4 ようこそ、異世界へ。……けど……
幼女は耳にして、そういうことかと、いう感じになる。
ならばと、鏡を置いて、向き直るなら。
「ま、おめーがどうの何のは分かんねーが。不鮮明で、線がぐしゃぐしゃの傷痕は多分おめーの言う自殺未遂の結果だろうて?んで、そうじゃねぇ、はっきりと真っ直ぐとか、一定間隔の傷跡は別の件になるな。」
「!そうか。……ん?別の件……?」
幼女が言うことには、自殺未遂の無様な跡は存在すると。
しかし、それとは別に何かあるようで。
気になって、首を傾げる。
「おーよ。聞いて驚くな?おめーは聞くも素晴らしい、〝サイボーグ〟になっていたのさね!おぉ、驚くなよ、サイボーグってのは……。」
「?!……サイボーグ?!」
幼女は、俺が気になった〝別の件〟について語るなら、サイボーグだと。
続けて、サイボーグについて、言いそうだが。
「まさか、俺の肉体には、別途機械が接続されていたのか?!」
遮る形で悪くあるが、つい口にしてしまう。
驚いたこともあって。
サイボーグとは、つまり体に機械が接続されていたと。
……何の機械かは分からないが。
それはそれは、なかなかにSFだとも、思う。
「?!サイボーグを分かるのか?!……あ、まあ、概ね合ってんだが。ははぁ、知識はある程度ありそうだな。じゃあ、何なのかはこの際置いておいて、おめーがどうなっていたのかを言う必要があんな!」
「!あ、ああ。」
遮られて、嫌な顔をするかと思ったが、逆に幼女は話を弾ませて。
概ね合っているならとして、幼女は先に進めるようで。
それならそれでいいと、俺は頷く。
その先、俺がどうなっていたのか、気になりもする。
「あぁ。おめーはな。うちらが把握している情報だったら、使える肉なら、とりあえず機械だ何だ取り付けて、動かせるなら動かして、盾だの囮だのに使っていたんだとか。まあ、ある種、戦闘兵器だってこった。」
「?!戦闘兵器?!」
「……ほとんど役に立っていない気がするが、な。その点はうちらの方が優れていたのかもしれないな。」
「……?」
話が進められるなら。
サイボーグ時代には、何をしていたかと言えば。
把握していた限りでは、戦闘兵器ではあったらしいが。
全然分からん。
俺は首を傾げていて。なお、幼女いわく、ほとんど役に立ってもいないとも。
また、その点では、自分たちの方が優れてもいるとして。
……それ以前に、戦闘兵器だの何だの、一体どういうことなのだ?
不思議に、何度目だか、首を傾げてしまう。
「?あー?何だ何だ?またまた不思議そうな顔をして。」
「……何度もするさ。何だ?兵器って?どこかと戦争でもしてるのか?」
そんな顔するものだから、幼女は不思議そうな顔するとはと、聞いてくる。
俺は、そも兵器とはどういうことだと質問する。
兵器ということは、戦争でも戦闘にでも使われるのなら。
じゃあ、俺は一体何に使われていたということだ?
「あー……。忙しいねぇ。まあ、教えるってさっき言ったしな。」
「!」
質問をしたなら、幼女は面倒臭そうに頭を掻く。
「〝共和連邦〟とだよ。」
「!……?」
面倒臭いのだから、この一言で済まそうとして、告げるなら、それで。
そう言えばいいのだとしても。
だが、その意図汲み取れど。
その単語を言われて、何のことやら俺は首を傾げる。
「……おー。弱ったぞ。エイル様弱ったぞ……。最早常識中の常識、そこら辺の子どもでさえ知っている常識が、全く通じねー。ヘルプ~!」
俺の様子に、幼女は頭を抱えた。
抱えて、ヘルプを求めて手を挙げるなら。
その手に止まるように、欠伸漏らしつつ、他の二人が集合してきた。
集合して、軽くスクラム。声を潜めるようにして。
秘密に、ことを進めるような雰囲気となる。
「〝ヴァルキリー〟……。こいつ厄介だぞ?エイル様でも敵わんわ~……。」
「あ?!あたしにやれってか?!……こういうの、お前の専門だろ?知識関連は、てんでダメなんだよ!」
「……みっ!」
「……。」
ひそひそ話を始めたが、ダダ洩れである。
相談のようだが、俺の存在に対して、対処をどうしようかというものだが。
その、灰色の女性の方、ヴァルキリーと呼ばれていたか。
この人も、困った様子を見せる。
どころか、相談されても、困ると既にお手上げ状態。
その代わりとして、そっと手を挙げてくれる人はいる。
小さく、猫のような鳴き声を漏らす、縞模様の女性。
「おめーはなおのこと不適格!」
「おめえじゃ無理。ほとんど喋らんじゃねーか!」
「……(しゅん)。」
しかし、二人から不適格扱いされる。
項垂れて、その頭の猫耳も垂れる。
「しかし、こうも常識がないとなると……。一体どこのどいつなんだ、こいつ?どこから来やがってんだぁ?」
「あたしも知らねー。〝最終防御隔壁〟の崩壊後に、スフィア狩りしたら見付けた奴だからな、素性なんて知らねー。」
「その言い様なら、何の情報もねーな。あれか?あれだ!流行りのあれ!」
「あれってなんだ?」
「……みっ!」
俺の様子に、しかし、どこの誰とも分からんとして。
なら、考えられる答えはこれかと、幼女は導き出しそうで。
ヴァルキリーと呼ばれた女性は、食い入るように聞き入り。
縞模様の女性は、異様に興味津々と示す。
「〝異世界〟から来たってのは、どうだ?転生してんだろうよ?」
「!!〝異世界〟?!」
「「お?!」」
幼女が口にした単語に、つい反応して、体を弾ませる。
だけじゃない、こう、期待感もまた、生じて。
そうするものだから、3人はまた、耳を立てて、こちらを向いた。
「……。」
その3人が向いたことに、さらに弾ませてしまいそうになるが。
脳裏では、同時に思考が動いていて。
確かにと、納得しそうになる。
異世界とやらなら、猫の耳を生やした人間がいてもおかしくはない。
そうなのかと、違和感に首を傾げることも。
……だが、定番ともいえる、やれ女神だの何だの、そんな奴はいない。
転生が行われる前にしても、後にしても、しかし違和感があった。
その、俺の知っている〝異世界〟とやらは。
どちらかというと、中世あたりを想像していたのだが。
ちらりと側にある機械を見るに、明らかに進んでいる。
周りを見渡しても、中世の建物には見受けられない。
どちらかというと、今までいた時代の軍事施設の類に近く。やはり違う。
そんな、疑問符を浮かべて回っているなら。
「……おい。あたしらの会話を聞いていて、何かピンとくるものがあるようだが。何か言ってみろよ。」
「!!……あ、その、すみません。い、異世界だとしたなら、キレイな女神とか、天使とか出てきそうだったり、……馬車とかが、現役で走っているような世界とか……つい考えてしまって。」
灰色の女性は促すように言うなら、俺は、感じたことをとりあえず話す。
「「あ?!なんじゃそりゃ?!」」
幼女と灰色の女性は聞いて、二人して同じように呆れて。
「……ん?!……まあ、ある意味〝女神〟ってんなら、当たっているかもしれんな、確かに。……だが……。」
「……?」
「……ちょっと待ってくれ。」
ピンと来たらしいが、続ける前にと、待ったを掛ける。
再び、3人の猫娘で集まるなら。
「……ありゃ根っから思っているが、中世だの何だのって……いつのことだ?」
「言い方からしたら、エイル様の推測だが、ガチで馬車が走っているような時代のことを指しているらしいぜ、ありゃ。下手すりゃ重症だな。重篤なファンタジー脳かもしれんし。それじゃ、エイル様でも手に負えん。」
「……だな。んでついでに、モンスターまで出る始末だと?んだったら、文明は滅びているだろうさね?」
「おめーが言うと、そうなりかねんな……。」
「……あたしら、正真正銘の〝モンスター〟だからな。」
「……ああ。」
「そんな装備じゃ、大丈夫じゃねーな。あたしらが全人類を、食っちまっているぜ、今頃な。」
「……?」
再び始まった秘密会議のようだが、ダダ洩れていて。
挙句、俺のことを重症だの何だの言う始末。酷いとも思うが、それ以前に、気になることを彼女たち自身が言っている。
モンスターが出るなんて、ファンタジーだが。
……それを自分たちを指して言う。
不思議に感じた。
「……まあ、エイル様からしても、そんなこと考察することから、知能レベルはそれなりにあるとみていいぜ。このまま、質問を続けよう。ああ、ヴァルキリー、おめー横から色々言ってもいいぜ?エイル様の悪口以外はな。」
「!お!いいのか。丁度退屈しそうだったんだ!やれ質問だ何だの、あたしの柄じゃないからね~。」
「!」
気になっていることはさておいてと、幼女は進めているようで。
ファンタジーだの何だの、バカにするとかではなく、知能レベルを考えるならと。
このまま、色々と進めていくつもりだ。
話がまとまったとして、3人向き直るなら。
「んじゃ、このエイル様が説明しよう!」
「!」
口火を切るのは、幼女のようだ。
向き直っては。
「おめーがどこから来たかは分からんが、多分おめーとは世界が違うと思うぜ?ま、どこの世界だか何だか、それはエイル様でも説明できねー。」
「!あ、ああ……。そ、そう……。」
言い出すことは、違う世界なのだと。
実感はない。それも、情報が少ないがために。
単なる映画のセットとでも言われたら、そこまでだろうが。
今は判断できないでいる。
そのために、曖昧な様子でしか返せない。
「でもいいんじゃね?どうせ、転生したら、無双なんて考えていたんだろうけれども、そうするにはあたしをやらねーとな?へへへへ!!」
「!……は、はあ。」
異世界であろうとなかろうと。
いずれにしても、妄想として無双を考えているなら無駄だとして。
灰色の女性は眼前に迫り、言い、ニヤリと笑う。
生返事だが。
またまた、どこからそんな自信があるのかと疑問にも思う。
「……おぉ?何だか言いたげだな。ま、知らねーんだし無理はねーな。やれやれ、無知は怖いね~……。」
「……?」
その灰色の女性は、俺が疑問に思っていると感じるが。
ただ、それは無知であり、怖いことを知らないとして。
不敵に笑みを浮かべて続けては。
「あたしら、ここらじゃこう呼ばれてるのさ。〝モンスター〟ってな!」
「?!」
〝モンスター〟であると言ってきた。
何だと?!内心思うなら。
「……。」
そこで、マジマジと彼女らを見つめては。
「!……そうか。」
何となく、納得をしそうになる。
およそ、人とは違う姿……まあ、猫の耳と尻尾を持つほどだが。
それが、モンスターとやらであれば、合点がいく。
人間とは違う。
それでいて、人間っぽいそれを、異種族としてのモンスターとしてなら、納得だ。
「あんたらは、人間とは違う、モンスターだってことか。だから、そんな猫耳や尻尾をしているのだな。そういう、猫族的なモンスターだって……。」
「……何かしっくりこねーな。当たってはいるが、こう、何だろう。ど真ん中じゃない感じ。……こいつの認識、どこか間違ってるんじゃね?」
「……?」
そう言うが、灰色の女性は、俺の回答にいまいちだという評価を下す。
何か間違えただろうかと、首を傾げる。
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