32.目をつぶる必要はねぇぞ
翌日の昼休み、柊木による報告会が行われた。
メンバーは昨日同様に俺、柊木、犬山、猿川である。
「まず、映画館までは緊張して何話したのか覚えてない‥‥」
さすが陽キャのくせに気弱なあがり症。
「で、肝心の手に触れるというミッションはどうなったの?」
犬山が糸目でうっすらと微笑むようないつも通りな表情で問いかけた。
「いや、駄目だった‥‥」
「そりゃ、アクション映画だからな」
一応突っ込んどいた。
「でっ、でもめちゃくちゃ楽しんでくれたみたいでさ、喫茶店で感想を言い合おうって話になったんだよ」
「「「おー(↑)」」」
「でも俺、上映中に横目でチラチラ夕日さんの方見てて内容全然覚えてなくて‥‥」
「「「おー(↓)」」」
「それで話を逸らしてだいぶクラスも馴染んできたねって話をしたら、女子だと誰が可愛いかって話になったんだよ」
「おっ!それでもちろん柊木は夕日さんって言ったんだよな!?」
猿川が身を乗り出して聞く。
「いや、櫻井さんとか可愛いねって‥‥」
「ビビり」
「ヘタレ」
「チキン」
「ぐふぁっ!ひでぇ。でも言い返せねぇ」
「それで桃は何て言ったの?」
そういや犬山って夕日と仲いいんだよな?同じ中学って言ってたし夕日も海斗って呼んでるし。
「櫻井さんは難易度高いよ。応援はできないけど、まあ頑張ってって言われた」
犬山が珍しく苦い顔をした。こいつ桜乃に惚れたけど折れたらしいからな。
「今のところ脈なさそうだな‥‥」
猿川が苦笑いしながら言う。
「それでさ、男子なら誰が格好いいかって聞いてみたんだよ」
何か嫌な予感がする‥‥
「そしたら私の推しは葉月君だねって」
「あー‥‥」
恐らくそれは意味が違う。夕日の好み的な意味じゃない。
「このイケメンがっ!」
「お前には言われたくねぇよ!」
人気投票確か柊木の方が高いからな!
そんな感じでワイワイと昼を過ごした。
放課後になって俺は今、委員の仕事でサキと空き教室の掃除に来ている。
仕事内容は、窓を拭いて箒で軽くはいて終わり。まあ30分もかからんだろう。
「まず窓からやる?」
汚れ具合を見ながら教室内を彷徨くサキに昨日買ったプレゼントを渡す事にした。
「サキ、ちょっといいか?」
俺的にはサキは緑が合いそうなんだが、サキのピンクブラウンの髪に合うか見てみたい。
「ん?どしたの?」
ちょいちょいと手招きするとサキが近付いてきたので、サキの頬にかかる髪をあげて耳を出す。
「えっ!?何!?何!?何!?何!?何っ!?」
ふむ、やっぱりピアスはあけてないか。イヤリングにしといて良かった。
俺は買ってきたクローバーのイヤリングを耳に当ててみる。
うむ、アリだな。
静かになったのでサキの顔を見てみると、俺を見上げるようにしながら目を閉じていた。
「いや、目をつぶる必要はねぇぞ?」
「えっ!?」
何かすげー驚いてる。
とりあえず目を開けたので、目の前にイヤリングをかざした。
「ほれ、プレゼント。弁当の礼とか、委員の掃除サボった詫びとか色々な」
こないだ思い出したけど、中学の修学旅行の思い出とかも多分勉強一色にしちまったし。
中3の夏休みも、サキを家に連れて行くとまず間違いなくうちの度を超えた人見知りな母がテンパるから三崎家で昼飯とか結構世話になったしその礼とか色々込みで。
サキを見るとどこか不満そうにしている。
「悪い、俺の趣味で選んだけど気に入らなかったか?」
「いや、そうじゃないんだけど、‥‥むしろ、めちゃくちゃ嬉しいんだけど、‥‥うううぅぅぅ」
「ちょっと派手かもしれないから私服の時にでもたまに使ってくれ」
「うん‥‥大切にする」
受け取ってくれて良かった。
喜んでくれた‥‥よな?
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