23 コネクト
入れ替わりに。
「!!」
轟音が響き渡り、頭上に何かが迫ってきた。
下から見る形だが、戦闘機であると分かる。それも、前の世界と同じ形であって。
しかし、細部は異なる、そんな物、多数。
「敵襲ーー!!!!」
「!!」
また、周辺から怒号が飛ぶなら、最初見た時とは違い、慌ただしく、騒がしく。
町……まあ、基地だろうけど、それこそ、活気を取り戻したかのように。
港付近の、閑散とした建物から次々と人影が現れて。
その誰もが皆、ライフル銃構え。また、重苦しい音響くなら。
シャッターの降りた、活のない建物はその口を開き。
多くの戦闘車両を吐き出していく。
そうつまり、ここが基地であることを裏付ける。
それぞれ、構えるなら、既に臨戦態勢は整ったと。
なお、まだ撃たず、それは、誰かの指示を待つようで。
「ってー!!!」
「?!」
掛かるや、一斉に砲撃が始まる。
花火のような、炸裂音が町中に響いて。
夕暮れ時の今を、昼かと思わせるほど明るく。騒がしく。
なお俺は、情けないことに。
いきなり始まる怒号に、思わず耳を塞いで、何もできなくなっていた。
ミサイルだって、発射されて。
しかし敵の戦闘機は、慣れているか。
見事翻して、攻撃をかいくぐっていく。
「!」
その時だ。
戦闘機の胴体が開くなら。
巨大な涙滴状の物が顔を出し、かつ、戦闘機は見せ付ける。
「……あれって。……いや~な予感。」
それは何だ?一瞬思うものの、次には嫌な予感がしてならない。
単に、格好付けるために見せるわけがない。
搭載するわけがない、そんな無駄、考えられない。
ならあれは?
嫌な予感が示す通り、兵器だ。
「あ?!まじぃ!!!フェンリル!伏せろ!」
「!!」
と、近くにいたエイルが叫ぶ。
従い、俺は地面に伏せた。
伏せたなら、妙な音、そうだね、花火が上がるような音を立てて、何かが落ちて。
《フォトンシールド。》
「?!」
傍ら、俺の背中のバックパックにある盾が、呟いて。
光の膜が、俺を包むように生じた。
……などと、呑気に感じることはなく、間髪入れず、衝撃が伝わって。
つい目を瞑ってしまう。
「……?」
やがて、音が遠退いて、頭を上げて見渡せば。
「!」
先ほどとは打って変わって、破壊の光景を見る。
あの、静かな佇まいだった建物のいくつかが、吹っ飛んでいて。
また、海岸線に沿って、均等に並べられていた先頭車両、兵器の数々もまた。
無残な姿となって、沈黙。
挙句は、多数の呻き声だってある。
それは、戦場の光景。
「おい!おーい!!フェンリル!無事?!」
「!」
その光景に、元気そうな声が響くなら、エイルであり。
煙たち込む中、影であっても手を振ってきていた。
「……無事だ。……そっちは?」
「エイル様は平気さ。他のは、ま、ぶっ飛んだ衝撃で、軽く意識ふっ飛んだぐらいってこった。なぁに、死んじゃいねぇぜ。」
「……。」
俺は、答えて。
エイルもまた、無事だとして。ただし、他のは無事ではなさそう。
沈痛な感じもしたが、何よりもとして、俺が次に感じたのは、どうするのかと。
「……エイル、……どうする?ミサイルとか、もう使えないんじゃ、どうしようもない気がするが。」
「……ああ、まあ、向こうの方で、ヴァカリキーたちが頑張ってくれっだろうから、どうとでもなるさ。どうせあの、ハエどもは、しこたま弾使ったら、腹を空かして、戻るだろうけど、そんときゃ、ヴァカリキーの餌食になっし。そんなことよりも、だ。」
「!」
どうするか、聞くなら。
あまり、はっきりとしないが。
近場の兵器類がボロボロなら、どうしようもないと。
だが、戦闘機たちは、攻撃を終えたら、補給に戻らねばならず。
なお、その先には、よりにもよって、ヴァルたちがいると。
最悪、ヴァルと鉢合わせて、処理してもらうという算段。
ただし、そうであっても懸念はあるようで。
「あれで攻撃が終わりなら、だけどな。まだ来ると思うぜ?何せエイル様たちを、心の底から憎んでいるだろうからさ?んときゃ、エイル様たちの番だな。」
「!……か。」
あれで終わりではない。
詳しくはないが、第二波、第三波もあるといった具合で。
それには納得し。では、どうすると?
「まあ、エイル様に任しとけ。おめーはまだ、難しいだろうから。」
「!」
そこは、エイルが何とかすると。煙の中、胸を張って立ち、堂々として。
よく見えないが、笑みを浮かべているかも。
そうしたなら、エイルは手をかざして。
すると、大きな駆動音が響くなら、港の方で何かが蠢きだし。
それは、俺たちが乗っていた艦船であった。
「!」
動き出したならと、その甲板にあった、数々の蓋が開き。
ミサイルやら、また、対空機関砲も剥き出しとなる。
花火のように、ミサイルが飛び出し、戦闘機たちを追い回していく。
加えて、ミサイルとは違う、小さな何かが飛翔していく。
戦闘機……?と思ってしまったが、かなり小さい。矢じり状にも見える。
おまけにそれは、飛翔するなら、縦横無尽に飛び交い。
およそ、人間が操作するような挙動ではないと思わせた。
「……?」
何だろう、あれ。見たことない。
疑問に、こんな状況にもかかわらず、首を傾げてしまう。
「あぁん?おめー呑気なもんだな~。」
「!」
なお、見られていて。エイルから叱るように声を掛けられる。
「わ、悪い。つい、見たことがないから。」
見入ってしまったと、謝りながら。
「な~んだ。おめーの世界にゃ、ねーのか、こういうの。」
「……なかった、かも。」
呆れられるものの、見たことがないのかと促されるなら。俺は、頷くしかない。
「ありゃ、〝ウィングビット〟っつー、兵器だ。」
「!……ああ、うん。そういう名称か。」
「で、使い手が上手く使えぁ、オールレンジで、多方向から攻撃ができるっつー代物んよぉー!」
「……はぁ、なるほど。」
それならと、エイルが自慢げに言うことは。
〝ウィングビット〟なる物らしく。
何でも、多方向から攻撃できる兵器らしい。
とりあえず、それだけの物らしい。なお、頷きはしたが、俺ははっきりとはせず。
どれほどの物か、よく分からないがために、曖昧だ。
……そこについては、見て覚えろとばかりに、エイルは言葉を紡がない。
「……っと、おめーも、ちっとはらしく、攻撃しな!海で見せた、あのクールな狙撃、また見しちくり!」
「?!えぇ?!」
……代わりに、俺に要求はあって。
そも、迎撃に出ているのだから、それらしくしろと。
おまけに、海上で見せた、とんでもスナイプを見せろとまで。
最後のそれには、ぎょっとしてしまい、焦った。
あの狙撃は、偶然だ、偶然。
それに、戦闘機になんて、難しすぎるだろうて。
俺は、ライフル銃を握ったのが、今日この日である以上、自信なんてない。
物凄く高速で動く対象に、当てられる自信は、まして。
「……。」
言われても、素直に頷けず。
助け求めて、見渡すが、煙の向こうにあるのは、物言わぬ残骸しかなく。
人だって、とても頼りにできない。
「……ぬぅ。」
致し方なく俺は、手にしてあるライフル銃を構えた。
「……。」
狙撃しようにも、専用のスコープもない。そんなので行うのは、酷だ。
そうであっても、銃星を覗くように狙っていて。
《補正を行います。また、私とリンクいたします。》
「……ああ。……何だって?」
いや、助けはありそうだ。
背中にある盾が言ってくれて。
最初、反射的にありがたく返事をしたが、言葉反芻すると、疑問が生じて。
狙いを澄ましていたが、視線を外して首を傾げた。
「……どういうこと?何が起こる?」
つい、聞くと。
《飛躍的に、能力の向上が認められます。また、マスターの体内にあるスフィアとリンクすることによって、リミッターを解除、スフィアによる絶対な能力を発揮できます。いかがでしょう?》
「……それ以外に、選択肢があるなら、他を聞きたいけど?」
説明はしてくれるが。
しっくりこない。
俺は、やはり、首を傾げて聞き返すことに。
他にあるのか、ないのか。
《全体的にスフィアが足りませんので、広域をカバーできる手法はできません。我々を強化するには、十分ですが。》
「……。」
どうも、なさそうだ。
致し方ないか。それが何であれ、今を打開できるのがそれしかないなら。
「分かった。」
思考したら、同意した。
「……で、どうすればいい?」
《簡単です。私に命令ください。〝コネクト〟と。》
「!……分かった。」
なら、この次はどうすると。
盾が言うことには、命令をしてくれと。
なお、言うなれば、音声認識式の、コマンドと言ったところで。
まあ、それなら簡単と俺は理解に頷くなら。
「……〝コネクト〟。」
言われたコマンドを呟いた。
「……!」
《〝コマンド〟認識。スフィアのリミッターを解除。出力解放。》
盾はコマンドを実行。
その瞬間、自身にかるい電撃が走る感覚を得た。どころか、身体が発光してきて。
途端、俺の動きはより機敏になり。
難しいと思われる、高速の戦闘機の動きさえ、捉えられる。
スコープもなしに、狙いは定まり。
引き金を引いた。
一瞬。その一瞬。
瞬きする間もないか、その際に、光弾が射出されて。
たったの一撃で、空を素早く動く戦闘機を貫いた。
光弾が貫いてから遅れて、爆炎を上げ、その戦闘機は散る。
「!……。」
仕留めたのだ、たったの一撃で。
実感が湧かないが、確かにこの手で……。
知るなら、高ぶりにか、緊張にか分からないけれど、妙に身震いしてしまった。
「へぇ!おめーやるな!……ああ、〝使った〟のか。」
「!!あ、ああ。」
エイルは見ていて、感嘆の声を上げるが。
続けざまに、知っているような素振りもまた付けてくる。
最初頷きはしたが。
「……気付いていたのか?」
「……エイル様を何だと思ってんだ。今日産声上げたばかりのフェンリルにゃ~分からんだろうがな、知ってんぜ?」
「!……。」
聞くと。
やっぱり知っていると。
なら聞きたく、つい耳を傾けてしまう。
「……へへへ!教えてやっぜ!そいつぁ、〝コネクト〟つって、エイル様たちの身体の中にある、スフィアの出力を最大限に引き出すシステムさね!そいつを使えば、エイル様たちは文字通り、〟化け物〝になる、つーこった!すっげーだろ?」
「!……あ、はぁ。」
俺が耳を傾けたと感じてか、エイルが丁寧に教えてくれることには。
体内のスフィアの出力を跳ね上げて、能力を上げるらしい。
その状態の俺たちは、つまり文字通りのモンスターとなる。
教えてくれたのはありがたいが、俺としてはやっぱり実感がない。
曖昧にしか、返答できないでいる。
「ま、んな調子で、ハエ叩きよろしく!」
「?!え、あ、はぁ……。……。」
説明はここまでとして、後はまた、同じように戦闘機を叩けと言われて。
背中を押されたようなものだが、言われて俺は、やっぱり曖昧なまま。
何とも言えず、中途半端な返答しかできないでいた。
そんな、背中を押されるとなると。
やるしかないや……。
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