24 大漁旗を掲げて
「……ぬぅ。」
またライフル銃を構えた。
「?!」
……矢先に、俺を目掛けて戦闘機が翻って向かう。
まるで、俺に狙いを定めたかのようであり。
「……マジか!!くそっ!」
うかうか狙うこともできず、俺は走り出した。
「?!えぇ?!」
その速度があまりにも速いことに、ここで気付く。
これなら、余裕で相手から逃れられそうで。なのだが、戸惑いに叫んでしまう。
「……。」
まあ、これならと頷いて。
駆け出して。
「!」
とはいっても、相手はその速度速く、追いついてきた。
所詮疾走は、音速に至るわけではないか。
「!!……のっ!」
追い付かれては、攻撃をされる。
やむを得ず、俺は地面を蹴っては、無意識に身体を宙で翻して。
相手にライフル銃を向ける形をとって。
狙う間もなく、その引き金を引いた。
軽快な音を立てて、光弾が乱射されて。
その弾幕、機体に張られた、光の膜に掻き消されはしていくものの。
一部はエアインテイクを貫いて。
結果、爆発し、迫る機体は四散する。
「!!……。」
「おぅ!やるじゃねーか!フェンリル!」
様子は、エイルも見てくれていて。
遠くから軽く、歓声を上げていた。
「……。」
俺は、身体をまた翻して、上手く着地しているが、実感湧かないまま。
手にしたライフル銃を、じっと見るだけで。
「……!」
そんなことをしていたら、またも戦闘機たちが飛来して。
こちらにまで、攻めてくる。
どうやら、ヴァルたちモンスターをやりたくて仕方ない?
いいや、刺し違えても、倒したいと望むか。
ボーっとしていられないか。
戦場だとするなら。
きっと、また空を見て、手にしているライフル銃を構え直す。
「!」
その迫る戦闘機横腹から、いくつもの光弾が貫いていき、爆散させる。
それは。
「へぇん!フェンリルにばかり、点数を上げたかねーぜ。エイル様だって、ちっとは働かねぇと、な!」」
「!」
エイルからだと。
どうやら、ウィングビットなる物を、巧みに動かしていたようだ。
そのために、敵を複数倒し、いや、彼女らが言いそうな言葉なら。
〝血祭りにあげた〟ということか。
巧みさに、つい関心を示す。
「!!な、何だ?!」
その爆散入れ替わりに、巨大で物々しい音が響き。
何事と探すなら、入江の向こうから何か、巨大な物が迫っていて。
何だろうと、目を凝らし見れば。
「!」
一言で言うなら、空母だった。
まさか、攻めてきたのかとも思ってきたが。
……その甲板、艦首の方に見える人影見て杞憂に思える。
堂々と腕を組み、長い髪をたなびかせながら。
……暗がりで見えやしないが、大漁だと言わんばかりに。
不敵に笑みを浮かべているだろう。
それは、ヴァル。
「……。」
目にして、何だからしく、呆れもする。
それにしても、と。驚くこともある。
たった一人……?で動かしているとは、なかなかだなとも思えて。
ああ、トールがいないけど、もしかして、操艦とかトールがしているのか?
疑問は解けないでいる。
「っしゃぁああああああ!!大漁大漁!!おらぁ!!マスター!!しこたま食料抱えてヴァルキリー様が帰って来たぜぇぇ!!!感謝しろよぉ!」
「!……。」
傍ら、その人物は高々に戦果を言ってきて。
やっぱりだ、ヴァル。その堂々たる姿を晒していたのは、他でもない。
だと分かり、ああと、納得もするが。
疑問もある。
一体全体、どうやって制圧したのやら。
本当、自分たちをモンスター呼ばわりするだけはあるか。
まあ、想像つきそうなつかないような。
曖昧でしかない、そこは、ヴァルが堂々と話すだろう。
「ったく。」
「!」
それとは別に、店の方からも声があり。
見れば、今更と気付いたが、ボロボロの酒場であって。
奥から、やや服はボロボロになりながらも。
呆れた顔をしながら、マスターが顔を出す。
「モンスターってやつぁ、どうしてこうも、な。ああされたら、俺ぁ多少もてなすしかねーか。へんっ!」
「!……。」
呆れた言葉も口にしても、やがては笑みを口元に湛えていて。
嬉しそうではあった。
「おぉ?!せ、戦闘機は?!」
「空襲がやんだ?!って、あの空母は?!あそこにいるのは?!」
「ああ!!うちら誇る、化け物戦闘兵器だ!!勝ったぜ!!」
「「うぉぉぉお!!」」
「!!」
また、マスターの呆れ言葉皮切りに、周辺からは、盛り上がりの声が響き。
見れば、伏せていた兵士たちが立ち上がり。
さらには、迫る空母の、甲板に堂々と立つヴァルに、エールさえ送る。
雄叫びまで上げるなら、この場は一気に、戦闘の終了と、歓喜に湧いた。
「……。」
終わったのだと確信するも。
しかし俺は、実感が湧かないでいる。
このボロボロになった、港町に、ただただ響く歓声に、何も言葉を発せない。
立ち上がり、ヴァルを称える声が高まる中。
俺は、呆然と見つめる。
これが、モンスターであるヴァルたちの日常でもあるか。
実感が湧かないまま、その熱を俺は、見届けた。
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