14 宴の邪魔をするもの

 「ぐぇぇ……。いでででで。肋骨いったぞ、これ……。」

 「!……。」

 エイルのアイデアを耳にしていたなら。

 傍ら、腹部にダメージを受けて。

 屈んでいたヴァルが起き上がっては、痛そうに腹部をさすっている。 

 肋骨までいったとか言っていたが、その割には、凄まじく痛そうにしていない。 

 やはり、自ら化け物だのと呼ぶにあたり、頑丈なのかもしれない。

 「とぉぉぉぉるぅぅぅぅぅ!!てめぇ!覚えとけよぉぉ!!」

 「?!えぇ~?!」

 起き上がっては、やはり化け物よろしく、吠えて。

 どこにそんな元気があるか、不思議でならなくなるが。

 モンスターだのという単語に、全て集約されてしまう。 

 さらにヴァルは、腰にあるレーセに手を掛けていて。

 今にも斬りかからんとして。 

 「……さすが、ヴァカリキー。最強の戦闘兵器だぜ。」 

 「あ?!んだそりゃ。褒めても何も出ねーぞ?ああ、おチビちゃんの好きなミルクも出ねーな!うぁはははは!!」

 「!……。」

 その元気さに感服して。

 エイルは褒めを述べるが。

 ヴァルは笑いこそすれど、目が笑っていない。

 なおも、斬りかからんとする状態のままトールを見据えていた。

 文句もあるが、やはり煽るような言葉ばかり。

 どうなのか、よく分からず、俺はただ見つめるだけで。

 「そんな喧嘩っ早いヴァカリキーに朗報!今しがた、嫌な影をレーダーが捉えたらしいんで。その対処よろしく!」

 「ちっ!!んだそりゃ!雑魚ばっかりか!」

 それとは別として。

 そのヴァルの、元気な様子に、感服してか、別の話をすることには。

 ……何か、トラブルを予期させることらしく。

 なお、ヴァルは舌打ちついで、あんまり面白くなさそうではある。 

 何が起こるか、分からず俺は、若干ポカンとしているが。 

 「まぁ!!!憂さ晴らしにゃ丁度いい!!どうせマキナとかに乗っていないと、何もできないビビりばっかだかんな!!」

 「!」 

 ヴァルはしかし、一転して、歯を剥き出しにして笑む。

 何事と俺は見ていたら。

 「おぅ!トール、フェンリル!行くぜ。あたしらの素敵な仕事さね!」

 「!……みっ!」

 「!!……って、仕事って……。」 

 ヴァルは進めて、何でも仕事だとか。聞くなら、トールは理解していて。

 頷くなら、冷静な表情になり、元気よく返事をする。

 俺はよく分からないでいた。

 「あぁ、新入りのフェンリル君にゃ、見物ってことで。あたしらのやること、見てりゃいいさね。」

 「!……ああ、分かった。」

 よく分からないでいるならと、ヴァルは、説明するよりも、見てなとして。

 それならとして、俺は頷いた。

 「おっし!出るぜ!ああ、トール。レーセ忘れんなよ!」

 「……みっ!」

 その前にと、ヴァルがトールに言うことには、レーセを持っておけと。

 もちろんだと、トールは返事に頷き、確認に、自らの腰に手をやるなら。

 ヴァルと同じような、筒状の、手持ちの懐中電灯みたいな物を取り出して。

 見せた。

 「準備バッチしってか。へへへ!」

 その意気に、ヴァルは頷いた。

 「!」 

 その流れで、俺を見てきたら。

 俺は、……どうしよう。

 「……?」

 首を傾げてしまう。

 「……あ、そう言えば、フェンリルは何もねーな。何かある?」

 「!」

 気付くやヴァルは、そう言えばとして、上を見上げて考えて。

 何かアイデアを求めて、エイルを見た。

 エイルは、気付きに耳を跳ねさせて。

 「じゃあ、これだな。」

 言いつつ、すぐに何かを取り出すために、身を屈めるなら、ベッドの横に座り。

 そこを触るなら、タンスのような引き出しであり、引き出したなら、まさぐって。

 「!」

 「これ。」 

 見付けたなら、取り出して、立ち上がり、こちらに見せるなら。

 ライフル銃……のようである。

 なお、ライフル銃だが。

 いわゆる、狙撃銃のような、銃身の長いタイプではなく。

 短く、突撃する際に、取り回しがしやすいタイプの模様。

 思い出すなら、アサルトライフルの類か。

 そのライフル銃を、次にエイルは突き出してくる。 

 「!……あ、ああ。」 

 「おめー、絶対他の武器とか使えなさそうだしな。これなら、安全装置に指を掛けて、引き金引くだけでばら撒けるから。格好ぐらいは、つくんじゃね?」

 「!……あ、……まあ、ありがとう。……?」

 手に取る前にと。

 エイルが言うことは、この手のライフル銃なら。

 適当に銃弾をばら撒けるとして、恰好だけでも、何とかなるとのよう。

 言われて、ありがたいのか、どうか複雑であり、曖昧な感じとなってしまった。

 受け取るなら。

 「!」

 重く、それも、武器という、殺意を抱かせるには十分な理を俺に伝えてくる。

 「ほいじゃ、3人とも、行ってらっしゃい!エイル様は船の操作に専念するぜ!」

 「!!……あ、ええと……。」

 終わったならと、エイルは手を振って見送ってきて。

 俺は、反応が遅れ、どうしようかとか、どうしてとか、感じて。

 「!」 

 そんな俺の肩を、後ろから誰かが叩き。

 振り返れば、ヴァル。その疑問に、やめておけと首を横に振っている。

 「……何で?」

 「……あいつは、頭脳労働担当だかんな。あたしらみたいな、スーパー肉体労働担当じゃねぇし、あと、あいつがいないと、操艦できない。」

 「!……そう……か。」 

 口をついて、つい疑問が出て。

 答えるにヴァルは、エイルはいわゆる、頭脳労働担当だと。 

 それならばと分かるや、小さく頷く。

 「つーことだぜ!」

 「!……そうだな。」

 ヴァルが説明したとして、エイルは声を上げて答える。

 振り返り、エイルにも頷きを見せた。

 「んじゃ、行こうぜ!トラブルが待ってやがる。」  

 「!ああ。」 

 それならと、ヴァルは言って、指を外へと向けて合図した。

 俺は頷いて応じる。 

 それぞれ、武器を携えて。

 部屋を出ては、通路を駆けて。やがては、階段を登り。

 「!」

 と、天井にハッチがあり、それをヴァルは開くなら、外界の光を取り入れてきた。

 ヴァルとトールと共に、抜け出たなら。

 潮風が吹き抜ける、……だだっ広い甲板に出る。それこそ、構造物が一切ない。

 そのために、午後の海原を望めるのだが。

 見渡し回ってふと思うなら、〝空母〟のようだとも。

 「……?」

 しかし冷静に、よく見れば、やっぱり違う。

 空母……にしては、あまりにも小さすぎる気がする。

 甲板の大きさなんて、せいぜい、100m程度か。 

 何だろう、この艦船と思い、首を傾げた。

 「あ?おぃおぃ!どった?」

 「!」

 ぼんやり見渡しているものだから、ヴァルは注意するように言ってきて。

 言われて、はっとし、ヴァルを見る。

 見たら、ヴァルも同じように見渡しているようで。敵を探している。

 同じように、側にいるトールもまた。

 そんな中で、俺が不思議そうにするものだから、つい声を掛けてきたのか。 

 「……いや、何だか、空母のような、そうでないような……そんな気がしたんだ。」

 「はぁ。お前結構物好きだな。あたしゃ、大して興味ないけど。……まあ、これは、空母じゃねーな。第一、これ、駆逐艦クラスだし。」

 「?!」

 答えると。

 物好きだとは言われたが。

 興味深くジロジロ見られつつも、そうであっても説明してくれる。

 どうも、この船、駆逐艦程度の大きさらしく。

 「で、だから、艦載機なんて、ない。けれど、真っ平。不思議だろう?何でだろうか、思っちまうほどに。」

 「!……ああ。」 

 続けるなら、ニヤニヤと笑いながら、疑問を呈するように言い残しに。

 俺は、不思議に思いつつも、頷く。

 「まあ、それは後で説明するとして。他にもあってな。ほれ。」

 「!」

 その真っ平な甲板の話は、後回しに。

 まずはと、ヴァルが示すのは、平たい甲板の端々であり。 

 見れば、……小さいながら、ハッチのように開閉する何かがあるみたい。

 見たことある気がして。

 言うなら、護衛艦とかにある、ミサイルを発射する機構だ。

 垂直にミサイルを発射して、レーダーとかで誘導する方式に使用されていたっけ?

 ただ大きさは、小さいのもあるが、中には一際大きいのもある。

 あれが、何かは、よく分からないでいるが、小さいのは、ミサイルかな。

 「あっこからミサイルが出て、でかいのからは、ドローンが出るって感じだな。」

 「!……はぁ。」 

 ヴァルが説明するなら、小さいのはミサイル発射用。

 で、大きいのはドローンなる物が射出されると。

 その説明から、まあ、なるほどと曖昧ながら、理解をしたと俺は示す。

 「……みっ!」

 「!」

 ヴァルと二人していたなら、こちらもとか、トールが声を掛けてきて。

 一緒に話をしたいか、つい思ったが。

 「……?」

 ……そうではないらしく、どこかを指さしている。

 方向を辿れば。

 「……?何だろう、この音。」 

 やがて、音が響き渡ってきて。

 ……よくよく聞けば、ヘリコプターの羽音に聞こえなくもない。

 「……って、お出でなすった!!……てやつだな。」

 「!!」

 その正体に、真っ先に勘付いたか、ヴァルは声を上げて。

 そのために、レーセを……。

 「!」

 何と2本用意して。両手に携えては、見据えて。

 ニヤリと、歯を剥き出しにして、不敵な笑みを浮かべていた。

 1本でも強そうなのに、今度は2本持つ。

 つまりは、二刀流だと?!

 その不敵さも相まって、つい目を丸くしてしまった。 

 その不敵な笑みの果てに、視線の先に、やがてはその相手が現れてきた。

 「!!!」

 その数に、驚愕する。

 ヘリは合っている。

 だが、数がおかしい。

 明らかに、過剰な数で、戦闘ヘリが現れたのだ。

 「?!」

 おまけに、水上スキーのような音を立てる何か、護衛にか。

 ……水上スキーのように海面を走る、巨大な獣のような機械の何かも伴っている。

 その何かには……、よく分からずにいる。

 「おいおい!!お前驚いてばかりじゃいられねーぞ?」

 「あ、いや、その、ヘリの数もそうだが、あの機械の獣は何だ?!」

 「ああ、ありゃ共和連邦のマキナだ。野獣っぽいだろ?」

 「!……あ、ああ。」 

 ヴァルは、俺の驚愕に気付くなら、ちらりと見ては。

 さも楽しそうに笑いながらも説明してくれて。

 あの巨大な獣のような機械とは、マキナらしく。

 聞けば、全くSFだとばかりに思い、頷きもする。

 「……いや待てよ。」

 もちろん、それだけで納得はしない。

 「……数、おかしくないか?俺たちぐらいを相手するなら、あんな、10数機以上の数はいらないだろう?」

 待った掛けの後、すぐに言うのは、数が多すぎるのでは?と。

 「……あ?!……なあ、お前はまだ自覚していないだろうがよぉ。」

 「!」 

 ヴァルは、答える前に、俺を見るなら、げんなりとした様子に。

 もちろん、数の多さではなく。

 どちらかというと、俺の何も知らない様子に呆れて、であるが。

 「……あたしら、生物兵器なんだぜ?火の中水の中、溶岩の中……放られても死なねぇ最強最悪の兵器なんだぜ?あれだけでも、少ないぐらいさね。まぁ、さっき目が覚めたばかりの赤ちゃんフェンリル君にゃ、まだ分かんねーだろうが。」 

 「!……ぬぅぅ。」

 呆れ返りながら言うことは。

 そも、自分たちはあの程度でさえ、少ないと言わしめるほどであり。

 まあ、自覚がないのが、悪く。

 ……だからで、俺は複雑に、苦々しい表情を浮かべた。

 「まあ、何はともあれ、憂さ晴らしだ!こんぐらいないとな!」

 気を取り直して、ヴァルはまた、真っ直ぐ接近する敵を見据えて。

 ニヤリとした笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る