27 エイル様による学級……早速崩壊。

 「てなわけで、新入りフェンリル君のために、このエイル様が色々と教えてやろうと思うぜ!」

 「!」 

 昨日着ていた、独特な服装に着替えて。

 今日がようやく始まったと思ったら、エイルがいきなり言ってくる。

 色々と教えてくれる、……らしいが。

 俺はピンときて。

 「昨日の復習みたいなもの?」

 聞いてみた。 

 「おうさ!この世界で、兵器として生きるってんなら、色々知らにゃいかねーし、復習しねーと、身体に覚えられねーからさ!」

 「!……そっか。」 

 らしい。

 エイルはそうして、覚えさせるという算段だ。

 言って、胸を張っている。

 「んじゃま、準備しますかね!ほれ!ヴァカリキー、トール!」

 では早速として、エイルは手を叩いて、二人に言う。

 「うぇぇ~い。」

 「……みっ。」

 ヴァルはつまらなさそうに返事をして立ち上がり。

 トールは相変わらずの鳴き声を出して、立ち上がる。

 それだけで、言わずとも分かっているらしく。

 準備に取り掛かる。

 ヴァルは、住処の隅、何か荷物が置かれてあるスペースを開いて。

 それこそ学校で使われるような、机と椅子のセットを持ってくる。

 トールは、ベッドの下の引き出しから。

 何か巻かれた状態の、筒状の物を取り出し、それをベッドの向かいの壁に広げる。

 広げれば、どうやら、巻かれた黒板のような物のよう。

 ついでに、机を並べれば、すっかり教室の一風景になった。

 「!」

 狭いながらも、そのような様子には、懐かしさもある。

 林間学校みたいな感じかも。

 その、用意された机と椅子の3セットに、それぞれ座っては。

 例の折り畳みボードを覗き見る形となる。

 では、その教室の先生とは、やはりエイルである。

 白衣の姿は、ある意味どこかの教授のように思えてならない。

 「あ、あ~。んじゃあ、やりまっか。」 

 「!」

 そうして、ボードの側、教壇みたく立ち、いよいよかと始まった。

 始まったのと並行して。

 ボードに何か文字が羅列されていく。プロジェクターのスクリーンかとも思ってしまうが、投影している元はなく。

 そのボードに、直接表示されているらしい。

 おまけに、エイルがすっと手を当てたなら。

 その部分が変化して、全く別の情報が表示されたりもした。

 「んじゃあ、おさらいも兼ねて、フェンリルの頭に、世界地図を入れてやりますか。」

 「!」

 まずは、昨日言ったことの復習兼ねてと、分かりやすい構図を用意すると。

 世界地図らしい。

 ボードを撫でるなら、表示された情報が入れ替わり。

 世界地図だろうか、表示されてくる。

 その地図、そう、俺が知っている世界で言うなれば、大陸がいくつもあって。

 その真ん中に自分が住んでいた島国のあるようなもの。

 「……?」

 異世界であるはずだが、どことなく元いた世界の様子にも思える。

 住んでいた島国の、列島。

 傍に巨大な大陸、さらに、東側、大海を挟んだ向こうにもあって。

 ちなみに、超大国だと形容できるものでもあったか。

 そんな感じだが、やっぱり違いはある。

 海岸線や、あと、近くの大陸だって、完全に陸続きではなく。

 大きなクレーターみたいなもので分断されていたりと。

 似ているようで、似ていない。

 やっぱり違うのだと言うことか。

 「でだ、詳しい地理とか、ちぃっと話をすっか。」 

 「!」

 見とれているなら、エイルは続けて。

 ボードを向くなら、さっと指示棒を取り出して、指したりする。

 その様子は、やっぱり先生みたいだ。

 合わせて、指示された通り。

 ボードの地図は拡大されて、詳細な情報を提示してくる。

 なお、細かすぎて、よく見えないのが欠点だが。

 「え~、ここ、この大陸の南の海岸が……。」

 「!」

 示した先は、日本と似た島国の近くの大陸の、結構南の方で。

 その海岸付近を丸を描くように指示棒で示すなら、円で囲まれて。

 拡大されるなら。

 「今、エイル様たちがいる所だな。」

 「!」

 「ま、現在位置から、話し始めるのが、いいだろうからな!よく聞いとけよ!」

 現在位置らしい。

 どうやら、地理に関しては、現在位置から話し始めると。

 俺は知りたくあり、頷いて聞き入ろうとした。

 ……矢先。

 「んごぁぁぁ!!ぐぅぅ~!」

 「?!」

 盛大な音量で、誰かがいびきをかく。

 何だと?!と思い、隣を見れば、すぐに犯人は分かった。ヴァルだ。

 「……?」

 盛大な音量に、耳を塞ぎつつも、思えば、何か違和感で。

 恥ずかしながら、一緒に寝ていたはずなのに。

 寝ている時に盛大ないびきなんて、聞こえなかったはずだ。

 こんな音量なら、深く眠っていても起きるし。

 「!」

 まさかと思い、よくよく見れば、微かに瞼を開けて。

 様子さえ伺っていることから、どうやら、わざとやっているらしい。

 ……悪い子どもが、先生をおちょくる、そんな微妙な様子と捉えられるが。

 「……。」

 さて、それに対して、エイル〝先生〟は何をするのかと、反対方向を見れば。

 「?!」

 とんでもないことをしようとしているようで。

 「よっこらせっと。」

 なんとエイルは、ヴァルが朝に使おうとしたバズーカ砲を持ち、構えていた。

 あの身体からは想像できないと思えるほどで、ついぎょっとしてしまう。

 ……それで、何をするのか。

 決まっている。

 「……。」

 構えて、照準を覗いていることから、その視線を辿れば、ヴァルにであり。

 「……いや~な予感。」 

 覚えて、俺はそっと、席を離れた。

 「!」

 その通りに、そのタイミングで、エイルが引き金を引いた。

 空気が抜けるような音をまず立てたなら。

 ワンクッション置いて、風切り音をなびかせてくる。

 バズーカ砲から、ミサイルが射出されたみたい。

 そのミサイルは、進むにつれて加速していき、勢いを増して。

 「!!」

 そのまま、ヴァルの顔面目掛けていくなら、そのまま直撃する。

 派手な音を立てて、あんぐり開けていたヴァルの口元に入ったか。 

 想像して、俺は見ていられないとつい目を逸らす。

 「あヴぁぁあぁぁ?!」

 「!!……。」

 そも、対戦車兵装であろう。

 直撃したなら、声なんて出るはずはないが。

 ……そこは、ヴァルキリーだからか、素っ頓狂みたく。

 妙ちくりんな悲鳴が上がることから、直撃しても、平気なのだと言わしめている。

 直撃した勢いを与えられ、ヴァルの身体は机から離れ、やがて、派手に倒れる。

 なお、表情は直撃の煙に包まれ、見えないでいて分からないが。

 「……げほっ!ごほっ!!」

 「!」 

 先も言ったが、ヴァルキリーだ。

 バズーカ砲の弾が直撃しようが、咳き込むだけで済む。

 その咳き込みに、煙も晴れたなら、相当に不機嫌な表情を晒してきた。 

 「……っ!エイル、てんめ~!!!」

 「あ?わりーのはおめーだろうが!!このエイル様の授業妨害しやがって!学級崩壊起こす奴、成敗!!なんてな!」

 「ちっ!ちょっとしたおふざけも分かんねー奴!」

 直撃の勢いまだあるか、ヴァルは不機嫌さを露に。

 椅子を踏みつけながら立つなら、指差し、文句を言ってくる。

 なお、エイルは飄々とスルーしていて。

 気に食わないことに、ヴァルは舌打つ。

 エイルは気にも留めず。

 何をするかと言えば。バズーカ砲の口を覗きつつ。

 また、自分のバックパックから機械の腕が伸びるなら。

 その先端にミサイルを持ち。

 銃口?から中に、入れていた。

 どうやら、装填したらしい。

 エイルのセリフの通り、ヴァルの次の言葉次第によってはまた砲撃でもしそうな。

 「って、あたしだけじゃねーだろ!お前の話聞かねーの。ほれトールを見やがれ、こんちくしょう!」

 「!」

 ヴァルの舌打ちから次の言葉は。

 トールに関してで。

 言って、トールを指差す。示された通り俺は追って注目するなら。

 「……?」

 しかし、静かであり。まあ、目を瞑っているが。それ以外に違和感はない。

 見方によっては、静かに聞いていると思えるのだが。

 そう、ヴァルの言うような、聞いていないとは違うのではないか。

 そう思えてならない。

 そのために、首を傾げていると。

 「……気付かねーの?こいつ、寝てやがるぜ?ほら、もっと近付けよ。」

 「?!なっ?!」

 気付かないと言われるや、俺は頭を掴まれ。

 無理矢理トールの身体に押し付けられる格好になってしまった。

 「?!」

 その際、思いっきり頭がトールの胸に入ってしまう。

 その気恥ずかしさに、つい顔が赤くなってしまった。

 「……んゅ……っ!」

 「!」

 また、トールだが、俺の頭が胸に当たった際に、艶めかしい声を上げ。

 一瞬、何か感じたような顔をするが、目は瞑ったまま。

 すぐに。

 「……すーっ。……すーっ。」 

 寝息を立てた。

 「!」

 そう、静かにしていながら、眠っていたのだ。寝息まで静かなものだから。

 こう、押し付けられないと気付かなかったよ。

 「な?ほら見ろよ!こいつだって、聞いてねーぞ?あたしだけバズーカは、不公平だろうがよぉ?」

 「?!……。」

 俺が、トールの様子に気付くならと。

 ヴァルは俺を見て、次にエイルを見るなら、指差しながら言ってくる。

 不満たらたら、そう、眠っているなら、絶対に聞いていないと。

 だからこそ、バズーカ砲を喰らうのは不公平で。

 聞いて俺は、無茶苦茶な理論に、ぎょっとしながらも、何とも言えなくなる。

 他方、エイルは。

 「いや、エイル様がバズーカ撃ったのは、おめーがやかましいからだ、それもすっごくわざとらしくな。寝るなら寝るで、静かにしてりゃーいんのさ。」

 と、そもそも論を。

 納得に、俺は頷いた。

 〝学級崩壊〟の原因であるからこそ、咎めたと。 

 言われて、ヴァルは引き下がるか。

 「……ぬぅぅ。」

 そんな風に、唸ってもいるが。

 「……貸せっ!こんのちんちくりん!」

 「あ?!んだとぅ?!……って、ヴァカリキー?!」

 「?!」

 引き下がらない。

 どころか、このままでは苛立ちが収まらないとして。

 ヴァルはエイルに近付くなら、手にしているバズーカ砲を奪う。

 その際、思いっきり悪口を言い、エイルは反応に怒りを露にするが。

 一転、ヴァルがしようとしていることに、ぎょっとして咎めを返した。

 俺もまた、同じように。なお、一体全体何をするのか、分からないでいるが。

 奪ったバズーカ砲を、ヴァルは肩に担いで構えて、トールを狙い。

 「!……いや~な予感。」 

 嫌な予感がしてならない。

 そう、エイルの抱いたのが、分かった気がした。

 その懸念、証明は。

 「え~……!本日お目覚めバズーカ!すてんば~い!」 

 「!……。」

 ヴァルがしてくれて。

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