第3話

連続殺人の幕開け?

 

埼玉県蕨市。埼玉から東京、神奈川を結ぶJR東日本の京浜東北線に乗れば、川口、西川口駅と過ぎて荒川を超えれば都内の赤羽駅に着く。江戸時代名には、中山道六十九宿の中でも五宿に入ると言われた宿場町。戦前は機織物の町として栄えたが、今は東京のベッドタウンとなっている。

蕨市の市街地域面積が全国で一番狭いミニ市としても知られている。

流入する都市勤労者に対応すべく、狭くて人口密度が高い地域ならではので、土地の有効利用が図られ、無秩序に建設された中低層マンションが込み入った区画を形成している。建物と建物の間には迷路のような路地がくねっている。

 この年、梅雨は豪雨と霧雨が交互に訪れる油断のならないものだった。

 中国人留学生、王陳軍は、恨めしそうな顔で真っ暗な空を見上げている。午前三時。昨夜からの強い雨は止みそうにない。

留学生とは言っても、大学・大学院の学生ではなく、日本の大学・専門学校を目指して日本語学校で勉強しているにすぎない。一昔前までは、進学目的は単なるお題目で、出稼ぎこそ真の目的であるような輩が大半であった。平均年収三○万円以下の国から来て昼夜兼行で少し無理なアルバイトをすれば一年で三○○万円稼げる。誰が勉強なんかで時間を無駄に使うだろうか。

来日その日から、稼ぐのに夢中になる。

アルバイト収入だけでは満足せず犯罪に手を染める者が多数いたのも事実である。

日本語学校には警察からの問い合わせ、だけでなく、刑事訴訟法第一九七条第二項の(捜査関係事項照会)として刑事が出向いて来ることもたびたびであったと、当時の日本語学校業務に携わっていた友人が話していた。

少しはこのような事実の存在を残しておくべきと思う。当時はこのようなことは「日中友好」に資するものではないとして、マスコミは殆ど取り上げなかったように記憶している。友好とは阿(おもね)ることではなかろうに……。

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