31.そうか、一緒に寝ちゃってるのか
放課後、桜乃と一緒に携帯の直営店に来ている。
なんでも夕日から量販店だと家のインターネット環境のプロバイダを変更したらさらにお得とか、その他にも〜に加入するとやら入会するとやら、余計な事に時間を取られたりするのでお金を気にしないのであれば最初は正規の直営店を勧められたらしい。
まあ、気持ちは分かる。量販店側も個人ノルマとかあるらしいので仕方ないとは思うが。
以前、北海道到着後にPCを買うのに人見知りな母のみでは不安なので
『やはり量販店か‥‥いつ出発する?私も同行する』
と、エジプトに行くノリで同行した事があったが、予想通り母さんはオロオロしながらよく分からない契約を色々とさせられそうだったので、家に設置されるONUの種類、スペック、中継局にある機器とそのスペック、それを使用する利用者数、そこから算出される想定の平均速度など前日に仕入れたにわか知識で責め立てたら泣かれそうになった事がある。
話は逸れたが、つまりは面倒くさいのは避けて正規の直営店に来た。
「どれにするんだ?」
「蓮華君と同じのがいい」
「最新より型一個古くなるぞ?」
「うん、それでいいの」
まあ、そっちのが操作教えやすいしいいか。
すぐに機種が決まったので店員を呼んでサクサク契約を進めていく。俺はせいぜいこのアプリを入れると〜みたいな話に口を挟む程度だな。
機種変更でデータ移行があるというわけでもないので、後は奥で色々と手続きするので30分程待てばすぐに使える状態で渡される事になった。
桜乃と2人でショップ内にあるソファーに座り、イメージキャラクターのぬいぐるみが目についたので、そういえばと聞いてみる事にした。
「あの水族館で買ったぬいぐるみってまだあるの?」
「うん、今でも蓮華君二号と一緒に寝てるよ」
「そうか、一緒に寝ちゃってるのか」
「だって、私が寂しがらないようにくれたんだもんね。‥‥あのね、蓮華君は私に会えない間寂しかった?私は寂しかった」
俺は‥‥どうだろう?高校で再会できるの分かってたからなぁ。
「んー‥‥元々3年で戻る予定だったからな」
「えっ?そうなの?」
「あれ手紙に‥」
「書いてないよ。私あの手紙全文覚えてるもん」
あいたたたた‥‥ここは素直に謝ろう。
「ごめんね‥‥桜乃ちゃん」
と、そこに
「あのー‥‥お待たせしましたー‥‥」
黒髪美少女に謝っているヤンキーというシュールな場面に足を踏み入れるとは、なかなかやるなこの店員。
スマホを受け取って、次は雑貨とかアクセサリーが置いてある店に来た。
頭ん中で合わせるより、実物がいる方がやっぱり合わせやすい。
桜乃は、手に取ったヘアピンを桜乃の髪に触れる程度に合わせたりしながら悩む俺をただニコニコと眺めている。
そういや最近よく笑うようになったな。
入学当初はすげー無表情か、メンチ切るかの2択だったし。
「うっし、決まった」
結局前のと似ているが桜の花の装飾が付いているヘアゴムと、これまた桜の花が付いている大きめのヘアピンに決めた。
会計に向かう途中でサキに似合いそうなイヤリングがあったのでこの前の詫びやら込み込みでそれも買ってみた。
やばい‥‥マジでバイト探さないと。
その後は喫茶店でスマホの簡単な操作方法についてレクチャーをしたがメッセージアプリを登録した時が一番テンション上がってる。
文字打つ操作慣れないだろうから、俺に一文字ずつでいいから何か送ってみろと言ったら
櫻井桜乃:れ
櫻井桜乃:ん
櫻井桜乃:げ
櫻井桜乃:く
櫻井桜乃:ん
と送ってきて、俺のスマホもテーブルの上に置いて一文字送ったのが俺のスマホに届いて表示される度に嬉しそうにして、やたら機嫌がいい。
「いつでも蓮華君にメッセージ送ってもいいんだよね?」
「日記みたいなメッセージは送ってくんなよ?」
「えっ!?」
何となく心配だから刺してみた釘は正解だったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます