7杯目 青空色のサイダー


「高校生って大変。女の子って大変。」


毎日ある授業に部活にテストも。

ダイエットして、メイクして、お洒落して、可愛いものに囲まれてる。



痩せたいけど食べたいものはたくさんあって、

仕事してお給料をもらってるわけでもないけど、新作のコスメも洋服も欲しいなって思う。



小学校の低学年ぐらいまでは、完全に我が道を貫くようなタイプだった。

人に迷惑を掛ける事はしない。されて嫌なことはしない。

けれど、自分の軸は最後まで曲げないような、そんな子供だった。


嫌なことは嫌。いけないと思ったことはいけない。

曲がったことは嫌いだから。私はいい子だから。私は優しいから。

困っている人がいたら助けてあげる。

たぶん自分が正義だと思っていた。正義なんて自分のエゴだった。




女の子っぽくなんてことも、考えたことがなかった。

おままごとやプリンセスのドレスよりも、泥遊びが好きで、

小さな頃から飛行機や新幹線を見に連れていってもらってたっけ。

足を開いちゃうからズボンばっかり。スカートなんてめったに履かなかった。


社交的な性格。友だちになるのに年齢なんて関係ないと思っていたし、

実際、1日だけの友達もたくさんいたと思う。


挨拶して、名前を聞いて、何歳かも聞いてたかな。

そのまますぐに一緒に遊ぼ?って。




人見知りになったのはいつからだっけ?人間不信になったのは??


悪いことをした記憶もないのに、真面目ぶってる、と陰口が絶えない日々。

なにかしたっけ?と聞いても、うざいの一言しか返ってこない。


聞き流すなんて器用なことはできなくて。でも、泣いたら負けだと思っていて。

気付かないふり。なんとも思ってないふり。

そんな日が続いて、気付いたら周りの目に怯えるようになっていた、、、




目立たないように。けれど、空気にはならないように。

大人数は苦手。でも、1人にはならないように。


なにがしたかったんだっけ。なにが好きなんだっけ。

自分ってなんだっけ。


学校が好きじゃない。嫌な思い出やトラウマになっていることが多いから。

人混みが好きじゃない。人の話し声が聞こえてくるから。

一人になりたくない。友達がいないと思われるから。

気付いたときに自分の居場所が無くなってそうだから。

自分が好きじゃない。なにもできないから。


中学までの小さくなっていた生活は終わりにしたかった。

過去に囚われている自分から変わりかった。

自由になりたかった。



高校生になって少しは変わったと思う。

好きじゃないと思っていた学校の中にも楽しい時間を見つけた。

コンプレックスは少しずつだけど直してる。



もっと前から女の子を楽しんでたら良かったな。

せっかく女の子に生まれたんだもん。楽しむしかないよね??


「みんなと一緒」も楽しんでる。

けど、一人でいることも増えたと思う。

友達がいないわけじゃない。仲いい友だちはいる。

今日ある小テストの話をして、好きな人の話をしてて、突然始まる流行りのダンス。


面白いけど、楽しいけど、息ができなくなってしまうときがある。

一人になりたくなるときがある。

前までなら作り笑いを貼り付けてでも、一緒にいようともがいていたと思う。

今は違う。いつもはそれぞれが好きに過ごしていて、集まるときは集まる。

話すときは話す。けれど、抜けたとしてもそれはそれ。

その中のひとりじゃなくて、私はひとり。



無理してまで合わせなくていいかなって。

そう思ったら肩の力が抜けて、一気に楽になった。

深呼吸をして、前を見て、目標を見つけて、真っ直ぐに進む。

たまに後ろを振り返って、空を見上げて止まる。



自分のペースでいいかなって思う。

少しずつ頑張ろうって。


もうすぐ夏が来る。

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