高校の偏差値にドン引きしながらも死に物狂いで勉強して、無事に入学し同じクラスにもなれた。
だから、このチャンスを逃したくないと。
サキ的にも何か思うところがあるらしく、2人をなんとかくっつけたい。くっつかずとも昔のように仲良くさせてやりたいと。
いやー甘酸っぺー!面白そうだしもちろん協力する。
それで、具体的にどうするかを今サキとカフェで話している。
さっきまでの話で中身が半分程になったアイスカフェラテをストローでかき回しながらサキが話し始めた。
「仲良さそうなところを見せつけたりとかはどうかな?例えば‥‥人多いだろうから‥遊園地で、はぐれないようにって手を‥繋げば‥‥向こうも自然に繋げたり‥とか」
「なるほどなー」
日本人は同調意識が強いしな。
遊園地という非日常に近い空間だったら真山も素直になりやすいかもしれん。
サキのアイスカフェラテをかき回すストローの速度が心なしか上がった。
「いっその事‥腕なんて‥組んでみたり‥とか」
「ふむふむ」
臨床心理学的にも身体接触によるリラックス効果は実証されている。
より、素直になれる事だろう。
というか、確実にストローの速度が上がっている。見事な渦が出来上がって、多分もう少しでこぼれる。
「ご飯の時に‥‥あーんとか‥しちゃったり」
ん?何かそれもう普通にカップルじゃねーか?
「サキがいいなら、構わんが」
それよりも、何でアイスカフェラテがこぼれないのかが不思議でしょうがない。
完全に意識がアイスカフェラテに引っ張られてる。ハラハラして目が離せない。表面張力って流れてる液体にも有効だっけか?
「私は‥‥いいよ」
何とかアイスカフェラテから視線を外してサキを見るとうっすらと頬を染めている。
どうやら恥ずかしいらしいが、それでも頑張るとは友達思いなやつだな。
だが‥‥友達のためとはいえそこまでやるだろうか。サキは見た目と違って軽い女ではない。
むしろ、純粋で根はすげー真面目なやつだ。
変に勘違いさせるような事はしないはず。
つまりは、俺だからいいって事か?
という事は、サキは‥もしかして‥‥あ
「なあサキ」
「な、何?」
「カフェラテこぼれてんぞ」
「へ?うわっ!!」
被害がテーブルの上だけで済んで良かった。
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