第二章 クロス・コネクト
25 おはようレールガン
そうして、モンスターなる戦闘兵器であるということが分かるものの。
しかし、自分がその一群であるというには、まだ実感できないでいた。
さて、それからは、モンスターとして生きる日常なのだが。
生憎と、銃なんて握ったことのない俺は、年不相応に泥まみれになるばかりに。
兵器として、兵士として生きる。今俺は、その日常の只中にあった。
「全員起こしーーーーー!!!」
「?!」
あの戦闘の傷、癒えてなかろうて。
そうであっても、そんな港町に、怒号のような号令が木霊する。
何事と、つい身体を上げれば、そこはプレハブ作りの、簡素な建物の中。
辛うじて、エアコンと、大きなベッド、他、多少の家電があるだけで。
「……。」
つい、忘れがちだったが。
基本ヴァルたちは、陸上ではここで寝泊まりしていると、思い出して。
なら、寝ぼけた感じも、冴えてはくる。
「……!!」
また、寝ぼけていたということはと。
周辺を見て、息を呑む。
そう、側にいるヴァルたちは、下着姿で、肌の露出多く。
慣れていない俺は、ごくりと緊張に唾を飲み込んだ。
女性の肌を見るなんて、そうそうなく、今までも。やっぱり、緊張するかな。
「?!」
そんな、じっと見ていたから、視線に気付いてか。
ヴァルがいきなりむくりと身体を起こしてきた。
「!!……ええと、お、おはよう……。」
悪く思え、とりあえず、繕うことに、朝の挨拶を。
「……?」
……したが、ヴァルは見向きもしない。
なぜだとも思っていたが、ヴァルは立ち上がるなら。
そっと、ベッドの下を見るように身を屈めて。
まさぐっては、何かを手にして身体を起こす。
「?!」
何を持っていたか、見たならば、……バズーカ砲。
手にしているヴァルは、ものすごく不機嫌な様子であり。
……嫌な、予感がする。
肩に載せて、歩き出して。
窓を思いっきり開いては構えて……。
「!!……まさか。」
予感が的中しそう。
ヴァルがやろうとしていることはとして、つい呟いてしまうが。
そう、ここから、砲撃するのか?!するのだ!!
「!」
俺は、駆け出して、ヴァルの身体を鷲掴みにした。
女性の肌が触れるのに、ついごくりと唾を飲み込むものの。
「や、やめろ!!……それは、まずいんじゃ?!」
「あぁ?!あたしの眠りを妨げる、耳障りな号令に対して、返事して何が悪い?!」
「?!えぇ?!」
それよりもと、さすがにまずいんじゃと。なお、返事は無茶苦茶。
号令への返事……らしいが。嘘だろうと思ってしまう。
「そ、そんなことより!!それじゃ、フレンドリーファイア?!みたいなもんじゃないかよ!!」
躊躇いに、言葉を失いそうになったが、それよりも、同士討ちだと俺は吠える。
……いくら何でも、それは……。
思うに、味方を撃つのは気分が悪い。俺は止めようと足掻く。
「!!」
だが、女性らしからぬ、恐ろしい力に、俺の足掻きも限界に。
「……っ!」
「?!」
撃たせるのも悪く。
咄嗟に俺は、手にあるバズーカ砲に手をやり、無理矢理引き剥がし取る。
引き剥がしたら、ヴァルはぎょっとした表情をこちらに向けて。
どうやら、目が覚めたと言うべきか。
寝ぼけも取れたか。
「……へぇ。」
「!」
だからか、俺のそうしたことを遅れながらも理解しては。
やがて表情は、興味深いと言わしめるほどに、ニヤリと笑みを浮かべた。
「朝からあたしに抱き着くとぁ、お前もなかなかいいご身分だな、ええ?」
「!!あ、いや。」
セリフに、ついまたぎょっとして、離れる。
「へへへっ。オスってやつぁ、大胆だねぇ。……嫌いじゃねーぜ?そういうの。ああ、その前に、あたしの眠りを妨げたバカ共に鉄槌をだな……。」
「?!えぇ?!」
……何だか、恥ずかしくなるような。
こそばゆい言葉をヴァルは述べたものの、翻って、またも攻撃しそうな勢いに。
得物は……ない。一体、何でやるつもりか?
「……?」
ヴァルは、窓から離れると、またもベッドに向かうが、屈んだりはしない。
何をするのか見つめていると。
ヴァルが手にするのは、同じ大きなベッドに眠る、エイルの物のよう。
そう、エイルの背負っている、何でも出てくる不思議なバックパック。
「へへへっ!!」
「ええ?!」
無断で、手にして、まさぐりだすようで。ゴソゴソと探っている。
嫌な感じのする、不気味な笑みさえ、浮かべては。
ついに、手にした物を引き出す。
抜き出した手の先にあるのは、……巨大なライフル銃……と形容すればいいか。
そんな物を握り締めている。
色々とツッコみたい部分はあるが。
そう、……どうやって、エイルのバックパックの中に入っていたとかね。
……野暮だろうから、これより先を言えないのが悔しいが。
それで、その巨大なライフル銃みたいな物を取り出したなら。
さも、ライフル銃を構えるようにして。
「……!」
それで分かったことだが。
大砲というには、小さい。携行兵器にしては巨大という物で。
かつ、その銃口付近には2本の太い金属棒が剥き出してきて。
電気を纏い、挙句、光と音さえ発する。
バチバチという、奇怪な音さえ立てて。……何だろうとつい疑問に首を傾げた。
「……あ、あの、ヴァルキリー?何それ?」
口にしたなら。
「〝レールガン〟だ!レールガン!へへへっ!こいつは効くぜぇ?」
「?!……?」
レールガンと、にやけた笑みのまま、答えてくれた。
何だと?!
……と心の中で思うものの、だが、俺にはさっぱり理解できないでいた。
「つんつん。」
「?!」
では、詳しく聞きたくあり、ヴァルの次の言葉を待っていたが。
代わりに、俺の横腹を誰かが突いて。
見れば、起きたばかりのエイル。
こちらも下着姿だが。
ヴァルやトールと違い、一言で言えば、お子様な姿。
どこもかしこも真っ平、仮に、魅力を見付けろと言ったら。
可愛いおませな女の子意外としか……俺にはできない。
そんなエイルだが、もちろん、可愛いの魅力的だのを言わせたく。
そうしているんじゃないと思う。
「おめーも早起きだな、おはよう。」
「!……ああ、おはよう。」
「おもしれーことになってるよな?」
……まずは丁寧に挨拶か?それを言いたいからか?思うものの。
違う。
挨拶の次に、言いたいことがあるようで。
「もしかしておめー、レールガンが気になんのか?」
「!……ああ。」
それは、俺が抱いた、レールガンなる物のことらしい。それだ。
それが本題なのだろう。まさかと思うが、そのためにわざわざ起きたのか。
何だか、親切心を感じてならない。
「へへへっ!エイル様が懇切丁寧に教えてやっぜ!色々と知りたがりだからな、おめーはよ。ま、その後、テキパキ働いてくれりゃぁ、エイル様は満足だ!」
「!ああ。」
丁寧に教えてくれるらしく、顔に笑みまで浮かべるが。
俺は一瞬、下心も感じてしまうが、問うのも野暮で、聞き入ることにする。
「んで、レールガンってのは、磁力の力で弾を加速させて放つやつだ。簡単に言えば、だけどな。磁力による加速に、銃口に2本のレールがあんのさ。」
「ああ。」
「その加速って言やぁ、亜光速まで加速する。んな物が着弾したら、強力な破壊力を生むってこった。分かる?」
「……何となく。」
レールガンの説明をしてくれる。
2本の金属棒をレールとして、磁力によるエネルギーにて、加速して放つ。
……という仕組みの兵器らしい。
運動エネルギーの凄まじさに、破壊力も抜群と。
何となくとして、理解を俺は示す。
「ま、そんなところ。兵器としてはな。あ、これ後付けだけどね。」
「?」
エイルは、それぐらいの理解でいいとして終えそうであったが。
まだ、続きがある。
何でだろうと、含みのある言い方に、つい首を傾げた。
「余談みたいなもんだが……。」
「ああ。」
「エイル様の持ち物って、大抵セキュリティがあんのよ。あ、セキュリティって分かるよな?」
「!ああ。知っている。」
「おk。それならいいや。まあ、セキュリティがあるから、……ああ、どんなことになるかは、見てのお楽しみな。」
「!……分かった。」
さて、余談とはセキュリティらしく。
エイルは、その前にと、聞くが。
もちろん俺は、知っている。
では、何が起こるかは、エイル曰く、見てのお楽しみだとかと。
……百聞は一見に如かず、か。
言われた通り、俺はエイルから視線を外し、ヴァルへと向ける。
ヴァルの方は、ニヤニヤしながら、外にレールガンを向けていて。
今にも発射しそうな状態であったが。
なお、まだ発射できるわけではない。
耳をつんざくような音を、上げていて、その音量も高まっていく。
発する光も、やがて頂点まで来たか。
激しく迸る。
「!」
その時、ヴァルの瞳がかっと見開いたなら、俺は今かと感じる。
その瞬間に、引き金を引こうと、指は動いた。
「?!」
動かしたら、強大な放電音が響く。発砲音じゃない。
しかも。
「あぎゃらびばべべへぇ?!」
……ヴァルの悲鳴付き。
何事と思うなら、ヴァルは思いっきり感電していて。
その放電量に、身体全体を跳ねさせて。
一しきり放電し終えたなら、ヴァルはレールガンをポロリと落として。
自らの身体も崩してしまう。
そして、倒れた先で、痙攣をしている。
「……な、何が?」
何が起こったのか、キョトンとしながら口にする。
「……。」
口にした後、冷静に考えると、電気が逆流したようにも?
「ああ、ありゃ逆流さ。エイル様以外が使ったら、あんなことになるようにしてあんのさね!へんっ!いい気味だ。」
「……。それがセキュリティか。」
「おうさ!」
その通りのよう。
エイルは自慢げに言って、胸を張る。セキュリティであるとも頷いて。
そのうえで、ヴァルを見れば、何だか哀れにも見えた。
「!」
「大丈夫。どうせ、死なねーし。」
「……そっか。」
なお、憐れむ必要なんてないと、エイルは言ってきて。
そも、死なないものだから、そのままにしておけとも訴える。
それならと、俺は従うしかない。
「……んみっ?」
「!」
ヴァルを見て、エイルと会話していたら、後ろの、ベッドの方から声がして。
振り返り見ると。
「!!」
最後の一人、トールだが、その姿に俺は緊張して、ごくりと唾を飲み込んだ。
何せ、ヴァルと同じように下着姿であって、さらに、大きな双丘が目に入って。
これで緊張しないのが、おかしいと思うほど。
なお、トールは恥ずかしがることもなく今しがた起きたばかりと。
ぼんやりとしていた。
「あ、あぁ~……。ええと、お、おはよう。」
俺は、ジロジロ見続けるのも失礼か、思って頭を振り払い。
緊張を解きたく、一言告げるなら、朝の挨拶をと。
「……みっ。」
「……。」
返事はしてくれるが、挨拶ではなく、……眠たそうな鳴き声。
まあ、トールだからか。
ほとんど喋らないし、この場合はこれでよくしておく?
どうも続かないことに、俺は沈黙するしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます