【異世界兵士大和】異世界転生したら生物兵器（モンスター）でした

26 おはよう電気ショック

　「……なぁ、おい。フェンリル。」

　「！」

　「えらい緊張のしようだな？それは、何でだ？」

　「あ、あ～と……。」

　俺の様子に、横のエイルは肘で突いて言ってくることには、意地悪っぽく。

　俺の緊張の理由について聞いてきて。

　俺は答えに窮してしまう。

　「……ええと、知っているんじゃ……ない？」　

　からこそ、エイルは知っているだろうと逆に俺は返した。

　エイルは、ニヤリと笑みを浮かべて。

　「オスの発情じゃね？」

　「！！……ぬぅ。」

　と答える。

　どうとも言えず、俺は言葉を失いそうになる。

　緊張の原因をそうだと言われると、何とも言えず。

　「へへぇっ！合ってるってことか、そいつぁ！……まあしかし、常に発情されても色々困るからなぁ。さぁて、どうすっかね。」

　「！……。」

　俺の無言を当たりと捉えて、エイルは言うが。

　だが、常にそうされるのも、軽く悩みもする。

　一方で俺は、じっとエイルを見つめて、どう言うかを構えた。　

　「……メスの尻を追い回されたら、エイル様でも敵わねぇ。そうやって、まあ、囮代わりになるなら、いいけれどねぇ。間抜け面を晒されても、って。ん～……。」

　「……？」

　しかし、聞いていてもどうも、俺に的確な、といえるものではないようだ。

　女の人を追いかけ回すような、変態みたいな感じになっている気がする。

　違和感に俺は首を傾げる。

　「……なあ、待った。それ、何だか俺が常に、女の子を追い回すような人間になっていないか？そんな、変態じみた人間に見えるか？」

　そのうえで、待ったを掛けるように言う。

　「オスはどいつもこいつも、変態ってなぁ。今後それが仇となることも……。」

　「……聞いていない。」　

　……が、聞いていない。　

　どうもエイルは、人の話を無視して進めているようで。

　なお、その態度見ても、わざとそうしているようにしか感じられず。　

　……いや、わざと、か。

　こう、人の話を聞かずそうするのは、エイルらしいということか。

　「あぁ！思い付いた！こう、メスに発情しない素敵な方法！画期的だぜぇ！」

　「……もういいや。」

　挙句エイルは、もう思い付く始末。顔を上げて、ぱっと明るくしてきた。　

　俺は、諦めてしまい、聞くしかないやとした。　

　「フェンリル、こういう風にすりゃいいのさ！」

　「……聞いておくけど、手に〝人〟って文字を書いて、飲み込むという方法じゃないよな？」

　耳を傾けるなら、早速とエイルは言いたそうな雰囲気であったが。

　中断するようで悪いけれど。

　手に文字を書いて、飲み込むような方法じゃないよなと言い。

　「あんだそりゃ？」

　「……何でもない。」

　なお、知らないとされて。俺はこれも諦める。

　「まあ、んなことよりもよぉ、エイル様の話をさせてくれよ！」

　「……分かった。すまない。」　

　そんなことよりも、自分の話をさせろと強引に押されて。

　俺は、致し方なく頷くしかない。

　「……で、その方法とは？」

　お詫び代わり、促すことには。　

　「あいつらを、おっきな猫だと思うってこった！どうだ？騙されたと思って、やってみる価値はあるとおもっけど。」

　「はっ？……猫……。……。」

　猫だと思えと、自信満々に。

　俺は、言われるまま、トールやヴァルを見る。

　エイルに言われるままに、じっと見て。

　「……！」

　素直な頭だ。

　言われるままにしていたなら、段々見えてきたよ。　

　ああ、トールだって、メインクーンを冠しているんだ。

　大きな、それも相当に大きな猫に見えて。

　また、ヴァルに至っては、腹ばいになって寝ている、巨大な猫だ。

　それこそ、彼女の冠するノルウェージャンフォレストキャットの伝説通り。

　フレイヤの戦車を引く、巨大な猫と言えよう。

　……雷神トールが持ち上げられなかったとされるとしても。

　皮肉かな、名前を冠する者は、その近くにいるのだが、そこは触れないでおこう。

　そのヴァル猫だが、相変わらず痙攣したまま。

　「……な、ぁああ……お……。」　

　「！……。」　

　辛うじて、息を吐いて鳴くだけ。それも、猫の声。

　やっぱり、素直な頭だ、ちゃんと認識を改めたよ、何てな。

　「……みっ。」

　「！」

　トールだって、猫みたいに鳴く……鳴く？

　「……。」

　トールは、元から、猫の鳴き声みたいだったから、あんまり変わらないや。

　まあ、それでも姿は変わり。

　呑気に、顔を洗う巨大な猫だ。

　ヴァル猫が、伸びていようが関係なく、そのまままた、眠りそうな様子。

　「な……ああああお！」

　「！」

　それが癪に障ったかは別として。

　ヴァル猫の鳴きは、吠えに近くなり。合わせて、身体を起こして。

　ぎろりと、トールを見るが、何もせず。

　それならと、今度はこちら……ああいや、視線はエイルの方にか、向けて。

　猫らしく、四つん這いで歩いてくる。

　「？！」

　どういう風の吹き回しか、エイルに行くと見せかけて、俺の背後に回り。

　俺の身体の間に両手を出す形で、抱き着いてきた。　

　「んなぁぁお。」

　「！！ぬぅ？！」

　顔は、当然、俺の耳元にあって、そこから、柔らかく、誘うように鳴いてくる。

　思わずぞくりと身体を跳ねさせてしまった。

　「……？！」

　だが、それがわざとらしく思えてならない。

　言葉ではなく、本当に自分でそう鳴いたように思える。

　「……もしかしてヴァル、わざと？」

　「……たりめーだ。面白れぇことしてっから、乗ってやったんだ。えぇ？このあたしの猫真似も、似合うもんだろう？」

　「……。」　

　聞くならやはり。

　それに、そうなったなら、いわゆる暗示も解けて。

　いつものヴァル、ああ、下着姿の状態だが、に戻ってしまう。

　トールも当然。

　俺は、ヴァルの囁き声に、やがては呆れてしまった。　

　「へんっ。どーせ、メスに免疫がねーからってか。その内慣れっだろ。」　

　「……ぬぅ。」

　呆れも気にせず、ヴァルが続けることには、ずばり俺に女性への耐性が。

　ないからだろうと見抜いて。

　俺は、ぐうの音も出ないでいる。

　いわゆる抵抗力がないと言われたら、それまでだと、反論の余地はない。

　「？！んぁ！それだったら、エイル様だってメスだぜ？……こいつそう言えば、何でエイル様には発情しねーんだ？」

　「！えっ？！……うっ、それは……。」　

　ヴァルに追従する形だが、エイルが気になったのは。

　そう言えばと口にしたことで、自分を見ても、何で俺は発情しないだとされて。

　俺は、答えに窮する。

　言葉が出ないではない。

　……気にしてそうだから、口にしたくないだけ。

　では、その言葉とは、……身体が幼いから。

　それに発情するのは……色々とまずくないか？なぁ。

　「それは？エイル様怒んねーから言ってみ？」

　「！……。」

　横にいるエイルは、察していてか、ぎろりと鋭く見ながら言ってくる。

　ヴァルを背中に載せる俺は、言葉を発せないでいて。

　その様子から、絶対怒ると見抜いたから。

　余計に口にできるわけがない。

　「身体が幼いから。」　

　「あ？！」

　「？！」

　いいや、口にした、……ヴァルが。

　ちらりと見れば、何食わぬ顔で、平然としながら紡いで。

　言われたエイルは、今にも爆発しそうな雰囲気を出して。

　俺は、思っていたことを口にされて。

　自分が言ってしまったのかと逆に思えて仕方なくなる。

　「ほら～。こいつが言ってんだぜ？」

　「？！あががが？！」

　追い打ちを掛けるようにヴァルが言いながら、何と、俺の顔に手を回して。

　エイルの方に向かせては、口に手をやり、ガチガチと口を無理矢理動かしてきた。

　「おチビ、おっぱい離れできないガキ、や～いや～い！お前のママ、出べそ～！」

　「？！」

　合わせて、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、俺の口を動かしては言ってきて。

　嫌なアテレコをしてくれる。

　……言っておくが、ヴァルの言ったこと、思ってはいないので。

　なお、体を固定された俺は、抵抗できないでいて。

　目を丸くするしかない。

　「むかっ！！！！こぉぉんのぉぉ！ヴァカリキー！！！」

　爆発しそうだったエイルは、とうとう爆発した。

　鬼のように、頭に角でも生えたかのような形相になるなら、咆哮して。

　「うひひひひひ！あたしは言ってないよ～だ。言ったのはフェンリルちゃんですよん、ほんとほんと！！」

　ヴァルは笑いながら、火に油を注いでいく。冷やかすように。

　さらには、俺を盾にしていることから、余裕だ。

　「こんのっ！！」

　エイルは面白くない様子であり、ならばと指を鳴らす。

　応じて、エイルが背負っていたバックパックが浮遊してきて。

　荷物を放り込む口を開くなら、そこから機械の腕が何本も出てきた。

　それを、ヴァルの身体に巻き付けてきて。

　「おほっ！やんのか？！いいぜ！やれるもんならやってみな！フェンリルちゃんを引き剥がせたらな？」

　ヴァルは楽しそうに言っていて。

　また、俺がいるのだから、引き剥がせたらとも煽る。

　そうでないと、俺を巻き込むからと。

　「？！あり？！マヂで？！」

　「エイル様舐めんな！」

　「？！」

　その煽り通り、応じてくれるよう？いいや、俺を巻き込むことはない。

　エイルは、侮るなとして、何だか念を飛ばすことをしたなら。

　身体に巻き付いた機械の腕は、ヴァルの腕まで伸ばされて。巻き付いて。

　いとも簡単に、俺から剥がしてしまう。

　こうして、ヴァル単独になるなら、ヴァルごと浮遊して、床に降りて。

　きちんと正座させて。

　ヴァルは、一転、ぎょっとしてもいたが。

　「電気椅子！やれっ！」

　エイルの一言に、意図を察して、軽く青冷めもする。

　「あぎゃらびばべべへぇ？！」

　……本日２回目の電気ショックを、受けることとなる。

　強大な電流が走っているようで。

　身体は見事痙攣、自分の意志で、動きを止めることができないようだ。

　ヴァルはぎょっとした表情のまま、しばらくその電気ショックを受け続ける。

　それこそ、普通なら死ぬレベルだろう。

　……かれこれ何度も言っているが、普通じゃない、俺たちは。

　結局、ヴァルは痙攣するだけで。

　しばらくしたら復活。

　そんなことやり取り終えて、今日が始まった。