24.すごく‥‥小さいです‥‥
昨日の夜、サキから謎のメッセージが届いた
三崎若菜:大前さんのおかげで誤解は解けたよ!
葉月蓮華:何が?
三崎若菜:明日、教室入ったら分かると思う
そんな事があり、訳わからんがとりあえず教室へ足を踏み入れると
「葉月君、おはよー!」
クラスの女子から挨拶されたり、手を振られたりした。
何だこれ?
するとサキが近づいてきた
「ツキおっはよー、分かった?」
「成る程わからん」
「昨日ね、女子のメッセージグループで大前さんが手の怪我の真相を話したんだ。まったく‥格好いい事しちゃって」
「まあ、格好つけたからなー」
にしても大前がか、頑張ったなあいつ。後で礼言っとくか。突然泣かれた時は焦ったが‥読んでて良かった手品入門。
「へへー、あ、そだ。あのねツキ、今日の昼‥なんだけど」
上機嫌にサキが笑ったと思ったら何か急に目を左右に泳がせて言い淀んでるけど、どした?
「昼がどした?」
と、俺が聞いたところで
「蓮華君!」
教室に入った桜乃が駆け寄ってきて
「おはよう、これお弁当」
と昨日と同じ桜の花弁がモチーフの包みを鞄から出して渡してきた。
「いや、だから学食でカレーとか購買でパンとかなら左手で食えるし、桜乃ちゃんの弁当渡されても自分が食うぶん無くなるだろ」
「うん、昨日は私も焦って自分のお弁当食べさせようとしたけど‥でも、今日は蓮華君用のお弁当を作ってきたよ」
「おー、マジか」
「うん、片手でも食べやすいように小さめのおにぎりとかサンドイッチなんだけど」
「サンキューな。ただ、明日からは作ってこなくていいぞ。悪いし」
「え?気にしなくていいのに‥」
「いや気にするだろ。とりあえず、今日のはありがたく頂くよ」
そう言って包みを受け取りつつ
「あ、サキ悪い。昼にどうしたよ?」
「あ‥ううん、何でもないよ」
と言って自分の席に戻っていった
何か無理して笑ったように見えたけど何だ?
昼休みになって、桜乃から貰った包みを開いた
これは‥‥!
弁当箱を開けると、食べやすく一口サイズになっている小さなおにぎりと、これまた一口サイズのサンドイッチ。サンドイッチの具材も色彩鮮やかで実に美味そうだ。
ただ、肝心のお弁当箱が‥すごく‥‥小さいです‥‥
うむ、確かに美味しかったのだが、3分で食い終わってしまった。
足りねぇ‥全然足りねぇ‥
とりあえず礼は言わないと。と、夕日と飯を食ってる桜乃のところまで行って声をかけた
「桜乃ちゃん、美味かった。ご馳走様」
「あ、蓮華君。良かった、美味しいって言ってくれて嬉しい」
「何かお礼するよ」
「お礼‥‥」
唇の下に指を当てて少し考えた桜乃は、その指で今度は自分の頭をちょんちょんと突いて頭を差し出してきた。
‥‥‥撫でろと?いや、そんなのでお礼になるなら全然撫でるけど
というわけで撫でながら
「ありがとう、桜乃ちゃん」
と言ったら少し笑みを浮かべながら
「どういたしまして」
と返事が返ってきた。
夕日が嫌らしい顔でニマニマしてたのが癪に障ったので意趣返しに「夕日もやってやろうか?」と聞いたら焦ってたのが面白かった。
さて、足りない分はパンでも食うか。と、教室を出て購買へ向かう事にする。
天気も良いし校舎裏の噴水で食べるのもいいかもしれない。
そう思って購買に入ろうとすると呼び止められた。
「ツキ!」
「ん?サキ?」
「購買行くの?」
「ああ、ちょっと足りなかったからパンでも食うかなって」
「あ、あのね‥実は‥‥‥私も作ってきたんだ‥‥お弁当。食べてくれないかな?」
マジか、そんなに利き腕使えないの不便そうか?
いや、不便だが。
不安そうに見てくるが、せっかく作ってくれたんだし有難く頂くぞ?
というわけで、そのままサキと一緒に校舎裏の噴水まで来た。
サキが弁当を開くとおかずが中心で、唐揚げとか卵焼きに一つ一つ楊枝が刺さっているあたり気遣いが見て取れる。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
サキの笑顔を見ていると‥成る程、朝言いたかったのはこれか。
卵焼きを一つ食べてみる‥え?美味っ
「めちゃくちゃ美味い」
「ほんと!?」
「ああ、これサキが作ったのか?」
「う、うん。昨日、お母さんに教わって‥初めての料理だったから‥嬉しい」
美味かったのでぺろりと食べ切った。俺も最近料理始めたが火加減とかで結構味変わるんだよな。
ちなみに唐揚げは揚げてる途中で一度引き上げて油を切りつつ空気に触れさせてから再度揚げると2度揚げになって味が引き締まるらしい。
「ご馳走様。礼するけど何かあるか?奢ってほしいもんとか何かあれば言ってくれ」
そう言うとサキは遠慮がちに
「えと‥‥私も‥」
と言って頭を向けてきた。
え?何これ流行ってんのか?まぁ、いいけど
「へへー」
撫でてやると満足そうにサキが笑った。桜乃はサラサラって感じだが、サキはフワフワって感じだなー。なんて思いながら昼休みは終わった。
教室に戻ると今度は大前が手作りのクッキーを渡してきたので無意識に頭を撫でてやると
「ふぇ!?」
と言って驚いた顔をした後にすぐに離れていった
しまった‥‥やっちまった‥‥‥こいつ男苦手だっつーのに
ちなみにクッキーは美味かった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます