28 エイル様学級……ようやく。

 それも、お目覚めにバズーカ砲だと。

 ああ、想像はできるし、やれバラエティ番組でも見たことはあるが。

 そう、目覚めにバズーカ使うというものだが。

 なお、番組とかの類では実弾じゃないしそも向けてもいない。

 どでかい音で、起こすための物でしかない。

 このように、実弾を装填して、向けることじゃない。

 「……ヴァカリキー。やめといた方がいいぜ?」

 「!……激しく同意。」

 珍しいことに、エイルが言ってくることには、やめといた方がいいと。

 俺はそのことに同意する。

 いくら、不死身であっても、痛いだろうに。トールの身をつい、案じてしまった。

 「し~らねっ!あたしだけ攻撃喰らうのなんて、不公平だい!ってことで、トールにはあたしと同じ苦痛を味わえ!ファイアー!!」

 「?!」

 エイルの忠告聞かず、躊躇なくヴァルはその引き金を引いた。

 ニヤニヤと笑みさえ添えて。まずいと思った時には、遅く。

 また、発射される衝撃と、直撃への衝撃の予想に、つい身を守るために屈んで。

 「ええと、ぼ、防御!!」

 その際、背負ったバックパックに言う。

 《該当コマンド検索、完了。〝フォトンシールド〟。》

 中にある盾は、思考し、俺の求めていることを実行。

 光の膜を俺の身体を包み込むように展開した。

 衝撃はその時……。

 「……?」

 ……起こらない?起こらない?!

 突っ込んでいく風切り音は聞こえたのに、その後の爆音は響いてこない。

 なぜにと思い俺は顔を上げると。

 「?!」

 その光景に息を呑む。

 何と、バズーカ砲から射出された飛翔体は、トールの手に掴まれていて。

 到達もできないでいる。 

 にもかかわらず、トールは目を瞑ったまま。

 その光景はまさに、達人の様を見せられているよう。

 なお、トールは、掴んだそれを、そのままヴァル目掛けて投げ返してきた。

 「?!あぎゃぁぁあ?!」

 ヴァルは直撃して、またも悲鳴を上げて、今度はボード目掛けて飛んで行った。

 ……そのボードだが、エイルが丸めてしまい。

 壁だけとなり、ヴァルは何の補助もなく壁に激突してしまった。

 「……言わんこっちゃない。自業自得になるって、言いたかったのに。」

 「!……。」 

 見ているエイルは、静かにそう言った。

 ことから、エイルは既に予想していたと。

 それなら、トールは相当に凄いということになる。

 その凄さ知り、こちらは感心に納得しそうになるが。

 ……他方、納得しないのはいる。ヴァルだ。

 壁に追突して、そのままだったが、反転して鬼の形相を見せて。

 「っんめぇぇ!!!とぉぉぉぉぉるぅぅぅぅ!!!」

 咆哮しては、トールを見据えて、両手にレーセを持ち、構える。

 光の刃を迸らせて、向けるなら。

 今にも、やり合いかねない。

 咆哮が威嚇にも聞こえるか。

 トールは耳をピクリと動かしては、かっと目を見開いて。

 素早く席を立つなら、こちらもレーセを片手に、構えて。光の刃を迸らせて。

 結果、2人対峙する構図となる。

 それは、今から斬り合うと言いかねない。

 「……おい。外でやれよ。暴れられて、この居住施設が粉みじんになられても、困っぞほんと。」

 冷静に、エイルは言ってくる。

 このまま暴れられると、自分たちだけじゃない。

 この今いる場所までも被害を受けかねないとして。

 「!あ?!」

 「……みっ。」 

 二人は、睨み合いながらも、返事はして。

 「……うっし。〝運動〟すっぞ!表でろぁ!!」

 「……みっ。」

 から、ヴァルはトールに言ってくる。

 トールは、もちろんだとして。その頷きを見て、ヴァルは先導。

 トールと二人して、扉を抜け、外へと出て行った。

 「ッハァァァッハァアアアアアアア!!!!」

 「?!……何だあの声?!」 

 ……静かに出たかと思ったら、出たで、ヴァルは奇声みたく声を上げて。

 こちらも立ち上がり、窓から見ればもう構えていて。

 今からトールに飛び掛からんとしているようだ。

 トールは、吠えることもない。

 冷静に見据えて、レーセを構えて。

 おそらく、呼吸を整えるような間もななく、斬り合いが始まった。

 迸る光の刃同士がぶつかり、奇怪な音を立てて、ぶつかり合う。

 「見るなよ。バカが感染する。」

 「?!……。」

 同じく窓から見ていたエイルは、俺に冷静に言ってくるなら。

 それこそ、あんなバカなことになるぞと、言い聞かせるよう。

 俺は、従うことにする。

 「……んじゃ、授業の続きすっか。」

 「……ああ。」 

 そうなると、エイルは言って、先ほどまでの続きをしようと促して。

 俺は、静かに頷きまた席に座った。

 エイルも、服を整えるなら、またボードを広げて。

 映像を映し、授業を再開する手はずを整えた。

 先ほどと同じ、地図が表示されて。

 「復習だが……と。これが、崩壊前の帝国の範囲……と。」 

 「!」  

 早速とばかりに、昨日の復習に、地理を説明。

 その際、中央にある大陸から、範囲を示すように円が表示される。

 それは、日本みたいな列島の手前まで描かれていたり。

 ついでに、国旗か。シンボルマークが描かれた。

 赤地に、歯車を中心として、両端にハンマーが挟むように描かれた物。

 説明から、これが帝国のシンボルマークということか。

 「で、この範囲の外は、共和連邦と。」 

 次には、円の外の説明を。

 その時にはまた、シンボルマークが表示されるなら。

 いくつもの円が組み合わさり、さながら花のような模様が描かれた。

 共和連邦と説明があるから、そうなのだろう。

 「つい、この間までは、まあ、こんな形で拮抗していたってな。ああ、領土だって、今の倍はあったかんな。」

 「!……そっか。……で、今は?」

 エイルが言うことには。

 ついこの間までは、こうだったと。では今は?

 俺は、頷きながらも次の言葉を待つなら。

 「まあ、こんなものじゃないさ、全部バラバラ。順を追って説明すっから。んで、だ、ある時に、世界がびっくりする、スーパーびっくり人間・ウィザードが現れてって。」

 「!」

 急かすなとも暗に言われているようで。

 エイルは順を追って言うみたく。その際に、引き合いに出したのは。

 ウィザードなる存在だと。 

 その通りにか、列島から、矢印が伸びて。

 海を渡り、西側から帝国のある大陸まで侵入してきた。 

 それらは、いわゆるウィザードの進軍ルートのよう。

 「あぁっと。次に進む前に、と。」

 「!」

 その進軍ルートを一旦停止して、エイルは示すなら。

 ウィザードの進軍ルートの前に、また円が描かれて。

 さらに、その向こう。

 そう、円を中心とする場所に、何やら建物群が表示されていく。

 「まずは、この円の先が、帝国の首都。まぁ、何て機械都市だろうね。」 

 「!……。」

 拡大されると、かなりのハイテクな様相の都市が映し出された。

 俺が知っている、摩天楼の様相どころじゃない。

 かなり発展した、未来の世界が表示されていて。

 ただし、周辺は砂漠で、不毛。

 摩天楼の数々に、悲しいかな、瑞々しさは感じない。 

 「……ま、防衛システムはあるが、派手じゃねぇ。最も派手なのは、これだな。」 

 「!……。」

 そここそ、首都であるとして。

 だが、それが話したいことではない様子。

 指示棒を、エイルは首都を取り囲むような円を指して。

 指すなら、詳細情報を提示して。

 「!」

 されることには、対空火器や、防御兵装。

 また、多数の攻撃兵器を有しているなどから砦のような感じである。  

 「これ、帝国じゃ、絶対防御壁と呼ばれた場所だぜ。文字通り、無敵の要塞よん。」

 「!……そうなのか。」 

 「ああ。まず突破は無理だな。フォトンシールド、それも強大な奴をを展開したら、空からも陸からも攻略が不可能になる。」

 「!……。」

 エイル曰く、絶対な防御を誇る要塞らしい。

 付け加えに、強力なフォトンシールドまであれば、確かにと。

 「?!……ん?」

 聞くと、そこから疑問が。 

 なら、なぜ崩壊した?簡単に攻略できるものでもあるまいて。

 「……ならなんで、崩壊した?」

 口にするなら。

 そう、ならなぜ、崩壊したと。

 「そこで、さっき言った〝あいつ〟が出てくんのさ、そう、ウィザード。おめーの本名を名乗る、ぶっ飛んだ奴。」

 「!」

 その理由、まずはと鍵となる人物を出すなら。

 俺の本名を名乗る、あの人物を引き合いに出してきて。

 「噂じゃ、先遣部隊を壊滅させたり、収容施設を解放したり。それも、たった少数でやりやがったとか。んで、この壁に、仲間が合流して、だ。勢力を増して、突入していったと。」 

 「!……。」

 「ああ、実はこの時は、まだフォトンシールドが作動していなかったさ。んで、易々と侵入いたしましたと。」

 そのウィザードの戦闘能力を示すなら。

 少数で周辺施設を壊滅させたりしていることから、相当な印象を受ける。

 また、侵入されたことへの補足として。

 まだこの時には、防御壁が作動していなかったからだと。

 そのために、侵入されて。 

 「まあ、後続を入れないためにも、作動はさせたんだがね?逆に利用されちまったということさ。」

 「?!……利用。」

 なお、一応、防御壁は作動されたのだが、逆にそれを利用されたと。

 エイルは言って、円形の壁をなぞるように指示棒を動かす。

 「フォトンシールドのエネルギーを、逆流させやがったのさ。んで、そうなると、回路状になっているこの防御壁や、内部の防衛システムにエネルギーが逆流しちまってさ、耐えられず、大暴走、大爆発。結果、帝国は防衛システムの一切を破壊されて、見事降伏してしまうことになっちまったってな。」  

 「!」

 利用とは。

 エイルが言うことには、エネルギーを逆流させて。

 なんと、つながっている他の防衛システムにまで干渉して、破壊してしまったと。

 それを、成し遂げたと。

 「!!」

 大々的に表すように、かのウィザードの画像を示す。

 虎柄で猫耳の、少年。気弱にも見えるが、その奥には、確たる強さを隠し持つ。

 故に、使い手の最強称号を欲しいままにしたのか。

 ……猫耳勇者。

 さらに、その顔に、かつて見たことを思い出し。

 嘆いていた、表情だって思い起こされる。

 ……ものの、やはり。 

 なぜにあの時、その少年が泣いたかを、未だに理解できないでいる。

 「……。」

 「な?イカレてるだろ?やりやがったんだからな。……って、おーい!」

 「!」

 「ぼんやりするなよ。何か、思うことでもあった?」

 「……すまない。……分からない。」

 つい、ぼんやりしてしまっていた。

 エイルは、楽し気に話していたが。

 俺が、ぼんやりしていると気付くなら、突っ込んできて。

 さらには、何か思うことがあるのかとも。

 俺は、何とも言えず、分からないと。

 「ふぅん。ま、おめーも何か思うことがあるってことか。んじゃ、続けっぞ。放っておくと、外のヴァカ共の耳障りな声を聴くことになるからな。」

 「!……あ、ああ。……。」

 「……はぁ。」 

 その思うことには、別に咎めもしないと。

 先に進もうともしている。

 なお、うざったく思うことがあるらしく。

 窓から外を見て、呆れた表情を浮かべた。

 俺も合わせて、見るなら。

 「おぉおおおおらぁああああああああ!!!いい加減、潰れろ!!!地に伏せろ!いいから倒れろ!!倒れろ!!倒れやがれ!!!」

 「……。」

 バチバチと、光の刃をぶつけ合いながら、一方的だが言葉もぶつける。

 ヴァルとトールの姿が目に付いた。

 なお、ぶつけ合いであっても。

 息を乱すことなく、トールは冷静にさばいているが。

 つまりは、喧しいのが、ヴァルだけに。 

 「見ねー方が身のためだぜ?ヴァカになる。」

 「!……あ、ああ。」 

 そうなると、俺が影響されると。 

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