第20話 ドン引き2
アレクシアが落ち着いたところで、二人で教室に戻る。教室に入るやアレクシアはさっきまでの疲労と緊張が嘘だったかのように入り口付近で談笑しているクラスメイトに混ざった。
「アレクシアさん、お帰りー」
「ただいまでス」
笑顔で手を振り、人懐っこい笑顔を見せるアレクシアの変貌ぶりはまるで女優のようだ。
僕ともたまたま廊下で会った、くらいの雰囲気しか醸し出していない。
僕はふと、さっき気になっていたことを聞いた。
「そういえば」
「はイ? なんでス?」
学校なので彼女のファーストネームは呼ばずに話しかける。
男子に対しても分け隔てなく話すキャラを彼女は作っているので、他の女子も大した関心を持たずに見ていた。
「さっき言ってたはばかり、ってもう終わった?」
僕がそう言うと、グループの中のメガネの女子が蔑んだ目で僕を見る。文系科目トップの成績を誇る子で、確か柳沢さんだ。
柳沢さんがスマホを取り出して画面の上で指を動かすと、女子グループのスマホがブルブルと鳴る。液晶画面を目にした途端、柳沢さんだけが僕に向けていた目が、グループの女子全員から僕に向けられた。
「さいってー」
「セクハラ」
「陰キャのくせに生意気」
「もげろ」
と、罵詈雑言が僕に飛んできた。最後のはセクハラじゃないのかな……
というか、何でここまで言われないといけないのか。僕が何をしたって言うんだ。
そう恨みを抱いていると、隣に寄ってきたアレクシアが僕にだけ聞こえるくらいの声で囁いた。
「はばかり、とはお手洗いのことでス。そのような大声で言われると恥ずかしいでス」
恨みの念は急速にしぼんだ。
ごめん、と女子みんなに素直に謝った。
本気で怒っているわけではなかったのか、深々と頭を下げた僕の様子に留飲を下げたようだ。
やっぱり古流なんてやるとドン引きされる運命らしい。
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