5 モンスター?兵器?

 「こりゃ子どもに教える並みに苦労するな~。見かけは、成人男性のくせに。くうぅ、面倒くせー……。」

 灰色の女性と、幼女は、同じように頭を抱えて。

 どうも、俺の認識とやらは違うらしく。

 「おぅおぅ!エイル様が懇切丁寧に教えてやる!この、頭脳は大人!体は幼女のエイル様がな!それを、体は大人、頭脳は子どものてめーにだな……。」

 「……わ、分かった。それとありがとう。けど、結構大層な口ぶりだね……。」

 「あ~ん?!エイル様は、エイル様だい!偉大な頭脳のエイル様だぞ!敬え、敬え敬え~~~!」

 だから、教えるとして。

 ただ、大仰でもあり、幼女らしからぬ言動といい、正直不信感を抱く。

 教えてくれるならと、頷きはするが。

 結構大仰な口ぶりに対してと、さらに大仰に返されてしまう。

 偉大な誰かだと言わんばかりに、腕を伸ばし、さも体を大きく見せるように。

 オーラさえ出た気がするが。

 「……。」

 いまいちピンとこない。

 単に、こちらから見たら、子どもが背伸びでもして。

 偉そうに言っているとしか思えず。

 首を傾げた。

 「……ぜってー敬ってねーな、こいつ!!」 

 「ま。そりゃお前がチビガキだからな。難しい話はあたしゃ、できねーからな。そこはまあ、堪えてやれよ。ほれ、相手は生まれたての赤子だと思えば、楽じゃね?」

 「ぬぅぅ。何も知らないようなら、ヴァルキリー、なかなか的を射た意見だぜ?おう、じゃあ、繰り返すようだが、懇切丁寧に……。」

 「早く言えよ~……。終わらせて、こいつで遊ぼうぜ?」

 俺の態度が、明らかに敬っていないとみては、幼女は不満そうに。

 それは、あまりにも幼女過ぎるからだという意見に。

 やや怒りと不満を露に仕掛けているが。

 そも、目の前の俺が、あまりにも知らないことを、赤子のようだとして宥める。 

 ならばとして、幼女は繰り返し、懇切丁寧に教えるとして。

 なお、急かされて。

 挙句、灰色の女性は、俺をどうにかするみたいであり、指さして。

 「……。」

 俺の方は、指されて何とも言えないが、赤子扱いなのも、複雑に思えてならず。

 不満さえ抱いたが、致し方ないと自分を押さえる。 

 「……おぉ?」

 どうも、俺が押さえたものだから、珍しいなと見つめる。 

 「……。」

 そんな灰色の女性を尻目に、また説明をしてくれそうな幼女を見る。

 「おー!エイル様に注目してくれるなんて、なかなかできた奴だ!それに免じて、なお懇切丁寧に……!!」

 「分かったから。繰り返さなくていいから、話してくれ……。」

 そんな様子に、気を大きくして、やはり大仰に手を振って。

 喜びを表して言ってくるが、説明がない以上話が進まないと俺は促す。

 3回も言わなくていいから。

 「おうっと……。わりぃわりぃ。んじゃ、この世界のことよく、話してやるよ。」

 「ああ。」

 「んじゃ~、どっから話そっかなぁ~。星の話は……あ~くそ。専門外。それよか、単純な話をすっか。」

 「!……あ、ああ。」 

 世界の話をする前に、悩む姿があり。

 どうも、複雑なことは話せない様子。

 「じゃあまあ単純に。この世界支配しているの、2つの種族って知っているかぁ?」

 「いや、知らないな。……というか、目覚めたのがついさっきだろ?」

 悩んだ後は、頭を掻いて、単純なことから話すことにしていく。

 知っているかと言われたが、当然知らない。

 「……あたりめーだよな……。寝てたんだし。わりぃ。簡単に言ったら、人間か、人間じゃないか、この2つ。後者は獣人、あるいはビストと呼ばれている。人間ってのは、姿はおめーみたいな、何の変哲もない、冴えねー姿の奴。ビストってやつぁ、獣人と書いてある通り、獣の特徴を持った奴らのこと。簡単にいやぁ、あそこで寝転んで、人の話を完全に聞かずに、今にも眠りそうな、2匹のバカ猫どもみたいな奴だ。」

 「!……あ、ああ。……なるほど。」

 知らないのは当然だとして。 

 続けるには、この世界には単純に言って。

 俺みたいな普通の人間の他に、獣人がいるらしくと。

 その獣人とは、獣の特徴を持った人間だとして。

 例を挙げて、側にいる二人を指したが。

 「……。」

 言った通り、二人とも欠伸を立てて、今にも眠りそうにしてもいる。

 退屈しているのは、明白だ。

 獣とか、動物的特徴を持つっていうのなら、例としては適切かと思う。

 「あ、ちなみにこのエイル様含むのは、ちと獣人とは違うがな。それは後に説明することにする。」 

 「!……そ、そうか。」

 獣人の姿としては、適切な例であっても、厳密には異なると付け加えて。

 それは後回しにするらしい。そうかと俺は頷く。

 「まあ、別に人と獣人がいるぐらい、不思議じゃねーだろうし!」

 「……ああ。……そうか?」

 「……不思議じゃねーだろうし!!!」

 「……なるほど、分かった……。」

 別に、大まかに言って、そんな種族が2つあるぐらい。

 不思議じゃないだろうという話に持ってはいったが。

 俺は初めてなので、実感湧かず、首を傾げる。

 繰り返して、強引に理解を進めてきたために。

 俺は結局、腑に落ちた状態じゃなくても頷いてしまった。

 「問題はここからよぉ!ほら、人間と人間みたいな奴といたら、どうなるよ?え?お手て繋いで、ハイ平和!……になると思う?」

 「!」 

 その中途半端な理解ながらも、続けるとして。

 幼女が次に言ったのは、ここで問題だと振ってきた。 

 さて、人間と人間に似た、……何か?が同時にいて、何が起こると。

 「……ど、どうなるだろうか……?」

 俺は、知らないことが災いして、やっぱり何も答えられないでいる。

 「なんねーわな!だってよ!人間ってやつぁ、どこまでも自尊心高くて、自分可愛さに獣人どもを迫害するようになったってこった。簡単に言ったら、戦争ってやつよ。まあ、人間にも色々いるようだが、獣人と協力して戦うって物好きってのもいてな、そんでまあつい最近まで、世界中そんな状態だったってわけよ。」

 「!なるほど……。」

 そうだろうようと、最初から期待していないようで。

 ご自慢としての解説を言うならば、当然のごとく、争いがあったと。

 それも、世界中にまで拡散するほどの争いで。

 混沌として〝いた〟と締め括る。

 「……?」

 その過去形が、気にもなる。  

 では今はどうなのだと?  

 「!おほっ?!戦争?!戦争!!戦争の話ってか?!今から、共和連邦を根こそぎ焼き払うのか?!おい!」

 「……おめーはもう!!!」

 なお、結論出る前に、灰色の女性がしゃしゃり出て。

 先ほど眠そうにしていたのに。

 一転して、話に聞き入ってくる。

 「頭の中には、戦争しかねーのか?!ちっとは他の事学べよ!」

 「え~?!だって~、他のことなんて退屈じゃんか……。鉄火場の、砲撃乱れるのが好きなのさ~……。いいじゃんかぁ~……。」

 「本当に戦争しかねー!!!」 

 そんな灰色の女性に対して、色々と軽く説教するが。

 頭の中は戦争のことしかない。

 そのために幼女は頭を抱えてしまった。

 「……。」

 説明中にもかかわらず、こんな様子に大丈夫なのかと不安を抱いてしまった。

 「あーあー!!説明にならん!!ヴァカリキー!!やっぱすっこんでろ!!」

 「ぬぁにぃ?!チビガキのくせに、生意気だなぁ?!おい!!」

 これでは、説明にならんと幼女は、頭を上げては、灰色の女性を罵倒する。

 喧嘩を売られたと思ったか、灰色の女性は激昂し、牙を剥き出しにして吠える。 

 どこか、獣のように思えてならないが、苛立ちの中にふと、歓喜さえ感じる。

 奇妙な様子でもある。

 「めんどくせー!!!トール!!こいつを黙らせとけ!!」

 体格差と、力の差を理解しているか。

 幼女は手を叩くなら、側で今にも寝息を立てそうな縞模様の女性を起こして。

 「……みっ!」

 縞模様の女性は、寝ぼけ眼擦りながらも、了解に敬礼で応じて。

 小さく鳴いては、徐に灰色の女性に向かう。

 「あ?!ごるぁ!!トール!!てめぇ!!あたしに逆らうのかぁ?!」

 灰色の女性は、縞模様の女性を剥いては、威嚇交じりに言うが。

 一方の縞模様の女性は動じていない。

 そのまま近寄っては、思いっきり組み伏せる。 

 「?!ぬぐぁぁ?!と、トール?!て、てめぇ!!!!!いでででで!!!」

 一応、仲間のはずだろうに。

 容赦なく、組み伏せては、動けないように押さえつける。

 「……おーし!そのまま、そのまま。エイル様が良しというまで、そのまま!なぁに、普通の人間が死ぬぐらいの力加減でいいぜ?」

 幼女は、その様子見て、褒めて。

 また、命じることには、よく分からないが、さらに力強く組み伏せろと。

 「?!」

 命令に応じて、ギリギリと凄まじい音が部屋に響き渡った。

 灰色の女性の体からだが、肉体がそんな音を立てるとなると、凄まじい力だ。

 し、死にかねない!!

 ぎょっとしてしまうが、俺にはどうすることもできない。

 見ているしか。

 「……っ?!……っ!!と、トー……ル!……後で、ぶっころ……す!!」

 灰色の女性は、息が絶え絶え状態であり、今にも死にそうな感じになっていた。

 「……よしっ!やっぱりしゃしゃり出ない方がいいや、こいつ。めんどくせーし。」

 幼女は、酷い光景だというのに、平然としていて。

 あっさりと、言う。

 「……?!」

 俺としては、その平然さが違和感であり。

 度々ながら、ぎょっとしてしまう。

 「!あぁ。説明途中だから、ぽかーん、状態だな。すまねぇ。あ、別にそいつのこと、気にしなくていいぜ?死なねーから。溶鉱炉に落としても、だし。その秘訣は、後々説明すっから。続きだよな?もちろん。」

 「?……?!……あ、ああ、あ~……。わ、分かった。」

 ぎょっとしているなら、幼女は気付いて。

 言うことには、〝死にはしない〟とも。

 その秘訣については、後々説明するとして、まずは途中である説明の続きをと。

 「んじゃまぁ、戦争のことからだな。」 

 「あ、ああ。」 

 「この世界は、獣人を認めない〝帝国〟という組織と、認める〝共和連邦〟という組織に分かれていてな。この前まで、戦争があったわけよ。んで、とんでもないイカレ野郎が出てきて、バランスをひっくり返して、見事帝国は打ち破られて、終わりましたとさ、というところか。」

 「……分かった。」

 幼女が紡ぐのは、戦争の時の続きであり。

 それは、この前に終わったとで締め括られる。

 「……なら、平和か。」 

 戦争が終わったなら、平和なのだろうと、俺は呟く。

 「ところがそーじゃねー。何せ、エイル様たちがいるからな。」

 「……は?」

 だが、真っ先に幼女に否定される。

 何で?まず疑問符が浮かんだ。

 「エイル様たちは、〝兵器〟なのさ、帝国のな。もちろん、そこで組み伏せているのと組み伏せられているのと合わせてな。このエイル様たちがいる限り、終わらねえのさ、どうしようとも、な。」

 「……は?!え?!」 

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