29 マキナを学ぼう

 そうなるぐらいなら、多少学を身に着けた方が。

 ためになりそうだと言いたげでもあり俺は、汲み取って、頷きを返した。

 「あじゃま、話の続きすっぞ。」

 エイルは言ってきて、その言葉に俺は、またもボードへ視線を向ける。 

 「さぁて。話の続きだが、こうして、猫耳勇者とやらの活躍によって、帝国はぶっ壊れて世界は平和になりましたとさ。」 

 「!」

 続きの始まりには、そうして、世界は平和になったとして。  

 聞いている限りでは、めでたしめでたしとしそうだが、こちらは帝国側。

 エイルはあんまり面白くなさそうだ。

 「……てか、トールかヴァルが行ってりゃ、こんな事態にはならなかっただろうにな、あのポンコツクローン。」

 「?」

 次には、愚痴まで出る。

 何でだと、そんな愚痴につい、首を傾げてしまう。

 「!ああ、このことな。」

 「!」 

 エイルは、そんな俺が興味ありそうだと気付いて。 

 何か、言いたくもなっている。

 俺は、聞きたくあり、耳をピンと弾ませた。

 「あのポンコツクローンってーと、面だけは優秀な科学者の男だったんだがな、中身はてんでダメだったぜ。」 

 ならと、余談ついで、語りだす。 

 「!」

 ボードには、余談話に合わせて、その人物の情報が表示されるが。

 俺は、見覚えがあると感じ、目を見開いた。

 その人物、幸薄そうな表情ながら、研究者であり。

 また、脳裏には、俺を救命しようとした人間のように思えて。

 ついで、あの時、そうだね、帝国が崩壊する寸前。

 猫耳勇者と対峙した際に、ボードのような感じに、映像投影されていたあの人。

 しかし、ボードに示される情報には、とてもそんな人間とは思えない状態で。

 正直、狂人であるとしか言いようがない、そんな様子である。

 「んでこいつだが。」 

 「!」 

 「元々クローンだったんだが、どうしてか頭がイカレてしまってな?おかしな人間にしかならなくなったのさ。ああ、知識と技術に関してはお墨付きだがね?だが、性格に問題が出ちまってね、他の部署からは厄介払い。帝国崩壊時も、そうして、何らかの技術部署にいて、んで、猫耳勇者と対峙しちまって、事故で死亡。おまけに大元と呼ばれるそいつも、消失ってな。ヴァルかトールがいりゃあ、あんな事態にはならなかっただろうに、どうしてか、人間であるおめーを指名してな。呆れるよ。」 

 「!……。」

 その研究者みたいな人物の説明に。

 エイルは面白くなさそうに言ってくる。

 そも、その人物の、くだらないプライドによって瓦解したのだから。

 怒りも通り越して呆れてもいるようだ。 

 そんな状況において、そう、ヴァルやトールを配置しなかったことに。

 エイルは呆れ果てた。 

 「……って、あんま面白くねーな、これ。」

 「!……あ、うん。」

 呆れて、いよいよ溜息までというところで。

 エイルははっとなって、顔を上げる。 

 よく考えてみたら、面白くないなと思い。 

 頭を振って、気持ち入れ替えるようで。 

 「……へへっ。まあ、あんな役立たずなんか、いくら作ってもゴミだからな。」 

 「?!」

 気持ち入れ替えたなら、不意に不敵に笑みを浮かべて言ってくる。 

 何故と思いつつ、注目するなら。

 「おめーに特別にエイル様の秘密教えてやっぜ。へへへ。」

 「!」

 理由にと、秘密を教えるとエイルは自分の頭を突いて。

 何を言うかと、構えるなら。

 「あのイカレ野郎の技術も知識も、このエイル様の頭の中さ。このエイル様がこの世にいりゃぁ、あんなイカレ野郎いなくても、いいってこった!へへっ!」

 「!」 

 そう、その謎の研究者がいなくても、自分がいるからいいと。

 技術も知識も持ち、かつ、ヴァルほどではないにしろ。

 自分だって、モンスターである生半可な人間より、生き延びられる。 

 そういう人間たちを沢山量産するぐらいなら、自分がいればいいと。

 笑みを浮かべたら、そこには確かな自信を感じる。

 「……まあ、なんだ。」

 「?」

 「話し変わっが、このエイル様たちがいる限り、未だに帝国が敗北したとは考えていないってこった、一部はな。んで、各地に残党がいるが、そいつらは、いつでも逆襲する機会を伺ってるってな。」 

 「!……そっか。」 

 やがて、余談の締め括りには、未だに敗北したとは思っていない。

 崩壊、分裂してもなお、反撃の機会を待っていると。

 言って、ボードをまた指示棒で突けば、帝国が崩壊した後も。

 各地に次々と円が現れては、まるで、待っているかのように。

 多分、それら、帝国の部隊なのかもしれない。

 その中の一つに、俺たちが今いる所も示されていることから。

 「!」

 予定としてか、その円はまた、どこかに集合して、大きくなるようなよう。

 詳しい説明はまだ、されていないが、行軍としては、そうなのかも。

 「ま、おおよその流れはこう。んでもって、おめーもモンスターとして生まれ変わってんだから、おめーも参加することになるな。」

 「!……そっか。」

 「んだから、授業続けっぞ!とりあえず、一人で外歩けるぐらいにはな。」

 「!……あ、ああ。」 

 なお、その行軍の中には、俺も含まれて。 

 うっかりしていたが、そも俺もまた、モンスターなのだ。

 兵器なのだ、当然、参加することになる。

 そのためにもと、エイルが言うことには、要約するけれど。

 色々と知って、一人で出歩けるようになるほどまでにすると。 

 「それじゃ、お次は実戦的な感じで。」

 「!ああ。」

 そのためにも、話題を変えるや。

 実戦的な、何かのよう。 

 「お次は、色々と使えるマキナだな!覚えておいて損はねーぜ?ああ、おめーもいつかは使えるようになんねーとな!」

 「!」

 それは、マキナのことのよう。 

 ニヤリとエイルは笑みを浮かべては、言ってきた。 

 マキナ。 

 スフィアを動力源とする機械の類全般。

 ただ、それを知るだけではなく。

 どうもエイルは、この機会に俺に色々と教え込むみたい。

 「ほんじゃま、基本的な物から。これ!」

 「!」

 始まりに、基本的な物として、ボードに表示する。

 それは、武骨な巨人のよう。そうだね、アニメのロボットみたいな。

 だが、ゴツゴツして、スマートとは言えないけれど。 

 「うちら帝国の、大量生産しているマキナ。〝Mn-24〟だ。」

 「!……Mn……。元素記号みたいだな。〝マンガン〟か?」

 「!おっ!おめーこれが読めるのか!へへへっ!!」

 「!」

 では、と。そのマキナについて説明がなされるが。

 最初は、それこそ、型式番号か、製造名か言われるが。

 記号からして、横槍に悪いが、俺はつい、元素記号を口にした。

 エイルは不快に思うよりも、むしろ喜びを露にして。

 「おめー、ズバリ、こいつはそう読むのさ。ああ、うちら帝国じゃ、似たような感じで機体名が与えられているのんさ。よく当てれたな!ヴァカリキーなんか、すっげー適当なこと口走っていたからな!」

 「!」

 言うや、もののズバリ。

 当たっていたらしい。

 また、帝国では、そういう名称を付けるのが一般的らしい。 

 戦闘機とかの、型式とかと思えばいいか。

 「ま、読みが分かったら、今度は構造とか、能力とか、頭に叩き込んでもらわんとな、困るぜ?いざという時、使えねーのはな。」

 「!……ああ。」

 読みが分かったなら、今度は性能とかの解説らしい。

 何でも、いざという時、使えるようにするためにも、理解をとして。

 俺は、素直に聞き入ることにした。

 ボードに表示される情報が変わり。

 そのMn-24についての詳細情報だ。

 内部構造も表示されて、さも、設計図を見ているかのよう。

 駆動する様子や、各種部位の詳細情報も出てくる。

 胴体部分の、ある一部が駆動するなら、内部が露になり。

 そう、コックピットだと言わしめるかのよう。 

 その内部には、座席と、操縦桿、スロットルやら、モニターやらがあり。

 さながら、SF物か、ロボット物のよう。

 見て、……つい心がときめきそうになってしまう。

 ……なお、外見の格好はよくないが。

 「旧式だが、威嚇にゃ十分さね。あ、最新型もあるけどね?」

 「!」

 この機体は、しかし旧式らしい。

 新型もあるとのことで。ボードの情報が入れ替わり。

 最新型とやらの情報も表示される。今度の機体は、格好がいいと言える。

 表示されたのは、巨人であれど、かなりスマートな印象となる。

 ゴテゴテとした様子のない、端正さ。 

 さしずめ、特殊部隊の隊員のよう。

 駆動系もいくつか変わっているか。

 手の動きなんか、スムーズで、まるで本当に人間のよう。

 胴体部分が駆動するなら、先のようにコックピットが露になる。

 「!」

 だが、色々と変わっているようで。操縦桿とか、一切ない。

 座席っぽいのもあるが、どうも座りっぱなしでもない。

 どちらかというと、立って動かすような?その通りにか、空間は広く。

 また、操縦方法もあり。 

 何と、手、腕、脚などに専用の機械を取り付けて。

 パイロットの動きと連動するようにできているらしい。

 その際は、パイロットはコックピット内で。

 宙づりのような感じとなっているみたいだけども。

 そうなると、衝撃も伝わりにくいか?

 何より、人間らしい動きを再現できると。

 また、型式番号も変わり。

 〝Mn-35〟となっている。

 番号が違うことから、世代も性能も発展した。

 エイルの言葉通り、最新型なのかも。

 「ま、実機はどうせ後々乗ることになるな。お次は、これだ。」 

 「!」

 情報が変わり。

 今度は、簡単に言えば、犬のような狼のような……機械の何か。

 「これは、共和連邦のマキナだ。メインな奴らな?」

 「!」

 共和連邦の、主に使用されているマキナらしい。 

 「型式番号は、〝M-1〟だ。」

 「!……何だか、どっかの戦車みたいだな。」

 「四足歩行で、進軍する様子は、別に違和感ねーぜ?」

 「!……そっか。」

 それも、型式番号的に、戦車っぽい扱いで。

 エイル自身も、そう思っているらしい。

 言うことにも、四足歩行で進軍してくる様子は確かに戦車に思える。 

 「ちなみに、昨日エイル様たちに襲い掛かってきて、おめーがライフルで仕留めた奴もこれ。脚部に水上スキーを搭載して、水上行動をしていたってこった。」

 「!」

 ちなみにと、昨日俺たちに襲い掛かってきたのも、だと。

 「状況に応じて、兵装を変えて、なんて、兵器じゃよくある話だろ?」

 「!……ああ。」 

 踏まえて言うなら、状況に応じて、兵装を変えると。

 確かに、と俺は納得した。

 まだ、実感とは遠いけれど、理屈としては、さもありなん。

 そんな物に、俺は昨日見事打ち倒したのだ。

 「まあ、そんな勝利に酔いしれるのも構わねーが、まだまだおめーはよく知らないだろうから、頭に叩き込んでもらうぜ?敵を知れば、……何とやらとか、な?」

 「!……あ、うん。」  

 そうは言ってもと、俺はまだ知らない。

 この場合、勝って兜の緒を締めよ、か?

 エイルは言ってくる。

 示すように、そのマキナに他の情報が付け加えられる。

 武装も色々あるらしく。

 ミサイルランチャーの他、胴体上部に大きな大砲や。

 何と、2本のレールを搭載して、射出するレールガンなる物も。

 場所場所に応じて、臨機応変に対応するらしく。

 その際には、色々と変えられると。

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