第19話 初依頼
ジダンに性能付き武具を作ってもらうように依頼した翌日の朝。俺たちは冒険者ギルドに来ていた。
目的はもちろん依頼だ。Dランクまではギルドの依頼を達成するとランクが上がるから目標はまずはDランクまでいくことだな。
ギルドに入り右側にある大量の紙が貼られた場所に行く。そこにある紙には様々な依頼の内容が書かれている。
【書かれている物を買ってきて家に届けて】
というお使いの依頼から。
【この素材をとってきて】
という採取系の依頼。
【このモンスターを討伐してきて】
という討伐系の依頼。
本当に様々な依頼がある。だけど、俺たちはまだFランクなのでこの中でもお使いや採取系の依頼しか受けれない。
「じゃぁ、まずはこの依頼からいくか」
俺が選んだのは指定の物を買ってきてほしいというお使いの依頼。
「うん。それにしよ」
唯香もこの依頼に賛成のようだ。というのも依頼の内容がお年寄りの人からの依頼でこの街の北の方に住んでいるらしい。で、その人の欲しいものが売ってあるお店が南にしかなく、代わりに買ってきてほしいとのこと。この街は王都に次ぐ大きさなため北の端から南の端まで移動するだけで40分以上はかかる。往復だと最短でも一時間20分。
車なんかないためこれ程の時間お年寄りの人が歩くのはきついんだろう。だからこそ様々な依頼を受ける冒険者の出番と言うわけだ。
依頼の紙を受付のところまでもっていって正式に依頼を受ける。受付の人はレーネさんじゃなく、別の女性の人だった。俺たちが初めての依頼に行くってことで説明をしようとしてくれたけど、それを丁寧に断り、ギルドを出て、南にあるお店に行く。
そのお店は結構有名なお茶屋さんらしく、そのお店にしか売ってないお茶の葉を買い、届けるのが今回の依頼の内容だ。
30分くらい歩きそのお茶屋さんに到着。お茶の葉を買ったら北にある依頼者の家まで行く。
時間は早朝を過ぎた午前9時頃。日の暖かさが心地よく、吹く風も居心地のいい風。日本だと8月のこの時期にここまで過ごしやすい日はないと思う。
「なんかいいね、こういうの」
唯香が楽しそうにそう呟く。確かに過ごしやすい天気の日に外を歩くのは気持ちいいものがある。
「王都にいた時は訓練ばっかりしてたからな。こんな感じでまったりするのは久しぶりだし」
「うん。それもあるけど……やっぱり、好きな人と一緒に歩くのはいいなって」
「―――っ!!う、うん」
不意打ちでそう言うこと言うのはずるくない!?めっちゃドキドキするんだけど!?
そんなことを言ったせいか、二人の間に沈黙が訪れる。気まずい沈黙じゃない。むしろその逆、凄く居心地がいい。
その時不意に俺の左手と唯香の右手が少し触れる。
ビクッと二人同時に少し手を引っ込める。
宿屋で手を握ったことはあるけどそれは雰囲気に任せて握っただけでこんなちゃんとしたシチュエーションで握ったことなんてない。
この状況で手を握る。そんなことドキドキしすぎて出来ないんだけど!?
でも、握りたい!!
ものすごく手をつなぎたい!!
だから……スッと左手を唯香の右手に近づけて握る。
「―――っ!!」
ビクッと唯香はしたけどすぐに手を握り返してくれた。
手の柔らかさと温かさを感じながら、こんな幸せな日がずっと続けばいいなとこの時、俺は思った。
「ありがとうね。このお茶の葉から作るお茶は本当に美味しくてね~」
依頼者の家に行くと優しそうなおばあちゃんに出迎えられ、お礼を言われた。その後、おばあちゃんから依頼達成の証である手紙をもらいギルドに帰る。
ギルドに帰ると受付の人におばあちゃんから貰った手紙を渡す。これで依頼完了だ。
「はい。依頼達成を確認しました。こちらが報酬のリルになります」
受付の人から報酬の2000リルを貰う。ちなみにこの世界の通貨は「リル硬貨」という硬貨で1リルが日本の1円と同じ価値になる。つまり、2000リルは日本円で2000円ということ。一時間半くらいの時間で2000円稼げたのは結構いいけど、これだけじゃ生活することは出来ない。
「よし!次の依頼行くか!」
「うん!」
ということでさっそく次の依頼を受ける。次の依頼は採取系の依頼では定番の【薬草の採取】だ。
このイクシオンの西側の森林に生えている【
【桃花の薬草】はその名の通り桃の色をした鮮やかな花で、主に傷を回復するポーションの材料として使われる薬草らしい。森の比較的浅い日当たりのいいエリアに生えているので取りに行くだけならさほど危険はない。
俺たちはギルドを出て西側にある街の出口へと向かう。イクシオンを出て10分ほど進むと森の入り口が見えてきた。ここで桃花の薬草が採取できる。
「よし!さっそく桃花の薬草を探すか!」
「うん」
二人で森の入り口周辺をくまなく探す。桃花の薬草は日当たりのいい場所に生えているので森の奥深いところよりもこういった入り口周辺で多く見つかるそうだ。
「あっ!これじゃない?」
少し周りを探すと唯香が桃色の綺麗な花を見つけた。桃花の薬草だ。
「これが桃花の薬草。以外に小さいんだな」
「そうだね」
想像していたのより随分小さい。子供が摘んできておままごとに使うくらいの大きさだ。こんな小さい花がポーションの材料になるなんてな。
とにかくその周りに生えている桃花の薬草を採取する。合計で5本の桃花の薬草を採取できた。あと15本。
だけど、その後20分くらい周りを探したけど桃花の薬草が見つからなかった。
「見つからないね」
「う~ん、さすがにもうこの辺りにはないのかもな」
Fランクの初心者向けの依頼。しかも、よくポーションに使用される薬草だけあって入り口周辺にはもうないんだろうな。
「少し森に入って探してみようか」
「うん。そうだね」
俺と唯香のレベルなら森にいるモンスターぐらい余裕だから森に入り奥に進んで桃花の薬草を探す。
「あっ!あったよ!」
「こっちもあったぞ」
しばらく進んだところにあった少し開けた日当たりのいい場所に桃花の薬草がかなりの量生えていたので15本採取する。これで依頼の条件は達成だ。
「よし!これで依頼達成だな」
「うん。お腹すいちゃったから帰ってお昼ご飯を食べようよ」
「そうだな」
俺たちが帰ろうとしたときに森の奥の方から叫び声が聞こえた。
―――なんだ?
よく耳を澄ませ周りの音に意識を向ける。木々のさざめき、小鳥の鳴き声。森独特の音が聞こえる中、その声が聞こえた。
―――わぁあぁぁあああ!!!
―――きゃああぁぁ!!
それは悲鳴にも似た叫びだ。
「っ!?唯香!」
「うん!!」
二人ですぐに声の聞こえた方向に走っていく。木々の間を抜け、進むと少し開けたところに出た。
そこで見た光景はイノシシの顔を持つモンスターに囲まれる4人の冒険者たち。そのうちの一人は怪我をし、倒れている。
―――あのままじゃやばい
倒れている冒険者はかなりの血を流しているのがここからでも分かる。一刻も早く回復しないと手遅れになるし、このままじゃ他の冒険者までやられてしまう。
「唯香!あの倒れてる冒険者の回復を!」
「うん。任せて!」
唯香はすぐに怪我をしている冒険者のもとに駆け寄った。唯香の回復を邪魔させないためにも俺はモンスターと冒険者の間に入り、剣を構える。
イノシシの頭に人の体。腰には布を巻き、手には槍のようなものを持っている。ゴブリンと同じくRPGでは定番のモンスター「オーク」だ。
「ガアア!!」
オークが叫び、槍を構える。が、そんなに慌てる必要はない。オークは「嘆きの洞窟」の地下9階層で出てきており既に戦ったことがあるからだ。
だけど……
―――あのオーク、でかくないか?
オークの数は全部で五体。だけどそのうちの一体だけが妙に大きい。周りのオークの背丈は俺たちと同じくらいなのに、あのオークだけは倍の大きさはある。
「ガアア!!」
「っ!?」
思考している余裕を与えてくれるはずもなくオークが俺に向かってきた。先頭にいたオークの槍での攻撃を《妄想再現》で即座に再現した《盾術》のスキル《クリアシールド》で防ぐ。ゴーーンという鈍い音と共に槍が弾かれ、オークに隙が出来る。その隙にオークに攻撃。《剣術》スキルの《連撃》を使用。二連続の剣撃がオークのお腹部分に直撃。鮮血が飛び散り、オークが倒れた。
「よし!」
新たに購入した剣の切れ味も上々。さすが、イクシオンの街一番の武具店の剣だな。
さらに二匹目のオークに向かって《空撃》を発動。斬撃がオークを襲い、その体を切断する。レベル差がかなりあるため《剣術》スキルでも余裕でオークを倒せる。でも、油断はしないように立ち回る。
そして、三匹目、四匹目のオークも一撃で倒し、残るはでかいオークのみ。
でかいオークに向かって《空撃》を使用。斬撃がオークに向かって飛んでいく。先ほどまでのオークはこれで体を切断できたが、
―――キー―ン
と言う音と共に斬撃が弾かれてしまった。
(やっぱり、あのオークだけ何かが違う……)
仲間のオークがやられている時も全く動く気配がなかった。まるでどうでもいいみたいに。
どうしようか決めかねていると、オークが俺に向かってきた。
「なっ!?はやっ!!」
その巨体に似合わずかなりの速さで向かってきて攻撃してきた。すぐに《クリアシールド》を使用して防ぎ、距離をとる。
あっぶねっ!!なんだ!?あのオーク!!
明らかに普通じゃない。
でも、ついて行けない速さじゃない。《剣術》のスキルじゃダメージを与えられないから《妄想再現》で《剣豪》を再現。さらに、オークの攻撃を見切るために《見切り》スキルも再現。
そして、オークに突っ込む。オークは素早くその槍の先を俺に向かわせてくるがそれを《見切り》スキルで完全に見切り、右側に回避。回避と同時に《破壊斬》を使用。触れたものを破壊させる斬撃に耐えられるはずもなく、オークはその巨大な胴体を真っ二つに切り裂かれ、絶命した。
「ふ~~、あぶね……」
何だったんだ?こいつは……
「あ、あの……」
オークについていろいろ考えていると冒険者の人から声をかけられた。男二人女二人のパーティーだ。
「助けてくれてありがとう」
声をかけてきたのは茶髪の男の冒険者。年齢は俺たちより少し上ぐらいで、背中に大剣を背負っている。その大剣は青白い輝きを放ち、防具も青と白を基調としたデザイン。防具は急所をしっかり守りながらもその男の体形に合わせて動きやすいように作られていて、見た目だけでなく性能、実用性も高い物だというのが分かる。
「いえいえ、どういたしまして。それより、怪我は大丈夫ですか?」
怪我をしたのはもう一人の男の冒険者だ。背は俺たちよりも低く、顔も幼さが残る顔立ちなので年下なのかな?と思わせる冒険者だ。
「はい、大丈夫です!おかげさまで助かりました」
「良かった」
さすが唯香。
にしてもその怪我をしていた冒険者も他の女性冒険者もかなりの装備を身に着けている。ランクは結構高いはずだ。どうしてこうなったんだ?
「本当にありがとう。俺はこのパーティーのリーダーでカイン。Cランク冒険者だ」
「僕はフォルです。同じくCランクです。先ほどは回復魔法ありがとうございました」
「私はリーシア。Cランク冒険者よ。助けてくれてありがと」
「私はサリアって言います。同じくCランク冒険者です。ありがとうございました」
全員がCランク。中級冒険者だ。
「俺はあs……ハルっていいます。ランクはFランクです」
あっぶね!思わず本名言うところだった。この呼び方にも慣れないとな。
「私はユイっていいます。ランクは同じくFランクです」
俺たちが自己紹介を済ますとカインたちは口を開け固まっている。
なんでだ?別に名前は変じゃないよな。
「え?あの……Fランク、なんですか?」
小柄な冒険者のフォルがそう聞いてきた。ああ、そっちか。
「ああ、俺たち東の方にある村から来たんですけど、両親が冒険者で小さい頃からモンスターと戦っていたんですよ。冒険者の登録は最近したのでFランクってわけです」
と用意していた言い訳を言う。
「な、なるほど……それなら納得です。通りで強いわけだ」
納得するんだ……我ながら結構無茶な言い訳だと思ってるんだけどレーネさんもフォルもそんなに疑ってない。
「とにかく本当にありがとうございました」
「いえいえ、それにしてもこのオークはどうしたんですか?」
「あぁ……それは……」
このパーティーのリーダーであるカインが少々言いずらそうに呟く。Cランク冒険者パーティーなら普通のオークは敵じゃない。にも関わらず、あそこまで追いつめられたんだ。何かあった。それは確かだろう。
「ハルは命の恩人だし、この一件に関わった。だから、正直に話すよ。だけど、他の冒険者には言わないでほしい」
「分かりました。約束します」
「数日前、イクシオンのギルドにとある情報が入った。それはこの森の奥にある遺跡で異変が起こっているという情報だ。俺たちはギルドからの指名で遺跡の調査に向かった……遺跡の周辺は異常はなかったんだけど、問題は中の方。中にはかなりの数のモンスターが遺跡内を徘徊していた。大半のモンスターは大したことがなかったんだけど、あの大きなオークだけは別格で、なかなか倒せなかったんだ。そして遂に回復魔法を使えるサリアのMPがきれて、撤退を余儀なくされた。何とか逃げ切ろうとしたんだけどあのオークの動きが速くて、フォルがやられてしまった。そこにハルとユイが来てくれたってわけだ」
ギルドからの指名依頼。それが異変が起きた遺跡の調査。そこで確実に異変が起きている。
うん。これはあれだな。確実に厄介なことが起こっているな。
絶対そうだ。
でも、異常が起こっていた場所にいたモンスターたちは倒せたんだよな。だったら大丈夫か?
「なるほど、そうだったんですね。間に合ってよかったです……それでこれからどうするんですか?」
「俺たちはこれからギルドに帰って報告をしなきゃいけないから帰るよ。それと、俺たちに敬語は必要ないよ。ハルたちは命の恩人なんだから」
そう言われても日本人としての感覚で年上の人に敬語を使わないっていうのは、なんか変な感じがする。でも、この世界では年上に敬語を使うっていうのは常識じゃないのかもな。
「わかった。これでいいかな?」
「ああ、それでいいよ」
「ユイも敬語なんて使わなくてもいいからね」
リーシアが唯香にそう言う。
「うん。わかった」
唯香もそれに答える。この世界に来てから同年代の女の子っていえば王女様くらいだったから気軽に喋れる友達ができて嬉しいようだ。
俺たちも依頼の目的は達成していたのでそのままカインたちと一緒にギルドまで帰った。
「はい。お疲れ様でした。依頼の達成を確認しました。こちらが報酬のリルになります」
俺たちはあの後、カインたちとギルドのロビーで別れ、受付で報酬を受け取った後、お昼ご飯を食べ、午後からまた一つ依頼を受けた。
依頼の内容はまた「採取」の依頼。それを終わらせて今、受付で依頼達成の報告をしたところだ。
「これで3回の依頼達成ですね。あと本来なら『初心の洞窟』での戦闘訓練を受けることでランクを上げることができるんですが、ハルさんたちはその訓練なしでランクを上げることができますよ。どうしますか?」
「え?ランクを上げれるんですか?」
「はい。カインさんたちを助けられたんですよね。元々レベルが高かったというのに加え、カインさんたちがハルさんたちの実力を保証したので、ギルドマスターが直々にハルさんとユイさんの訓練はなしでいいと決められました」
なるほど。カインがギルドマスターに進言してくれたのか。今度会ったときにお礼言わないとな。
「分かりました。お願いします」
そういうことで、なんと依頼を受けた初日でFランクからEランクにランクアップすることが出来た。
「やったね!はるk……ハルくん!!」
唯香……今、春樹って言いかけたよな。
まぁ、まだ慣れてないから仕方ないか。
「ああ、かなりいいスタートをきれたな」
こうして俺たちの冒険者生活初日は順調なスタートをきった。
カインは春樹たちとギルドのロビーで別れた後、ギルドの三階。最上階の一室でギルドマスターが来るのを待っていた。
しばらくすると入り口から一人の男性が入ってきた。年齢は50代中頃。本来は綺麗な茶色をした髪だったのだろうが、色が抜け、肌色に近い色になっている。しかし、鍛え上げられた体は現役時代と全く変わりなくそれが年齢を感じさせない。
かつてはAランク冒険者として大陸にその名を轟かせ、Sランクにもなりえる冒険者と言わしめた人物。それがこのイクシオン冒険者ギルドのギルドマスター、ガイゼクト・ルシルフだ。
「まずはご苦労様っと言っておこうか。カイン、フォル、リーシア、サリア。今回は無茶をさせたな」
低い声。だが、その声には優しさも含まれている。このギルドマスターは見た目に似合わず、優しい性格だということをカインたちはよく知っている。
「いえ、これもCランク冒険者としての役割ですから」
今回の遺跡調査の依頼は本来はBランクに相当する依頼であり、Bランク以上冒険者に依頼するはずだったものだ。しかし、ここ最近は地上でのモンスターの数が多くなっており、その討伐依頼にB、Aランクの冒険者が出てしまっていた。
現在イクシオンにいる最高ランクの冒険者はカインたちしかいなく、危険を承知でカインたちは今回の依頼をCランクの依頼として受けたのである。
「で、どうだったんだ?」
「はい。それが……」
カインは遺跡のでのことをガイゼクトに話した。
「遺跡内でモンスターの大量発生。異常なまでに大きなオーク、か……」
ガイゼクトはカインの話を聞き終えた後、頭を悩ませた。ここ最近、地上のモンスターの活動が活発になりつつある。それが、最近のガイゼクトの一番の悩みの種だ。なぜなら、五年前、魔王が復活した時もそうだったから。
だが、それは一度抑え込むことができた。当時のSランク冒険者たちの手によって……そのため、ここ数年は地上にいるモンスターたちが暴れることもなく、被害も出ずにすんでいた。
しかし、その落ち着きが徐々に崩れ去りつつある。これは、もしかすると……
と、そこまで思考を巡らせたとき、ふと気になったことをガイゼクトはカインに尋ねた。
「そのオークの強さはどうだったんだ?倒せたのか?」
「あ~それが……そのオークはBランク以上の強さを持っていて俺たちじゃ勝てなかったんです」
「そうか。出来ればそのオークの死体を見たかったんだが、あいつらが帰ってきたら討伐依頼でも出すか」
「あ、いえ。そのオークは討伐できたので死体はありますよ。ギルドの裏にあります」
「うん?そのオークには勝てなかったんじゃないのか?」
「それが……」
カインはオークから逃げている最中にハルとユイという冒険者に助けられたことをガイゼクトに話す。
「Fランク冒険者がBランク相当のモンスターを倒したとは信じられんがな……」
ガイゼクトはカインたちの説明を聞いても信じられなかった。カインたちはCランクとはいえ、優秀な冒険者たちでギルドからの信頼も厚く、パーティーでの総力でみるとBランクはある。そんなカインたちでさえ逃げる判断をした強力なモンスターを冒険者の駆け出しであるFランクが倒したのだ。
「でも本当ですよ。ハルさんがそのオークを含め五体のオークを一瞬で倒しました。それに致命傷を負った僕をユイさんがこれまた一瞬で直してくれましたし」
「ハルも凄かったけど、ユイの回復魔法も凄かったね」
「はい。私の回復魔法とは比べ物にならないほどでした」
カインに続き、フォル、リーシア、サリアとパーティーメンバー全員が口をそろえて言うならばそうなんだろう。オークを倒したことを自分たちの手柄にすればいいものを正直に報告するあたり、カインたちの真面目さが出ている。だからこそギルドからも信用されているのだろう。
「分かった。そのオークはギルドで調べることにする。とにかくご苦労様。報酬は用意してあるから下で受け取ってくれ」
報告は終了し、カインたちは部屋から退室した。その後、ガイゼクトは少し部屋に残り考えに耽る。
「もし、俺が考えている通りなら…………ティアナに一応、話を通しておくか」
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