25.事件はショッピングモールでおきたside櫻井桜乃


はぁ‥‥‥憂鬱


何で私は休日に男の人と2人で‥




発端は図書委員の活動で、新しく届いた本の整理をしていた時。

リストと照らし合わせていたら足りない本があったので図書委員長の天霧先輩に伝えたの。


そうしたら注文書に無かったらしく、どうやら発注ミスがあったみたい。


そこで、交流も兼ねて土曜に書店に買いに行こうと言うので流石に嫌ですって言うのも憚れるし、交流と言うのでてっきり他の新入生も来ると思ってたのに‥‥


何で2人なの‥

この人、何かと話しかけてきて少し苦手‥

しきりに中わけで黒髪の長い前髪を払ったり、眼鏡の位置を調整しているのを横目に見ながら、再度私は溜め息をついた。


はぁ‥‥‥



ショッピングモールの中にある書店に向かっているけど、休日のショッピングモールは人が多いなぁ‥と考えたところで



突然、天霧先輩が手を握ってきた。


「人が多いからな。逸れたら困るだろう」


え、やだ、気持ち悪い。



「いえ、大丈夫ですので離し——」


そんな最悪なタイミングで

事件はショッピングモールでおきた。


あ!蓮華君だ!


‥‥‥って、蓮華君!??


あれ?‥‥今私は‥




違うのっ!別にこの人とデートしてるとかじゃないの!お願い!信じて!




あぁ‥‥最悪‥‥手を繋がれてるところ絶対見られた



私が落ち込んでいると


「む‥おかしいな、星4.6を獲っていた『気になるあの子と恋人への道〜恋愛マニュアル完全版〜』の女性エスコート編では、人混みでは逸れないようにと手を繋ぐと効果的。頬を染めながら上目遣いでありがとうと言われたら大成功とあったが‥」


天霧先輩が小声でぶつぶつ何かを言ってるけどよく聞こえない。


蓮華君は人波にのまれてすぐに見えなくなってしまった。


私はすぐに手を振り解いてさっさと買い物を済ませる事にした。





買い物を済ませて、もうこの場で解散でいいよね?蓮華君、どこかにまだいるかな?と考えていたら


「歩き疲れてないか?そこの喫茶店で少し休もう」


「あ、はい」


‥‥って、あれ?何て聞かれた?

喫茶店?

生返事でそのままはいって言っちゃった。

蓮華君、書店から出てきて何か買ってたよね?

すぐの喫茶店で本読んでたらどうしよう‥


「向こうにある喫茶店がいいです」


少し離れた喫茶店にしてもらった。

それで紅茶を一杯頂いてからすぐに出よう!

そう思っていたのに‥‥




喫茶店に入って席につくと


あれ!?蓮華君!?

何でこっちに?

あ‥でも真剣な目で本を読む蓮華君‥‥格好いい



「本当は図書委員の委員長にはなるつもりは無かったのだが周りにどうしてもと推薦されてな。俺は渋々にそれを受けた訳だ。それから——」


「そうですか」


「知っているか?この間本で読んだのだが、嬉し涙と悲し涙と言うのは成分が違うのだ、これには交感神経と副交感神経の働きが——」


「そうですか」


「2年の時は俺はいつも試験結果が学年2位だった。しかし3年になった今こそ学年1位を獲ってみせる。そもそも俺の得意な教科は——」


「そうですか」


「この服どうだ?たまたま通販で目について買っただけなのだが、実は有名なブランドの春の新作らしくてな。そのブランドというのが——」


「そうですか」



「やはりおかしい‥‥恋のさしすせその『そ』しか引き出せない‥‥まずは自分の事を知ってもらうために誇張にならない程度に自分の優れている点をアピールしつつ、さしすせそを全て引き出せたら次は相手に話してもらうという流れに持っていくはずが‥まさか、『気になるあの子と恋人への道〜恋愛マニュアル完全版〜』に間違いが?星4.6評価だぞ?いや、しかし‥」


蓮華君の方をチラチラ見ながら相槌を打っていたら、天霧先輩はまた何か小声でぶつぶつ言い始めた。

私は蓮華君が気になって仕方ない



‥‥‥え?

蓮華君の方に女の子が近づいて‥‥あれは‥大前さん?

何で大前さんが蓮華君と相席するの?

待ち合わせ?


あ、大前さんと目が合った

蓮華君もこっち見ちゃった‥


って近い!近いよ!大前さん!

大前さんが蓮華君に何か耳打ちしている。


と、とにかく誤解されたくない!

私は天霧先輩に一言声をかけて蓮華君のところに行く事にした。


「天霧先輩、すみません。席を外し‥‥ぁ」


でも、蓮華君は大前さんと一緒に喫茶店を出てしまった。




蓮華君には学校に行ったらすぐに委員会の買い出しだったと伝えよう。


そう考えると同時に、もう一つの考えも頭に残る

ライバルは三崎さんだけかと思ってたのに‥




大前日向さん、要警戒





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