7.したっけね


小学校を卒業して、中学校入学まで残り1週間

あれ?このまま桜乃と同じ中学に入るんじゃなかろうか?

と思った矢先の事、いつもより帰宅が早い父より緊急家族会議が始まった


「すまんッッ!北海道の支社で進めている重要なプロジェクトに欠員が出て、俺が行く事になってしまった。。3年間、北海道に一緒に行ってほしい。。蓮華ももうすぐ中学の入学式だというのに、本当にすまん。。中学生を1人残して行くわけにもいかないんだ‥」


「はい、分かりました」


いや、どのタイミングかは分からなかったけど、どっか行くのは知ってたからね。

別に驚きはしない。


母はオロオロしてるけど専業主婦だからご近所への挨拶くらいで特に問題は無いのかな?

ハイパー人見知りな母がご近所付き合いしてるかは謎だが。


「今後、どのように動けばいいですか?」


なお、何故父に敬語なのかというと、隣の家のスミレちゃん(10歳)が転んで泣いているのを慰めていたところ、俺が怪我させて泣かせたと勘違いした父に殴られたのをクッソ根に持っているからである。


酒が入ると敬語をやめてほしいとたまに泣き付かれる。


「2日後には向こうに行ってほしい。会社の方で住居は確保してくれている。明日は蓮華の転入手続きなど全て俺の方でやっておくから、2日後に向かえるように、荷造りとか準備だけしておいてくれ」


2日後ねぇ‥


桜乃はママンと一緒に祖父母の家に泊まりに行ってて、帰ってくるの3日後って言ってたよな。


そこまで家が近いわけでもないし、桜乃の家に頻繁に遊びに行っているわけでもないから


いつもうちの子がお世話になってますー


的な親同士の繋がりも無い。

完全に黙って居なくなる感じになっちゃうな。


葉月蓮華はクールに去るぜ


んー、手紙でも書いて郵便受けに入れとくか。


翌日、櫻井家の郵便受けに手紙を投下


『桜乃ちゃんへ

親の仕事の都合で突然北海道に行く事になった。

一緒の中学に行けなくなってごめんね。

黙ってたとかじゃなくて、急に昨日言われたんだ。

お別れは会ってしたかったな。

元気でね。

蓮華』




そして出発当日


「父さん、北海道で暮らすにあたって、何か注意しておく点はありますか?」


「方言で、したっけはそうしたら、したっけねはまたね。って意味で、とりあえずこれは押さえとけって聞いたな」


「へー、そうですか」






桜乃、したっけね




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