5.それじゃあ私はお姫様?

小学5年生になった。

本日は遠足で山に登っておりまして、現在は帰り道。山を下っております。

隣では桜乃がポニーテールをピョコピョコ揺らしている。

小学3年の誕生日プレゼントに送ったヘアゴムは、ゴムが切れるたびに桜の花の装飾を移し替えて今でも使われている。

ちなみに、最初にゴムが切れた時はそれはもう大泣きしたと桜乃ママンが語っていた。

さて、保健係である俺と桜乃は最後尾で誰か怪我したり遅れたりしないか確認しながら歩いてるわけだが

どう考えても桜乃の歩き方がぎこちないよなぁ‥

「ねえ、桜乃ちゃん」

「ん、なに?」

「いつから?」

「えっ、何が?」

「痛いんでしょ。足」

「‥えーっと。。。。うん」

「ちょっと止まって、そこ座って」

ちょうど座れるくらいの岩に座ってもらって足を見る。

うわ、血が滲むくらいに靴擦れしてるな。

足挫いたりせんように注意はしてたけど、靴擦れは回避できなかったよ。。

「染みるけど、我慢してね」

靴下を脱がせて消毒してっと。

保健係だから消毒液や絆創膏は常備してる。

さて、この後どうするか。。

おんぶはなるべく避けたいところだが‥

俺のリュックと桜乃のリュックの2つを持ちつつ、桜乃に最も負担がかからず、おんぶを除外した最適解は‥うん

合流地点まで5分くらいだが10分は見ておいた方がいいかな。

さて、頑張れ俺っ!

まずは自分のリュックと桜乃のリュックの両方を背負って

「桜乃ちゃん、ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、ごめんね」

「え‥きゃっ!」

両足の膝裏に左手を差し込み、右手は背中へ

つまり、お姫様抱っこである。

歩きつつ少しだけ無言になる。

「‥重くない?疲れてない?」

「大丈夫だよ、桜乃ちゃん」

いや、ほんとは結構きつい‥

額から流れる汗が尋常じゃないから、多分無理してるってバレてる気がするけど、なるべく優しい顔で答える。

すると桜乃が、顔が見えなくなるようにおでこを俺の肩に預けて

「‥いつも助けてくれてありがとう。蓮華君」

「どう致しまして」

面と向かってお礼を言うのが恥ずかしいのか、依然表情は見えないままである。

「これ、お姫様抱っこっていうんだよね?」

「おー、よく知ってるね」

「それじゃあ私はお姫様?蓮華君のお姫様かな?」

「うん、僕の大事なお姫様だね」

「今は皆んなの蓮華君じゃないよね?」

これは‥

少し前に桜乃の事が好きなんだろ?とクラスのやつにからかわれた際に

さて、ここで変に角が立ったりせずに俺と桜乃もイジられないようにするにはと考えて

『僕はクラスの皆んなが好きだよ』

と答えたら桜乃が少し不満げだった事が起因してたりするのだろうか

「今は桜乃ちゃん専用だね」

と答えた

すると、おでこを肩から離すと満面の笑みで

「へへー」

と足をパタパタさせた。

「ちょっ、暴れると落としちゃうよお姫様」

「蓮華君は大事なお姫様は絶対に落とさないよね?」

「落とさないから、静かにしてなさい」

「はーい」

合流地点に着くとめちゃくちゃ茶化されつつ、何人かの女子に私もやってとお願いされたが断った。


すまんの、もう腕が上がらんのよ





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