22 大物狙いを
「ほれ!」
「?!えぇ?!」
一しきり漁って、手をそこから出したなら。
そこには。
およそ、その大きさのバックパックには入らないであろうという。
ライフル銃があって。
それを突き出してきた。
「……。」
手渡されて、受け取るなら。
重さを感じるなら、やはり、あのライフル銃と同じ物であるか。
「……ありがとう。」
顔を上げて、エイルに言ってやる。
だが、やや疑問の残る感じであり、すっきりとするようなものじゃない。
「へん!エイル様にかかりゃ、こんなもんだい!」
「……。」
そうであってもよく、エイルは自慢げ。
俺は不思議ということに、腑に落ちないでいて。
「……何でも出てくるね。」
つい、聞いてしまう。
まるで、不思議なバックパックだ。中身はどうなっているのやら。
あれか?
多次元のポケット的な?
「おうよ!何でも入る、不思議なバックパックてな。あ、これは秘密中の秘密だから、原理は教えねー。」
「……そ、そう。」
エイルは答えてくれて。
なお、企業秘密的なものらしく、詳しくは教えてくれないようだが。
そういうことにしておく。
「……まるで、未来から来たネコ型ロボット。」
感想……ではあるが、そう、自分が観たことのあるアニメで例えることにした。
ロボット……ではないが、猫……というのは共通しているかも。
「?!何だそりゃ。エイル様、ロボットじゃねーぞ。」
「!!……聞かなかったことにして。単なる独り言だから。」
「……じゃ、そうする。」
なお、聞かれてはいる。
やはり、猫の耳をしているだけはあって、はっきりと聞こえているか。
これじゃ、うかうか独り言も言えやしない。
聞かなかったことにしてくれたようで。
「おぅ!!フェンリル!景気付けに面白れーこと言うじゃねーか!」
「?!」
他方でも、耳を立てているのはいて。
先頭に立とうとするヴァルであり。
耳にしては、ニヤリと笑みを浮かべていた。
「んでよ!!そのネコ型ロボット、つえーのか?」
「はっ?!」
挙句は、喧嘩でもしたいか。
腕がなる前に、口がなりそうだか、ヴァルは調子よく言ってきた。
アニメなんぞの対象が、強いの何の。
分かりやしない俺は、どう言おうとぎょっとしてしまう。
「……。」
言葉を選んで。
「……あくまで、漫画やアニメの話だからだけど。まあ、地球……ああ、惑星だけどさ、それを破壊する爆弾やら持っていたりとか。」
慎重に告げた。
「へぇ!!」
耳にしてヴァルは楽し気に溜息をつく。
「是非とも手合わせしてもらいたいね!!このあたしと!!」
「?!」
続けて。それも、楽しみにするようだ。
その表情には、もし、本当に存在していたら、手持ちの得物で斬り裂きかねない。
そんな気がしてきた。
「……言っとくが、漫画やアニメ、空想だぞ。実在しないからな。」
「……ちっ!面白くねぇ。」
「……。」
再度忠告みたく繰り返して。
空想のようだと知るや、舌打ち。面白くなさそうな顔となる。
本気で手合わせするつもりだったか。思うに、戦争狂だな。
「……全く……。空想に、漫画にと……。お前のいた世界は、どんだけ面白くねぇんだか。」
「……何とも言えません。」
舌打ち後は、呆れた物言いまで。
これには、何とも言えずにいる。
「まあ、んなことよりも……。」
「!」
さて、そんなやり取りなんて。
これぐらいにしてとヴァルは、またニヤリとした笑みに戻るなら。
「人が呑気に飲んでいたというのに、邪魔しに来た命知らずを、だ。」
「!……。」
元々の目的として、邪魔しに来た敵を相手にすると意気込んで。
その腰にあるレーセに手を掛けた。
途端、俺は緊張に唾を飲み込んでしまう。
「行くぜっ!お前ら!!」
「……ああ、付き合うぜ。どーせ、それしかねーからな。」
「……みっ!」
「!……。」
いよいよとして、ヴァルは振り向いて、俺やエイル、トールに言ってきて。
言われて、エイルとトールは、そもそもそのつもりと頷いて。
俺は、やはりそうなるかと、相変わらず、緊張で頷いた。
そうして、俺たちは動くが。
「……!」
このまま、荒々しく、勢いよく扉を開けるようなものだったが。
例えば、蹴り開けるようなことを。なお、ヴァルはせず、そっと開けて、外へ。
先の意気込みらしくないやと、つい思って首を傾げた。
「……なあ、フェンリル、締まんねーな。男って奴は、どいつもこいつもお前みたいな奴らなのか?」
「!!気付いて……?!……あ、いや、その。」
気付かれていて、ヴァルはまた、俺に注目してくるなら。
その表情は、こういう時に、また何でそんな間抜けなんだと訴えんばかりで。
そんな雰囲気を感じて、言葉たどたどしくなってしまうが。
「……ええと。」
何とか、言葉紡いで。
「何だか、ヴァルらしくないなと。こう、荒くれていたら、ドアを蹴り開けたりして、勢いよく飛び出しそうな気がして、さ。」
と。
「あ?!」
「?!」
耳にしてヴァルは、声を荒げて。
何事と、ついぎょっとしてしまった。
「……。」
「……?」
そこから、急に呆れにか、沈黙が走り。何でだろうかと、また首を傾げて。
「……なあ、フェンリル。そのな、あたしのこと、どう思っているか知らんがよ?失礼とかそんなのはいいとしても、な。そんなことしたらさ、どうなるか分かるだろ?」
「!……あ、ああ。……ぶっ壊してしまう、と?」
「そう。」
沈黙して、間を空けたようで。
ヴァルは言ってくることには、そうしたらどうなるかということであり。
言われて、促されるようだが、答えとして、壊してしまうと。
その通りと、ヴァル頷いて。
「そうすっと、あたしゃ、ただでさえ、ツケがあるというのに、ドアぶっ壊したら、修理費まで追加される。余計に借金が増えちまって、どーにもできなくなっぜ?借金で首が回らなくなっちまう。」
「……か。」
続けるなら、ただでさえ、借金があるような状況なのに、余計に増えると。
加えて、首に手を当て、痛がるような素振りを見せて、回せないと訴えても。
言われると、確かにと思えてならず、頷いた。
「……ま、踏み倒すけど。」
「?!……。」
が、だからといって、地道に払うようなことを選択するような性格でもない。
ヴァルは締め括りに、とんでもないことを言ってのけて。
察して、何も言えなくなる。
「……じゃなくて、ほれ、フェンリル。気、締めな!ミスったら、下手すりゃそのまま海水浴することになっからな!」
「?!あ、ああ。」
なお、そんなことよりもとして、気を引き締め直せと言ってきて。
先ほどの、締まらない様子を、改めろとまで。
言われるがまま、俺は気を引き締め直して。
頬を叩き、さっと真っ直ぐ前を見据える。
扉をくぐった先に、敵がいるとして、気を引き締めたが。
「……?」
視線の先にまず見えたのは、夕焼け空で。
染まる海であって、敵がすぐそこにいるようには見えないが。
「ぼさっとすんなよ、フェンリル。相手は海の所、島陰に隠れながら来てんのさ。基地のレーダーぐらいしか、分かんねーだろうがな。」
「!……。」
それは欺瞞であるとヴァルに注意される。
そも、視覚で捉えられないようにしてあるとして。
言われたならと俺は、頷いて、よく見据えるものの。
やっぱり、視覚では捉えられず、首を傾げた。
「……はぁ。ま、仕方ねーか。」
「……悪い。」
呆れられる。
そうされると、悪く感じて俺は、謝りはした。
「……?!」
代わりとして、聴覚では何かを捉えたよう。
耳に鋭い音が響いてきた。そう、掃除機の轟音のような音。
何事と感じるや、辺りを見渡し、それこそ、空をも。
「……と思ったが、どうやら、あたしが悪かったようだな。お前にも聞こえていたということか。」
「!……そ、そう?」
ヴァルはその時に、訂正するようで。
俺に言うなら、呆れ一転、ニヤリと笑みを浮かべた。
何でだろうかと思って、やはり分からずにいて、首を傾げる。
「戦闘機だよ。おまけだがな。」
「!」
では、答えはというと、戦闘機だと。
なるほどと思い、頷いた。
だが、おまけということは気になるが。
「……でも、〝おまけ〟って?」
聞くと。
「相手は空母打撃群ってこった。それこそ、戦力的には、この基地はおろか、後ろの半島までぶっ飛ばして、更地にしてしまうほどのな。」
「?!えぇ~……。」
要は、空母打撃群だとして。
なお、戦力的には、ここの破壊だけなら、過剰なレベルだともして。
「……何でまた……。」
そもそもの話、過剰過ぎる理由を聞きたくもあり、口にしてしまう。
圧倒的に向こうが有利なら、わざわざそうする程でもないんじゃ?
「はんっ!決まってんだろ!」
「!」
して、その答えとは。
「〝あたしら〟さ。」
「!!」
ヴァルが言ったことには、自分たちこそ、その答えであると。
「っと、次にゃ、お前、とぼけた顔をしそうだからな、それこそ予め言っといてやるがな。」
「!」
それならまた何でと、言いたくもなったが、そこはヴァルが遮るようにして。
予めと、釘を刺すよう。
「あたしらはな、空母打撃群じゃなきゃ、やれねーレベルってこった!簡単だが、そう覚えておきな!」
「!……か。」
それ程の戦闘力だからこそ、突き付けられたのだと。
頷くしかない。
それは、自分たちは、モンスターであるからこそと。故に、相手にするにはそれほどの戦闘力が必要として。
「……ま、それでも足りねーけどな!ひひひっ!自分たちが大物連れてきたことを、後悔させてやっぜ!」
「?!」
……という、凄まじさを説明したにもかかわらず、ヴァルには不足らしく。
不敵に笑って見せた。
付け加えには、後悔することになるとまで。
不敵に笑うものだから、またまた、またまた何でとまで思う始末。
「空母って、どんなものか分かるだろ?」
「!……ああ。」
察されていて、ヴァルはこちらを見ては、ニヤニヤしながらまず聞いてくる。
当然と頷いて。
もちろん、知っている。
巨大なだだっ広い最上甲板を持ち、航空機を発艦させる、母艦のことで。
前の世界でも、度々目にすることはあって知っている。
それだけ巨大なら、人数も多く、かつ、遠洋航海に耐えられるだけの物資もある。
「!!!まさか?!」
聞かれたそれが、促すならピンと来て俺は、目を丸くする。
そう、〝物資〟。
ヴァルがニヤニヤするのは、それが狙いなのだ!
巨大な艦船であるのだから、それだけ多くの物資がある。なら、奪うという好機。
「そのとーり!へへへっ!フェンリル!!ちっとは分かってくるようになってきたようだな、おい!」
「!……。」
正解らしく、ヴァルはニヤニヤ笑い続けて。
その通りとして。
「んじゃ、あたしとトールが出る。エイルとお前は、残ってさ、五月蠅く飛んでくる〝ハエ〟でも叩いておけ!」
「!……。」
俺が分かったならと、ヴァルは肩を叩いて、指示を出す。
俺は……。従うしかなく、頷く。
「てなこった!おい、トール、行くぜ!」
「……みっ!」
そうして、俺が頷くのを見た後、トールを見ては言う。
トールは、相変わらず、冷静な様子で、静かに鳴いては頷いた。
指示が行き渡ったというところでと。
ヴァルとトールはレーセを手に、光の刃を迸らせて。
その時を皮切りに、準備運動もなしに。
ヴァルとトールは一様に、海目掛けて駆け出していく。
「ひゃっはぁぁぁぁぁ!!!大物狙いだぜぇぇ!!!」
歓声上げて。
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