26.退屈な休日を過ごしてるところ


思いの外、手品が面白くて手品入門以外の本を買うのに今日俺はショッピングモールの中にあるデカめの書店に来ている。



結局店内をふらふらした結果、手品本やら料理本やら参考書やら気になった小説やら、結構な量を買ってしまった。


そろそろバイトでも探すかー‥何て思いながら書店を出た時の事、桜乃と攻略対象である図書委員長の天霧とすれ違った。



一瞬桜乃と目線が交わる。

おお、お手本のような二度見だな



天霧とショッピングモール。んー‥‥


何かイベントあったかな‥

あー、あれか、

図書委員会の発注ミスで入荷予定だった本が足りないから本屋に買いに行くってやつ。

人が多いからって手を繋がれて、その強引さにドキッっとして意識するようになるんだったな。


で、確かその後近くのカフェ行くんだよなぁ‥

この後そのカフェで買った本読もうと思ったけど、また鉢合っても気まずいし少し離れたモダンな方のカフェの方に行くか。

行くつもりだった方がクラシックな雰囲気で好きだったんだがしゃーない。



つーか、桜乃‥‥微妙に嫌がってなかったか?

学校でちょっと聞いてみるか。




「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりになりますか?」


「はい、ブレンドで」


「お砂糖とミルクはご利用になられますか?」


「いや、いりません」


「ごゆっくりどうぞ」


少し離れたカフェに着いてコーヒーを頼み、流行りのポップな音楽は聴き流しつつ黙々と本を読んでいたところで


「あの‥は、葉月君、こんにちわ」


大前が現れた


「ん?ああ大前か、こんにちは」


「何してるんですか?」


「見ての通り、退屈な休日を過ごしてるとこだな。大前は?」


「わっ、私は‥その‥私も退屈な休日を過ごしてるところです」


何か目が泳いでるけど大丈夫だろうか?

何かを誤魔化してるのか‥男が苦手を発揮中か‥ってかよく俺に話しかけてきたな。


「相席してもいいですか?」


男苦手克服すんのに頑張ってんのかな?こいつ地味に頑張り屋だからな。だったら協力してやるか。

とりあえず立ち上がって椅子を引いてやった。


「どうぞ」


あっ、礼言うの忘れてた


「あっ、そうだ。俺がクラスであまり恐がられなくなったのって、大前のおかげだって聞いた。ありがとな」


「ううん、それは葉月君の人柄ですよ」



そう言うと大前が急に違う方向を向いて固まった

何だ?

俺もそっちを向くと‥



何か桜乃がめっちゃこっちチラチラ見てる。

つーか、何でこっちのカフェいんだよ。

集中してて全然気付かなかったわ。



2つ席を挟んでだから、耳をすませば普通に会話も聞こえてそうだが、多分天霧の俺スゲートークに桜乃が相槌を打ってたところだろ‥‥と思うんだが‥‥


やっぱり、あまりいい雰囲気には見えない。

桜乃的に天霧はどうなんだろか。ずっとこっち見てるし。ちょっと助け舟でも出すか?




「あの、葉月君」


うおっ、くすぐったッ!!

考え事してたら大前がいきなり耳打ちしてきて耳に息がかかって背筋ピンってなったわ


「お買い物‥‥に‥‥付き合ってください」


「俺と?今から?」


「はぃ‥」


ふむ、やっぱり男苦手克服頑張ってんだな


「ま、別に構わんよ」


「で、では、行きましょう」






「買い物って何買うんだ?」


大前と2人でカフェを出て歩きながら聞いてみた。

何かずいぶん悩んでるな


「お洋服なんですが、大丈夫ですか?」


「ん、了解。洋服買うのに付き合うって、俺も選んだりした方がいいの?」


「はぇ!?え、選んでくれるんですか?」


あれ?違ったか?


「俺のセンスで良ければだけど」


「はいっ、お願いします」


うむ、嬉しそうで良かった。

男苦手な子の気をつけた方がいい事とか分からんからな。



「では行きましょう」


と、思ったら大前は早歩きで歩き出した。

何かやらかしたか?うーん、分からん。




さて、ショップに入ったものの女の子の服とか選んだ事ないんだよな。

サキの私服は何度も見てるがギャル服だから参考にならんだろうし。


今日の大前の服装は兎のイラストパーカーに下はギンガムチェックのフレアスカートにスニーカーか。

スカートとかよりは上を選んだ方がいいよな?


大前のイメージ‥‥んー‥‥黄色だな。

名前にちなんで向日葵を連想したんだが少し安易だったか?


というわけで、バックフリルがある黄色いワッフル生地のパーカーを勧めてみた。


「これとかどうよ?」


「ひゃわ!は、はい、着てみます」


大前は、これは買い物とかブツブツ呟いていたが大丈夫だろうか?


「あの、試着したいんですけど」


「はい、こちらにどうぞー」




微妙に店員に絡まれつつも大前が試着室から出てきた。


「お待たせしました、ぁの‥か、可愛いですか?」


おー!似合ってるじゃねーか。


「おう、可愛いぞ!ふんわりした感じがすげー似合ってる」


「黄色い服って、初めて合わせてみました」


「俺的に大前って、向日葵ってイメージなんだよな」


そう言った時に大前が一瞬見せた、嬉しさ半分悲しさ半分みたいな変な表情が妙に印象に残った。




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