11 やっぱり攻撃に対して反撃するか……
ともかく、殺しにかからんとする。
《危険分子を確認。排除します。》
「!」
ある意味ピンチだが。
救世主はある。
先ほど大人しくなった盾であり。
再度起動するなら、また光を放つ板を広げて、俺の眼前に守るように浮遊する。
《フォトンシールド。》
「!……?」
続けて言うなら、俺を覆うように淡い光の膜を展開した。
何これ?そう思うのだが、よく分からず首を傾げて。
気になるなら、そっと手をその光の膜に伸ばした。
「?!」
バチンと、かなり強めな静電気が迸る音を聞き。
痛みもあって、すぐに手を引っ込めてしまう。
「……。」
感じて思うなら、まるでバリアーだ。
全く、映画みたいな光景だと、変に冷静に思う。
「……おい、それどうにかしろ。」
「!あ、わ、悪い。」
一人で盾と何をしているのか、気になるし。
問題があるか、灰色の女性は言ってくる。
「……?!」
そこで気付いたが、灰色の女性が突きつけた光の剣。
レーセの刃が、光の膜に阻まれ、歪曲している様子である。
……あの光の刃が、どれほどの威力を持つか知らないが。
もし、映画みたいな光の刃と同等なら。
これを湾曲するこの光の膜は、より強力だということになる。
感心していると。
「……早くしやがれ。そうやられると、あたしも苛つく。」
「!……わ、悪い。」
急かされた。
再度悪かったと謝っては、また盾に手を伸ばした。
《管理者権限により、停止いたします。》
「!……。」
盾は、静かに言って、また停止した。
灰色の女性も、光の刃を収めて、そのレーセとやらを下に下ろした。
「……。」
「……?」
だが、視線はずっと俺に向けられたままで。
何か言いたいか。
何か、確認したいか。
まだ、心残りのようでもある。
「……?!」
だからか、またレーセの柄をこちらに向けたなら。
起動して、光の刃を迸らせ、俺を突くように向ける。
《危険分子を確認。排除します。》
「?!えぇ?!」
それを危険と捉えて、盾がまた起動して、浮遊。
「……なるほど。ご主人様が危険なら、動くってことか。」
「!」
どうやら、試したらしい。
その盾が何であるか、どう動くか。
その確認に、また間髪入れずに動かしたようで。
「……へぇ。全くおもしれー。後でどれほど守れるか、お前を切り刻んで試してやりたくもなったぜ!」
様子に理解し、感心の息も漏らす。
その頃には、楽しみが増えたとばかりに、突き付けた刃を下ろしていて。
確認も、終わったといった具合だ。
《排除いたします。警告を無視したとみなし、攻撃いたします。》
「……へっ?」
「……あ?!」
……灰色の女性はまだ、この盾を理解しきっていなかったようだ。
ついでに、俺も。盾は、女性が刃を下ろしたにもかかわらず、追撃を行うようで。
嫌な予感がしてならない。
《シールドバッシュ。》
追撃をするか、盾は言うなら。
煌めかせて、衝撃波と音を伴い、放つ。
「ぐげぇぇぇ?!」
灰色の女性、俺に手を出した灰色の女性は、衝撃を受けて。
変な悲鳴上げ、突き飛ばされて壁に衝突した。
その際、レーセも落ちたが、光の刃を消滅させ、カラント空しく音を立て。
灰色の女性は、軽く気を失ったかのように静かになる。
《状況終了。》
「!」
見届けて静かに言い、盾はまた、元のように静かになって、ふわりと降りる。
「……。」
ふと静かになることに、何を言おうかと困惑してしまった。
「うぐぐ……。」
先ほど飛ばされた女性は、立ち上がり。
こちらを睨み付けるように見てくるが。……手は出してこない。
それは、先ほどからの一幕にある、盾による反撃に懲りたからか。
「!」
そうであっても、身体を跳ねさせて、怯えさえ感じてしまう。
「ええと……ご、ごめん!」
「……興が冷めた……。くそぅ……。向こうで〝飲む〟わ。」
悔しささえあるが、灰色の女性は、頭掻きつつ、立ち去ろうとしていた。
咄嗟に、やられる前に謝りはするが、スルーされて。
「……くそぅ。ムカつく……。」
吐き捨てるように言いつつ、灰色の女性は、船室のような扉を開けて出て行く。
「へぇ!!やるじゃん!」
「!」
静かにみおっくるしかなく、見ていると、幼女が横から関心の声を上げてくる。
俺を覗き込むように見て、ニヤニヤとしてもいる。
視線が合うと、何だか緊張に顔を赤くして。いや、照れもあるか。
「!……。」
が、すぐに一転して、悪くも感じる。
不本意とはいえ、攻撃してしまったことに、何だか悪くも感じて。
「!……おい、どした?このエイル様が褒めてんだぞ?喜べよ!あ、お礼のことで悩んでいるのか?気にすんなよ!エイル様は、そのアイギスを調べさせてくれりゃ、いいんだかんな!」
「!……あ、いいや、ちょっと……大分違うな。」
「お?」
気付くなら、幼女は言ってきて。
ただし、ベクトルが違い。噛み合っていない。
「……。」
なら何だと顔をされると、どう言おうとかと思案して。
「……さっきのあの人に、不本意ながら、攻撃してしまったから、何だか悪いなと思ってな。……どう言おうか……。」
そう言うが。
「あ?気にすんな!あれで凹むような軟な奴じゃねーから。戦車の大砲を喰らっても、平気な顔をしてる奴なんだぜ?なぁ?」
「!……そういうものなのか?」
「そういうものだよ。」
「……そっか。」
幼女が言うには、大して気にすることでもないとして。
そも、〝この程度〟でしかないために、痛みによる恐怖とか。
攻撃されたという苛立ちとか無縁だとも。
言われるが、そういうものかと疑問を呟くものの。
幼女が重ねるなら、納得に頷くしかない。
「ま!どうせ、あいつ酒飲んでっから、忘れるし。んじゃま、エイル様たちも何か食おうかね!」
「……!」
「おめーも来るだろ?」
「!……あ、ああ。それなら……。」
ついでに、根拠ついで言うなら、何か食べようとも。
誘われもして、俺は頷く。
頷いた上で、身体に被さるシーツを解こうとしては、気付くことが。
「!」
そう言えば、下着の感覚はあるが、他裸なんだよな。
「お?今度はどした?」
「!……ああ、服はどうしようかと。裸で歩き回るのも、何だかなと。」
「!あそっか。」
聞かれるが、どうしようかとも。
幼女は、今更気付いたが。
「……みっ!」
「!」
そんな折、横を突かれて。
見れば、縞模様の女性が、気遣いにも、手元に何か用意してくれていた。
渡しても来て、受け取れば、黒地の……何だろう。
単なる服ではない。手触りも、ゴムっぽいような。
そうでないような独特な感じ。
広げれば、全身を覆うような服装。
また、雰囲気的にも、縞模様の女性や、先の灰色の女性が着ている服のよう。
つまりは、戦闘用の作業着みたいな感じだな。
「おぉ!丁度いい所に。……つっても、それしかねーからなぁ。ああ、パーティドレスなんてねーからな?」
「!……いや、まあ、そんな場所じゃないだろうし、……ねぇ。」
幼女は丁度いいと、にこやかに。
なお、ジョークだか、華やかな服装はないから、それしかないとも。
俺も、そんな緊張するような服装は好まないから、別にいいのだが。
「……。」
幼女の言葉はそれとして、改めて縞模様の女性を見ては。
「ええと、ありがとう。」
何はともあれと、服を手渡してくれたならと、お礼を言う。
「……みっ!」
縞模様の女性は、にっこりと笑みを見せてくれた。
「……。」
笑顔に安心して、ベッドから出て。
「!……。」
床に足がつくなら、さも、1日寝ただけのような感じで。
身体ははっきりと動き。そうだとしても、不思議な感じだ。
どれだけ眠りについていたか分からないが、こうもはっきりと動くと。
ただ、そこはまだ分からず、不思議と感じつつも、手渡された服に袖を通す。
「!」
一方で服の方はというと、サイズは分かっていないはずなのに。
その服は体にフィットする。
着たなら、軽くストレッチをするように動くなら。
伸縮性の高さから、柔軟に動いた。
窮屈さは感じない。
どうやら、サイズはフリーらしいか。どんな体格にも合うと。
「……。」
おまけとしては、密着状態にも関わらず、蒸れるような感じもない。
そこに特殊さを感じてならない。
「……みっ!」
「おー、似合ってる!」
「!……ありがとう。」
その様子に、称賛は浴びせられる。
幼女も、縞模様の女性もサムズアップして、にっこりと笑顔を見せていた。
俺は、複雑ながらも、お礼を言う。
服を見つつ、違和感がないならとして、改めて向き直る。
「うっし!んじゃま、ヴァカリキーの後に続いて、エイル様たちも行きまっか!」
「!」
そのタイミングで、幼女は示すことは。
さっきの灰色の女性に続くとして。
「……。」
俺は静かに頷いた。
「……みっ!」
自分も続くと、縞模様の女性が手を挙げて、小さく鳴く。
こうして、続く流れとなるなら。
俺は、盾を取り、バックパックに収納しては、背負った。
背負ったなら、幼女は先頭を行く。
俺と縞模様の女性は続く。
「!」
部屋から出たならば、目に付くのは、狭い通路。
それも、単に狭いだけじゃない。天井や壁には、パイプやら、何やら走っていて。
そこから、鼓動のような蠢きさえ伝わる。
見渡せば、所々に、水密扉もあることから、どこかの艦船の中を思わせる。
波に揺られる感覚があり、……船の中であると思った。
「?どした?ここが気になるん?」
「!」
見とれていたなら、声が掛かり。
その通りだと、頷きを返して。
「ま、多分おめーが感じている通り、ここは船の中だぜ?エイル様たち専用の、素敵な船さね。説明は、おいおいするとして、な。」
「!……そっか。」
言うことには、その通りらしい。
詳しい話は、割愛されたが。ここでは、そういうことにしておく。
「いそごーぜ!放っておくと、食料とかなくなるからな。」
「!あ、分かった。」
「……みっ?!」
「……?」
幼女は、今いる所がどうのは、ここまでにしておいて。
それよりも。
先に行った灰色の女性を放っておくと、何かよくないことがあるらしく。
聞くなら、頷くが。
前を進んでいた縞模様の女性は、ぎょっとして、変な声となる。
耳を跳ねさせ、……驚いているような。
「!!」
そこから、慌てるように駆け出したなら。
通路の先、水密扉の向こうへ駆けていった。
俺は、何事と見送ると。
「……ああ、ありゃ食い物のことだな。」
「!……食い物、食事?」
「トールの奴は、食い意地が張ってんのさ。食い物のこととなると、ああなる。」
「……そっか。」
幼女もまた、見送りつつ言ってくれる。
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