13.嘘告side葉月蓮華&三崎若菜
中学2年になった。
地域柄、春の陽気とは言い難いが俺は今屋上の貯水タンクの裏の傍目には分からないようなところで日向ぼっこに勤しんでいる。
今は4時間目の数学の最中だろうが眠いものは仕方ない。
きっとこの学校の内申の9割がテスト結果に準ずるといった体制が悪い。
つまり理解してれば授業出る意味がほとんどない。
ちなみに寝るなら保健室というのも1つの手だったが、あそこは魔境だ。
3年の不良寄りのギャルの根城になっており、ガチで貞操の危機を感じる。
彼女はいないが、付き合ってる子としかそーゆー事はしない
と言ったら何を曲解したのか
そーゆー事したら彼女になれる
と勘違いされて襲われかけた。
というわけで今の俺の安息の地は屋上である。
どうやら4時間目が終わったらしく、弁当を持った女子4人組が屋上に入ってきた。
「小テストどうだった?」
「それ聞くためにテスト持っていこうって言ったのね」
「私はやばいかも‥」
「まぁまぁかなー」
「じゃあ、みんなで点数勝負しようよ」
「いいねー」
「えー、自信ないなー」
「罰ゲームどうしよっか?」
「告白とかいっとくー?」
「面白いじゃない」
「負けないわよー」
「えー‥そーゆーのはやめようよ‥」
「若菜ノリわるーい!いいじゃん!」
「じゃあ、最下位が1位の人が決めた相手に嘘告ね」
「じゃあせーのでテスト出しましょ」
「「「「せーの!」」」」
「罰ゲームは若菜だー!」
「やっぱり‥今回は自信無かったのよ」
「1位は久美ね、さて相手どうしよっか?」
「そうねー」
「普通な人じゃ面白くないよね」
「葉月君とか‥どう?」
「!久美、さすがにそれは‥」
「洒落にならなくない?」
「女子には優しいって噂はあるけど‥」
「‥いいよ。葉月君に告白する」
ターゲットは葉月君かー
大変だなー葉月君
頑張れー葉月君
はぁ‥‥
俺だよなぁ‥
つーか、あいつらうちのクラスの女子じゃん
別に俺にするのはやめろって出ていってもいいが‥
誰かが傷つくくらいなら、事情知ってる俺がそーゆーのやめたら?って諭す方がマシな気がする。
めんどくせぇ‥
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
嘘告なんて人を傷つけるような事、間違ってる
中学2年になってからの友達
私はこの子達のこういう所はあまり好きではない
でも、葉月君なら話は別
他の人に告白なんて嘘でも絶対嫌
だけど、葉月君は‥私の好きな人
もう一年になる片思い
いいじゃない、嘘告に後押しされた形ではあるけど、私は葉月君に‥告白する
私の本気の告白
放課後、帰ってしまう前に私は葉月君を屋上に呼び出した
私の前に立つ葉月君はやっぱりかっこよくて
「初めて見た時から惹かれていました。私はあなたの優しいところが好き。柔らかい雰囲気が好き。‥あなたが好きです。私と、付き合って下さいっ」
「‥」
葉月君は少しだけ面食らったような顔を一瞬して
それから表情を戻した
空白の時に耐えきれずに私は
「あの‥」
と声をかけたところで葉月君は
ふぅ‥と一度溜め息を吐くと言った
「これ、嘘の告白だって知ってるんだけど、あんたの立場的に受けた方がいいの?断った方がいいの?」
私の心がピシッとひび割れた気がした
嘘告というオブラートに包んでしまった私の告白という名の蕾は、何の形も成す事が出来ず
花が咲く事もなく
実をつける事もなく
それでも、枯れる事も出来ずに
ただ鋭利な刃物で切り裂かれたような傷だけが残った
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
いや、告白はまるで本気みたいでビックリしたわ
って、うわっ!顔面蒼白じゃねーか
殴られるとか思われてるんだろうか‥
とりあえず殴ったりしませんよー的なアピールも込めて手すりに背中を預けて諭してみる事にする
「余計なお世話かもしれないけど、人の気持ち弄ぶような遊びとか見ててすげーイラつく。俺に嫌われたところで別に構わんだろうけど」
多分これは後悔してる顔‥だよな?
「たださ、付き合いでやらされてるだけだとしたらさ、そーゆー事してないと維持できない友情とか付き合う友達考え直した方がいいんじゃねーの?後悔してるんならね」
アリストテレスも言ってたしな
『不幸は、本当の友人でない者を明らかにしてくれる』と
そんな不幸通り越して絶望したような顔するくらいなら初めからこんな事しなきゃいいと思うけど、こいつは最初反対してた気がするし。
「以上、余計なお世話だ。黙って聞いてくれてありがとなー」
じゃ!と言い去ろうとしたら呼び止められた
「あの!今日までの私じゃなくて、明日からの私を見て!」
ん?変わろうとしてんのかな?
確かこいつは‥三崎若菜だったよな名前
いい顔になったみたいだし、
「分かった」
とだけ言って帰路についた
そして翌日
かなり明るめのピンクブラウンの外ハネボブの髪
コートを脱ぐと、制服は着崩しておりスカートも短い
ピンクのカーディガンを腰に巻いた
派手なギャルが教室に入ってきた
は???
三崎‥だよな??
そのまま女子3人のもとへ行って
「グループ抜けるから。今まで仲良くしてくれてありがとね」
と伝えると、俺の方にきて
「これから仲良くしてね」
と、何か吹っ切れたような笑顔で言うので
「あ、ああ」
と答えた
この学校に来てから初めて動揺したかもしれない
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