第3話 踏み出す道に、舗装はない。

 翌日、私の都合などお構いなしに、月曜日がやってきた。

 学校へ行かなければならない。

 けれども、気分は最悪、最底辺だった。いっそ学校を休んでしまいたい。

 でも、学校だけは休まないってハルちゃんと約束したし……。まあ、そもそも、毎朝二人で登校してるから、どのみち行かなきゃいけないんだけど……。

 憂鬱で倍増した眠気を抱えつつ、私は意地で支度を整え、学校へ向かう。

 授業を受け、昼休みを経てからまた授業。

 幸いなことに、別れたことは噂になっていなかった。

 そうして、部活があるハルちゃんと別れた後の、夕色で染まる帰り道。

 あてもなく、寄り道のような散歩をしていた時だった。


「――へあっ⁈」


 肩が何かにぶつかり、地面に尻餅をついてしまう。

 一体何にぶつかってしまったんだろ……。

 反射的に瞑っていた目をゆっくりと開き、視線を上げる。

 が、すぐに、後悔と戦慄が全身を駆け巡った。

 目の前には黒のスーツに黒のサングラス、胸元には金色のチェーンネックレスを身に付けた大柄な男性が立っていたのだ。

 人を見た目で判断するのは良くないことだと分かっている。でも今、肝を冷やさずにはいられなかった。


「あ……、あ……」


 言葉を上手く出せない。全身の震えも止まってくれない。

 謝らなきゃ、謝らなきゃ、謝らなきゃ。

 

 ――なのに。どうやっても言葉は出てくれなかった。


 そこでやっと、私は気づいたんだ。

 私には何かを変える行動力が、そのための意志の強さが足りなかったんだって。

 あの時、無理にでも押し切っていたら。彼を強引に引き留めていたのなら。

 もしかすると、今あるはずの未来は全くの別物になっていたかもしれないのに。

 弱くて、惨めで、大多数の一部でしかない私……。

 たとえ意思があっても、意志なんてろくにない私……。


 ……こんな私なんて――大っ嫌い。




「ちょっと待ったあああ‼」


 けれどそこに、一人の男子学生が現れたんだ。

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