30 2時間目!体育!!

 「まあ、マキナだけなら、怖くはないだろうよ?随伴だって、クソ面倒だからな。」

 「!」

 「これを見ると、まあ、ね?」

 エイルは、マキナのことは置いておくとして、言うなら、別の情報を提示すると。

 すると、戦闘ヘリコプターが表示されて。

 そう、縦長の、いかにも攻撃向きですと、言いそうな。

 そんなヘリの。もちろん、兵装の情報も合わせて表示されている。

 ミサイル、ロケットランチャー、他、機首部分の機関砲など。

 「マキナと比べりゃ、何だかピンとこねーだろ?いかにも、旧世代だとか。」

 「!……言われてみれば。」

 示したところで、エイルが言うことには。

 やれ、巨人だ巨大な獣だ見せられた後では、霞むほどの旧世代っぷりだろうと。

 言われて、まあ、そうかもと俺は頷く。

 マキナなどがあるこの世界において。

 ヘリコプターなんて、前の世界でも存在したし。

 だからこそ、目新しくないことに違和感あるが。

 同時に、一緒であるということに、変に安堵もしてしまう。

 「だが、侮るな?空を飛んで、攻撃することに特化しているのだから、ある意味脅威だぜ?エイル様たちならまだしも、他の連中なら、あっという間に海の藻屑だぜ。」

 「!……。」

 続けるなら、侮るなと。

 決して侮っていい相手ではないと。

 特化しているからこそ、脅威なのだと。

 現に、自分たちでなければ、簡単にやられてしまう、そんな相手であった。

 「おまけに、乗っている奴も、イカレた連中さ。特攻してでも、エイル様たちを殺しに来たんだろうぜ?あ、まあ、死なねーけど。そんな奴らさ、そんな気概で来てんだから、当然っちゃ当然だわな。」 

 「?!……人も乗っているのか……。」

 「昨日会った、機械の獣以外はな。」 

 「!!……。」 

 おまけとして、殺しにかかるのだから、余計に脅威であると。

 なおのこと、脅威になりえるというのだが。

 それ以前に、俺はエイルがつい口にした。

 人が乗っているということに、ぎょっとしてしまう。

 エイルは、淡々として答えるなら。

 それこそ、俺が仕留めた、機械の獣以外には、人がいたと。

 耳にして、顔が青冷めてきた。 

 つまりは、俺が殺めてしまったと?そう、戦闘機の連中を。

 あの時は、無我夢中でありよく分からなかったが。

 ここで、聞かされたなら、ようやく人を殺したということに。

 ガタガタと手が震えだしてきた。

 「?!あ、どした?」

 「……い、いや……。……。」

 異変は、エイルに察されるものの、俺は上手く答えられないでいる。

 何せ、あんな耳にしてしまったのだから、脳裏には、嫌な感情が芽生えて。

 殺めてしまったということは。

 その人の人生が終わってしまったと、簡単に言って。

 生きていたら、どうなっていただろうか。

 もしかしたら、家族がいて。それなのに、俺が殺めてしまって、……悲壮が……。

 次第に、悲壮が顔に表れて、瞳だって、潤みそうに。

 「!……ああこりゃ……。」

 エイルは、察して。説明とかを止めるみたく。

 頭を掻いて、じっと、俺を見据えてきた。

 「……仕方ねぇ。……授業はここまでだな。……やっべぇ、こいつのメンタルのこと、全く考えてなかった~!」

 「!……。」

 そこで思案するなら、切り上げるつもり。

 傍ら、どうやら俺の精神面を考えていなかったらしく。

 迂闊だったと頭を抱える始末。

 その様子耳にしても、だが、俺の方は殺めたショックに、思考ができないでいる。

 声を発生ないでいるために、途端、教室は静かに。

 外の剣閃の音だけが、嫌にはっきりと聞こえていた。

 「……ぬぅ……。しゃーねぇ!こういう時は、メンタル治療専門!我らが大好き、皆のある意味の〝アイドル〟に任せっか!」

 「……!」

 それが、呼び水に。

 エイルが思い付いたことには、……誰かを呼ぶかのよう。

 アイドル?……という言葉に騙されそうになったが。

 何となく誰だか分かるような……。

 早速行動するとして、エイルは窓を開け放つ。 

 「つーことでヴァカリキー!バトンタッチ!」

 「あ?!あんだって?!……っぼおぅ?!」

 「?!」

 「……あ、わりぃ、何だか。」

 一瞬の察し通り、ヴァルキリーのようだったが、間が悪く。

 エイルが声を掛けたその瞬間に、大砲が直撃したような音がして。

 加えて、ヴァルは呻くような声を放った。

 それも、腹が潰れて出すような、声。

 耳にして、メンタル云々吹き飛びそうになる。

 エイルは、それが自分が声を掛けたせいだと、多少申し訳なさそうにしてきた。

 「……。」

 気になり、何事と俺も覗き込めば、腹を押さえて立つヴァルの姿が。

 「……。」

 何事と見渡すなら、それをやったのは、相手をしていたトール。

 ヴァルに一撃を与えたことに、満足げであった。

 「終わったみたいだから、ちとおめーに頼み事。赤ちゃんフェンリル君のメンタルを、鋼鉄レベルまで引き上げてくんれ?」

 「!」

 エイルは、先ほどから一転して、頼み事を言う。 

 軽く拝み手まで見せて。

 あの、謝りなんて、どこか平謝りに思えるほどに、翻しようだ。

 ヴァルは。

 「……エイル……。他にあたしに掛ける言葉はねーのか?」

 「どーせ平気だろうから、謝る以上の言葉はいらねーかなって。」

 「……へんっ。……そーですよ。どーせ、そーですよ。これぐらいでくたばるなら、とうの昔にヴァルハラだっつーの。」

 「ほれ見たことか。」

 苦しそうにしながらも言うが。

 エイルは、スルー。 

 謝罪以上の言葉は、掛けないつもりだと。

 ヴァルはやや不貞腐れるみたいに言いつつも、ジョーク交えて言葉を紡ぐ。

 エイルは、元からそんな気がしていたとして、それ以上構うつもりはない。

 「……。」

 「!」 

 だからこそ、俺を対象にするなら、人差し指を立てて、招く。

 軽く頷くなら、バックパックを背負って、扉から外へと出た。

 出たなら、トールは入れ替わるようで。

 俺に場を譲り、自らは、そっと静かに下がる。

 結果、ヴァルと対峙する形になるが。

 「……ええと。」 

 呼ばれたとしても、まず、何と声を掛けようか、困る。

 ショックよりも、思考が追い付かないのが致し方ない。 

 「……なあ、フェンリル。こういう時は、気の利いた事から言うのが筋だぜ……。う、ぐほぉ!!」

 「?!」

 そんな折に、ヴァルはアドバイスにか顔を上げて言ってくれるが、異様に青く。

 挙句、痛みが込み上げて、嘔吐するなら、血を吐き出してしまった。

 その光景に、余計にショックが頭を巡り。

 混乱さえして、言葉がおかしくなりそうなる。

 「……あ、わわ、ヴァル……?!え、ええと?!その、お、おめでとう?!げ、元気な赤ちゃんが産まれるといいね?!」

 ……この通り。

 大丈夫だけでは物足りないならと、混乱した思考が紡いだのは、それ。

 自分でもどうかしていると思っているが、多分俺は、目を回していたのだと思う。

 「……ふっ。くくっ……!」

 「!」

 おそらく、違和感だらけ。

 そのためにか、気分悪くあったヴァルは、不意に笑みを浮かべて。

 痛いのに、腹を押さえて、笑いが突いて出そうになってもいる。

 なぜか?受けたのだろうか?全く分からない。 

 「!!」

 ヴァルが顔を上げたなら、にやけたような表情となっている。

 そこに、青冷めた様子は見受けられない。

 やはり、面白そうにと、言えるか。

 「面白れぇ!ちっとは面白いこと言えるじゃねぇか、ええ?」

 「!」

 その通りであるようで、ヴァルは笑いながら。

 称賛するためにか、俺に近寄ってくる。

 「……ええと、あ、ありが……と……う?!」

 よく分からないが、お礼を言い、近寄るなら握手をするかと、手を出した。

 ……だが、様子が異なる。

 握手に応じるために手を出すのではなく、明らかに拳を作り上げて。

 嫌な予感がする。

 「?!がっ?!」 

 「楽しい……なっ!!」

 しても、身体の反応は追い付かない。 

 その頃には、もう俺の腹に、強大な衝撃が走り。

 何だろう、息ができなくなる。そんな衝撃。正直、そうとしか言いようがない。

 「……っ?!……っ?!」

 なぜ?

 俺が気を悪くしたようなことを言ったなら、謝りたくも思う。

 腹を押さえつつも、痛みに潤む瞳であっても。

 ヴァルを見据えるが、迂闊に動くと酷い痛みに、顔はだが、歪んでしまう。

 おまけとして、言おうにも、声を発することも無理だと。 

 答えは、特に俺に言い与えられるものではないが。

 「ふぃ~。スッキリしたぁ!」

 「……?!」

 ヴァルの態度は、その一撃を与えた後。

 スッキリしたかのような爽やかな表情となっていて。 

 先の、苦痛に歪んだ表情とは打って変わっている。痛みはもうないか。

 そこは、流石、モンスターだと言わしめる。

 俺は、その当事者であり、未だに痛みに呻きそう。

 そうであっても、何事と思い、思考巡らせるなら、八つ当たりだと。

 トールにやられて、不愉快だったか。

 故に、発散のために、俺にそうしたと。

 《ダメージを確認。スフィアと同調、回復を開始します。》

 「!……っ!」

 傍ら、俺の背中に背負ったバックパックの中から、盾が声を上げて。

 光を投じて、俺を包み込んでいく。

 途端、激しい苦痛も消えていく。

 呼吸だって、楽になっていった。

 「……。」 

 こんなことができるなんて。

 思いながらも、楽になったなら。

 顔を上げ、ヴァルを見た。

 「!……おっ!復活はえー!」

 「!……。」

 ヴァルは、俺が復活したのを見て、称賛をして。

 俺は、だとしても、殴られたという事実は消えなく、やや不満な顔もする。 

 「……って、ことで。エイルからバトン貰ったからな。どーせ、復活したからとしてもお前の心はまだ復活していないんだろう?」

 「!……。」

 それを皮切りに、気を取り戻してか。 

 エイルからのバトンを受け取ったとして、俺に言ってくる。

 ようやく、本題に戻ったかのようでもあって。

 俺も気付くなら、やはりあの、人を殺めたという事実も復活して。

 傷は癒せても、これは癒せやしない。では、これについて、ヴァルは何を語るか。

 「それじゃ、解決策を教えてやんよ。」 

 「!」

 早速として、ヴァルは手をかざすなら。

 何か、飛来してきた。

 ……いや、正確には。

 ヴァルの手に向けて、気付いたエイルが何かを投げたか。  

 飛んできた物体は、さも意志を持ったかのように飛来して。

 ようやく形を捉えられると思うなら。

 筒状で、懐中電灯みたいな物、レーセか。

 ヴァルは受け取るなら、ニヤリと笑みを浮かべる。 

 「!」

 それを、俺に向かって投げてきた。

 「取りな!」

 言われるがまま、俺は手に取り見る。

 特段の飾りはない、そんなレーセであるが。

 「ああ、それお前がサイボーグの時に使っていたんだとさ。回収した時、ついでに、てなことで。修理もして、ちゃんと使えるぜ?」

 「!……。」

 話付け加えるなら、何でも俺が使っていた物だとか。

 耳にして、よくよく見るが、……さっぱり感傷ということはなく。

 むしろ、謎と不思議に首を傾げるばかり。

 これを、俺に渡すということは?なぜ?

 「……!」

 聞こうと顔を上げるなら、不気味にヴァルは笑みを浮かべていて。

 嫌な予感がする。

 「へへへっ!人をやっちまったって、ビビってんなら、いい方法があっからよ。お前の身体に教え込んでやるぜ!」

 「?!」

 「身体に教え込めば、んな考えも浮かばなくなっぜ!さあ、取って構えな!!」

 予感的中しそう。

 ヴァルはニヤニヤしながら言ってくることには。

 ……遠まわしに感じるけれど、何か教え込むらしい。 

 それも、……ハードな方法みたい。 

 「……。」

 言われるがまま、手にしてレーセを軽く構えて。

 「……ええと。」 

 軽く手探りしては、どこを触ればいいかと迷いつつも。

 ふと、何か触れたなら、ヴァルと同じように光の刃が迸る。

 「!」 

 その輝きに見とれてしまうが。 

 いや、それだけじゃないと。 

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