15.お姉さんツンデレか


「同じ高校を受けるので、私に勉強を教えて下さいっ!!」


サキに受験する高校を教えた翌日、

そう言って頭を下げてきた。

その鬼気迫るような表情と、惚れ惚れするような最敬礼に俺は二度目となる動揺を余儀無くされた。


なんでも父親の転勤で来年の3月から東京へ行く事になったらしい。

友達はもちろん知り合いすらいない場所でのゼロからスタートよりは、俺が行くつもりの高校に行こうとするのは頷ける

しかし‥三崎若菜‥『桜色のキス』では出てこなかった名前だ。


色々と変化が生じている?

桜乃の方は俺がいなくなって塞ぎ込むが、半年程で復活しているはず‥観覧車での告白もされてないし、もっと思い入れは軽くてすぐに復活してるかもしれないが。

高校で再会した時は桜乃が今までどこに?と、プンスコするが、葉月蓮華は中学でのイジメでプチ人間不信中なので、あれ?何か様子が?

とストーリーは進む‥本来は

しかし、再会するのヤンキーだからね。

あれ?何か様子が?どころの話ではない

まあ‥なるようになるか。深く考えるのは止そう。




そんなこんなで今は夏休み

俺はそこまで本気で勉強をする必要もないし、三崎家で勉強を教えている。


夕方になった頃、誰かが帰ってきた気配がした


「あっ、お姉ちゃん帰ってきたかな」


「へー、姉ちゃんいるんだ」


「うん、今日は図書館で勉強って言ってた」


「あー、姉ちゃんの方も試験か」


「そうそう、お姉ちゃんも今は編入試験のために勉強してるよ」


コンコン


「若菜いる?おやつ買ってきたけど」


「いるよー!入ってー!」


ガチャ


入ってきたお姉さんは俺を見て目を丸くした

まぁ、妹の部屋に入ったらヤンキーがいたらそうなるわな

妹はギャルだが。


お姉さんは黒髪のミドルヘアをストレートにしており、顔立ちはサキによく似ているが垂れ目気味ではなく猫のようにクリッとして

水色のワンピースが清楚な雰囲気を際立たせている。

あまり装飾品を付けるタイプには見えないが手首のシュシュは妹の影響だろうか


「今、勉強教わってるんだよね」


「お邪魔してます」


「あなたが、勉強を、ねえ。若菜、分からないところがあったら私に聞いてもいいからね」


うむ。やっぱりめっちゃ警戒されてるし、まったく信用されてないな。

ここはひとつ


「はぁ‥お姉さん、今やってる試験対策見せてもらっていいですか?」


「は?」


「見せてもらっていいですか?」


「い、いいけど。」


お姉さんに今やってる問題集を見せてもらう


「これ」


「んー‥‥‥‥」


お姉さん今多分高2かな?このあたりなら余裕で分かる


「ここと、ここと、ここ、間違えてますね」


「えっ!?」


「ここは使う公式間違ってます。こっちは当てはめ方の問題ですね。ここはこうやって‥」


問題集になるべく分かりやすいように補足を書いてっと


「はい、これが答えです」


「嘘‥」


「俺みたいなのが、大事な妹の勉強を見れるのか心配だったんですよね?ほんとは自分が見てやりたいけど、普段の勉強に加えての編入試験の勉強であまり余裕もない。だからもっとまともな奴に勉強を見てやってほしかった。‥ってところですよね?」


「べっ、別に、‥そんな事」


お姉さんツンデレか


「安心してください。見た目よりは勉強できるつもりなので」


「ごめん‥」


気を悪くしたとか思われないように、なるべく優しく


「いえ、自分も余裕ないのに、妹の心配ができる。いいお姉さんだと思います。謝る必要はありませんよ」


と、言うと


「‥若菜の事、宜しくね」


と、デレた。やはりツンデレか。


「はい、任されました」


そのまま部屋を出ると思いきやお姉さんはドアの前で立ち止まって振り返った


「分からないところがあったら、私も教えてもらっていい?」


「お姉ちゃん!?」




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


蓮華帰宅後の姉妹の会話


「ねえ、若菜」


「ん?何、お姉ちゃん」


「さっきのが葉月君だよね?同じ高校に入りたいって言ってた。葉月君も東京行くんだ?」


「そうなのよ!ほんと聞いた時はびっくりした」


「で、好きでしょ?」


「ふぇ!?な、な、な、」


「諦めたら教えて。私が狙うから」


「お姉ちゃん!?」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



それから半年、サキに100回くらい頭から煙出させたり、死んだ魚のような目でブツブツと英単語を呟くようにさせちまったかいもあり、無事に俺が主席、サキが次席で合格を果たした。


県外受験者枠で会場が違うから桜乃を見れなかったな

ま、すぐに会えるか






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