第33話 嫌いだ。


 僕の流派、柳生流剣術は日本古流連盟に属していないからよくわからないけど。

 理由は色々あるそうだ。流派がマイナーすぎるとか、連盟の方針と相いれないところがあった、とか。

 父さんからはそう聞いたけど詳しくは教えてくれなかった。

 僕も父さんが他界した後の事後処理で忙しく、連盟への参加申し込みなんてしようとさえ思わなかった。

 その結果、学校だけじゃなくこの試合会場でも僕は孤独だった。

 でも構わない。

 別に寂しくなんてないし。真の強者は慣れ合わないのだ。

 ふと北辰一刀流の師範・師範代たちの中に、かつて柳生流の道場の門下生だった人を見つける。

 うちの道場はすぐにやめてしまったけど、北辰一刀流では師範代にまでなったのか。

 悔しい気持ちと、師範代になるまで必死に練習したことを祝福したい気持ち、矛盾した二つの気持ちが僕の中でせめぎ合う。

 彼は僕の顔を見るとすぐに目をそらし、バツが悪そうに人陰に身を隠した。

 残念で、そして苛立たしい。

 でもそれでいいと思いなおす。僕が同じ立場なら同じ行動をとっただろう。

 今更どの面下げて会いに行けというのか。

 僕は苦手な人とはできるだけ関わらないほうがいいと思っている。

 後ろめたさがある人と無理して関わる必要はないし、誰とでも仲良く、なんていうのは嘘であり偽善であり薄っぺらい道徳だと思う。

 話が合う人もいれば合わない人もいる。気が合う人もいればその逆もいる。

 合わない人と無理して付き合っても、ストレスをためこんで心を病む人さえいる。

人の悩みのほとんどは人間関係の悩みというくらいだ。

 だから、人付き合いは嫌いだ。

 クラスメイト、先輩、後輩、先生…… 人付き合いの塊である学校は苦手だ。

 やがて開会式の時間が近づき、出場選手たちが試合場正面に設置された壇上の前に整列し始める。

 僕はもちろん一番端だ。

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