10 止めても、だが収まらない……

 まだまだ聞き足りないことはある。

 特に、俺はまだ一歩も、この世界を歩いてはいないのだから。

 その際、どうしても案内役はいる。

 いくら、口が悪くて、喧嘩早い連中であってもだ。

 情報の皆無な俺には、必要な人でしかなく。

 「……。」 

 だからこそ、止めようと思うに。

 しかし、どうするかと、一瞬躊躇いはあった。

 《充填完了。追撃に移行します。》

 「!!」

 そうであっても、盾は待ってくれない。

 躊躇さえ、惜しくあり。盾は攻撃を再開しようとして。 

 「す、ストップ!ストップ!!!」

 俺は、これで止まるかどうか分からないが、盾に手を伸ばして、触れて、命じて。

 一瞬で思い付くことがこれしかなく、やむを得ない。 

 ……成功するかなんて考えてはいない。

 失敗したら、……死んじゃうんだろうか?分からない。

 分からないが、やるだけやる。 

 《管理者権限を確認。行動を停止します。》

 「!」

 願い、通じたか?

 命令が、通じたか。盾は触れた時に、意図を理解して。

 行動を止めることを宣言するなら、荒ぶる鳥さえ想起させるような。

 広げた透明な板を、格納していった。

 発光も少なくなり。

 ゆっくりとこちらの足元に降りていって。

 発光が完全に停止したなら、急に静かになる。

 「……と、止まった……?」

 俺は、急に静かになった空間に、さっきまでのが何なのか。

 理解できない呆然としたまま、ぽつりと呟いた。 

 「……みっ!(ぱちぱち!)」

 「!」

 傍ら、一部始終を見ていた、縞模様の女性は、手を叩いていて。

 まるでそう、よくできましたと、言わんばかりの褒めを向けているよう。

 「!!……。」

 さらには、頭に手を伸ばして、撫でられた。

 撫でられたなら、どうしてなのかの表情のまま。

 かつ、経験不足もあって、複雑な顔になってしまう。

 「!」

 そんな複雑な様子も、吹っ飛ばされた2人の復活により、消える。

 もちろん、原因は俺……だろうから。

 起きられたなら、気まずさを通り越して、顔は次第に青冷めた。

 がばっと二人は起き上がるなら、一様に向いてきて。

 俺は、ごくりと、唾を飲み込んで。

 「てぇぇぇぇぇめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 「!!ひぃぃ!!食べないでください!!!」

 まずは、灰色の女性が、今にも食って掛からんと言わんばかりの勢いで。

 近付き、のしかかろうとしてきた。

 俺は、情けない声を上げてしまい、後退する。

 「?!」

 悲しいかな、未だベッドの上であり、俺は後退することができない。

 冷や汗まで、出てきてしまい。

 「おぉぉう!!!いいぜ!!!食ってやらぁ!!!三枚おろしにして、煮て、焼いて、なぁぁぁ……!!!!」

 「!!!ひぃぃぃ!!」

 食べないでなんて、冗談であっただろうに、相手は本気か、本当に食いかねない。

 先ほどまで、幼女に向けていたであろう。

 牙剥き出しの表情を、今度は俺に向けて。

 その表情、獣と形容するべきか、獣の表情であり、俺は余計に身を竦ませて。

 逃げ場のない状況には、恐怖しかなく俺は、つい目を瞑りそうになった。

 ……だが、救いはあって。

 「?!」

 「?!あぎゃぁぁぁ?!」

 灰色の女性は、横から吹っ飛ばされてしまう。

 何事と思うなら。

 ……何だか、デフォルメなパンチ……と言えばいいか?

 グローブをはめた拳が、どこからか現れて、灰色の女性の頬を殴り飛ばし。

 どんな力で殴られたか。

 肉体ごとベッドから吹っ飛ばされて、壁にまた激突する。 

 何事と、その軌跡を追えば、何と、幼女からであり。

 そう、次に復活した幼女であって。

 吹っ飛ばした後、幼女はくるりと俺を向くが、不思議とその表情に怒りはない。

 むしろ別の、面白そうな表情をして。

 「おめー!!!一体どうやった?!どうやって、それ作った?!なぁ!!」

 「?!」

 そう、はしゃぐように聞いてきた。

 そんな勢いに言われると、またまた身を退いてしまうが。もちろん、行き止まり。

 「え、ええと。……これ、何?すごいの…か?」

 「?!おめー知らねーのか?!作ったくせに?!」

 「!……ああ。残念だが。」 

 「!!……ぬぅぅぅ。」

 幼女はずいっと俺の眼前にまで迫って、興味津々に聞いてくるものの、しかし、どうしてそうなったか分からないし。

 そも、この盾が何かも知らないでいる。

 その答えには、幼女を悩ませる。

 耳にしたなら、顔を歪めて、頭に手を当ててしまう。

 「……う~ん。聞いて分かるか知らないが……。」

 「!」

 やむなく、説明をしだすとして。

 口をもごもごと、曖昧にはっきりしない様子で動かしてきた。 

 「……そいつぁ、〝アイギス〟っていう、防御兵装だぜ。」

 「!……ああ、名前については、こいつから直接聞いた。」

 「……そっか。」 

 それでも紡ぐなら。 

 まずは名前と、防御兵装だとして。

 言われて俺は、知ってはいると頷く。 

 「……まあ、言った通り、そいつぁ、防御用のマキナだ。盾だけにな。ああ、単なる盾じゃねえぞ?フォトンシールドや、他、スフィアの遠隔操作ができる優れもんさ。自律思考もできて、適宜アドバイスもできる代物なんだが……。いかんせん、いわゆる〝オリジナル〟とは違って、大抵は補助レベルでしかないし、出力も低いんだが……。」 

 「!……?また、〝オリジナル〟……。じゃあ、これは……?」

 「……。」 

 続きには、性能や特性を示すが。 

 気になることは、またまただ、〝オリジナル〟だのなんだの。

 気になった点を、復唱して言うなら、幼女は押し黙り。

 「……〝レプリカ〟、だな。」

 「!……そうか。」

 軽く悩んで紡ぐなら、同じように、相対する単語であり。

 それは、先を思い起こして、寂しさを感じてしまう。 

 「……いや、待て。」

 「……?」

 そのまま、寂しさに飲まれそうな時に。

 幼女は待ったを掛けるなら。

 「……にしちゃ、おかしすぎるんだよ、それで終わるには。エイル様が言うレプリカは大量生産品だ、工場で作ってんだよ。こんな、ほぼ自然発生的に、スフィアの力だけで生成するなんて、ありえない!そんなのは、記録によったら、オリジナルしかねーんだ。おかしすぎるんだ。」

 「?!」

 その先を述べて。

 それは、ありえないとして。

 ありえないということに、俺は疑問あれど。

 同時に、希望が蘇った気がして、顔が明るくなった。

 「……調べてみる価値がありそうだなぁ……。ななな!後で調べさせてくれよ!ああ、その前に、秘訣を聞いていいか?」

 「!」 

 幼女が続けることは、調べてみないといけないと。

 さらに、その顔は、さも新しいおもちゃを見付けたとばかりに、明るくて。

 おまけとして、秘訣まで聞かれるが。

 「調べてもいいけど……。秘訣とかは全然分からん。」

 俺も、これが何であるか分からないでいて。

 分かるならと、軽く頷きもするが、秘訣は分からないと。

 「何が違うんだ?量産品と。んで、何と何を使った?どんな魔法を使った?」 

 「?!」

 にもかかわらず、幼女は食い入るようであり。

 俺の断りをよそに、質問攻めを繰り出してきた。

 引き下がらないこの様子に、ついぎょっとしてしまう。

 「え、ええと、え~……。」

 ぎょっとしたままでは、埒が明かないとしても。

 たどたどしく説明をしようと口を動かして。

 「……さっき手渡されたバックパックの中身だね。それと、そこの縞模様の女性がくれた、スフィアかな。……で、起動したら、こうなったと。」

 紡いだなら、起きたことを赤裸々に告白した。

 「……あ?!」

 「?!」

 聞いて幼女は一転、信じられないという表情となり、素っ頓狂な声を上げる。

 ……まずかったか?いや、説明しようにも、そうとしか言いようがない。

 だからで、言葉足りずか、様子からも理解してくれていない。 

 「……いや、その。そうとしか……。」

 「……。」

 重ねるようだが、そうとしか言いようがないと。

 幼女は、まだまだ信じられないという表情のままだ。

 耳にして、変に考え込む様子さえ見せて。

 「……思い出と、呼応する魂……ってか?んなバカな。」

 「!」 

 考えるために、口元に指をあてながら。

 しげしげと見つめつつ、ゆっくり言葉を紡ぐが曖昧でしかなく。

 もちろん、俺もはっきりせず、首を傾げた。

 「……ぬぅぅ。後で調べてみっか。」

 「!……か。」

 結論としては、後で調べるとして。

 「!」

 「?」

 幼女は、話をそこまでとして、ベッドから退き、素早く身構えるなら。

 背中のバックパックが動いて、同じように、腕を伸ばして構える。

 その盾の話はそこまでにして、次は何だと俺は思うなら、その動きを見つめて。

 「えぇええええええええいいいいいいいるぅぅぅぅ!!!」

 「!」

 答えは、壁際から。 

 あの、吹っ飛ばされた灰色の女性が咆哮するなら。

 立ち上がりつつ、同じように構えてきて。

 「?!」

 いや、何か違う。 

 むしろ、片方の手は広げられて、さも、何かキャッチする体勢にも思える。 

 呼応してか、空を切って、何か飛んできた。

 その何かは、細長い懐中電灯状の……何か。

 灰色の女性は、飛んできて、手の中に納まるのを感じるなら、握り締めて。

 幼女に突き付けるようにするなら、何か、ボタンを押して。

 すると……。

 「なっ?!」

 妙な電子音を立てて、その懐中電灯状の物体から、光の刃が形成された。

 ぎょっとして俺は、声を上げてしまう。

 何だろう、〝それ〟は。

 まるで、SF映画を見ているかのような。

 「ああ?!あんだぁ?!」

 「!!い、いや、ちょっと……。」

 灰色の女性は、ぎろりと睨み付けては吠えてくる。

 それに委縮してしまい、言葉を失いそうになる。 

 代わりにか?

 「あぁ!!そう言えば、おめぇもぶちのめしたいな!!あたしをよくもぶっ飛ばしてくれてさぁ!この、〝レーセ〟の錆にしてやんよ!……ああ、まあ、金属の刃をしていないから、錆ねぇか!くぁはははは!!!」

 「?!ひぃぃ!!」

 言ってはくれるが。

 どう聞いても見ても、脅迫そのもの。

 仲良くする気はなく、また、ジョーク交えては、ニヤリと笑うものの。 

 目が笑っていないがため、恐怖を俺に与えてきた。

 加えて、光の刃をこちらにも向けて。

 「!!」

 眩しさに、目を逸らすが、他、熱を感じることから、……触ると火傷しそう。

 「!!おぉ!おもしれー顔してんな!……へへへっ!こいつが何か知りたいって、顔だなそりゃ!!よぅし、てめーに食らわせる前に、このあたしが懇切丁寧に教えてやるぜ、身体にもな!!」

 「?!うひぃぃぃ!!」

 どこをどう見たら、面白いのか知らないが。

 灰色の女性は、意地悪にも言い、その刃を押し付けてきた。

 ただ言葉だけで説明するだけでは飽き足らず。

 ついでに実際この刃まで突き付けて、言葉通り、身体にも教え込むと。

 俺は、嫌な予感がしてならない。

 切り刻まれて、殺されると。悲鳴を上げた。

 「簡単簡単!!名前は〝レーザーセイバー〟。略して〝レーセ〟。名前の通り、光の剣さね!」

 「!」

 俺の悲鳴聞いても、どうとも思わず、淡々と言ってくることには。

 その剣の説明であり。レーザーセイバー、略してレーセだと。

 名前の通り、レーザーを刃にする剣らしい。 

 ますます、SFじみてきた。

 映画で、斬り合うとかあるのか?……と一瞬呑気な考えが浮かんだが。

 どう見ても相手は俺に切りつけかねない。

 「さぁぁぁ……。眠る前のお話は終わり。おねんねするぅ?」

 「?!」

 その説明をしたなら、後はもういいとしてか。

 灰色の女性は、俺が理解したかどうかなんてどうでもよく、終えるなら。

 まるで寝かしつける前のお話を終えたとばかりに言うが。

 口調は冷徹、人間の血が入っているとは思えない冷たさであって。

 ああ、人間じゃないとか言っていたっけ。

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