第5話 訓練開始!!


 ―――コンコンコン―――



「う、う、ん……」



 スマホのアラームならぬドアの音で俺は目を覚ました。



「はい……」



 目をこすりながら返事をする。



「朝食の時間になりました。昨晩の食堂までお越しください」



「はい……」



 メイドの人にそう言い俺はゆっくりとベットから起きて、背伸びをする。



「う~~ん」



 徐々に眠気から覚醒してく。辺りを見回して思ったのは



 夢じゃなかったんだな~ということ。



 昨日学校から異世界に勇者として召喚された。あまりのファンタジーぶりに現実か分からなくなるが周りを見て、これが現実だと実感する。



 地球では見ない素材の机や椅子、自分がいるところは城の中にある部屋で窓からは、城下町が少しだけだが確認できる。



「現実なんだよな~」



 着替えて廊下を歩きながらそんなことを考えていると食堂に到着し、朝ご飯を食べる。今回は王と王女は不在だ。



 それもそうか。毎回王族が皆と食べるわけはない。



 朝食はパンとシチュー、ハムのようなものに野菜、そしてフルーツという非常に健康的な食事だ。



 育ち盛りの男子には若干物足りない朝食だが、この理由は後に分かる。



 ご飯を食べ終えると昨日ステータスを確認した広間にやってきた。しばらく待っていると王様がやってくる。



「うむ。勇者たちよ。昨夜はよく眠れたか?」



「はい、用意していただいた部屋も過ごしやすく、とてもよく眠れました」



「それはよかった」



 みんなを代表して桐生が答える。話し役をやってくれるのはありがたいけどみんなの意見を聞かなくていいのか?



 まあ、不満が出てないからいいけど……



「今日から皆には訓練を開始してもらう」



「訓練……ですか」



「さよう。フレリーカから話を聞いたが勇者たちは戦いとは程遠い平和な環境にいたのだろう?いくら勇者としての力があっても戦い方を知らなければ魔王と戦うことは不可能。だからこそ、訓練により戦い方を身に着けてほしい……では勇者たちを指導してくれる騎士を紹介しよう」



 その王の言葉と同時に一人の騎士が前に出る。その騎士は昨日召喚されたときに王女の傍にいた騎士だ。



「彼はこの国の騎士団の団長ライオット・ハルクニル。王国最強の騎士だ。彼に鍛えてもらえればすぐ強くなれるだろう」



 なんと騎士団長だった。まぁ、王女の護衛に着くならそれ相応の実力者じゃないとだめだよな。



「騎士団団長のライオット・ハルクニルだ。訓練では厳しく指導していくからそのつもりでいてくれ」



 渋めの低い声、たくましい体つきに渋く男前な顔。そんな団長からの声に一部女子たちからは興奮した声が、一部男子たちからは嫌な声が上がる。



「うむ。ではライオット、あとは任せたぞ」



「はいお任せください、陛下」



 用はそれだけ。と言わんばかりに国王はこれで退出していった。



「まずは自己紹介だ。さっきも言ったがこの国の騎士団の団長ライオットだ。俺のことはライオットと普通に呼んでくれ。次はみんなの番だな。お前たちの名前を教えてくれ」



 そう言ってみんな順番に自己紹介していく。団長だから偉そうな人かと思ったがかなりフランクな人なためみんな緊張することなく挨拶していく。



「よし!ではみんな、これから訓練場に行くぞ!ついてきてくれ」



 騎士団長について行き俺たちは訓練場に向かった。


















 訓練場は王城の外にあり体育館のような建物だった。ただ広さは体育館の三倍はある広さだ。



 中に入ると何人かの騎士の人が訓練をしている。俺たちは端の方に整列し、騎士団長――ライオットさんが持ってきた箱を眺めていた。



 その箱には剣やら槍やら斧やら……とにかく多数の武器が入っていた。全部木で出来た武器だけど。



「あの……ライオットさん、これは?」



「これは訓練用の武器だ。ここからお前たちには武器を選んでもらう。基本的には武器系のスキルがあるものはその武器を選んだ方がいい。スキルがないものは好きな武器を選んでくれればいい。俺のおすすめとしては男子は剣。女子は短剣だな」



「真剣じゃないんですか~?」



 誰かがそんなことを言った。その言葉にライオットさんは目を細める。



「お前たちはこの世界に来る前まで戦いを経験していなかったと聞いたぞ。そんなものに真剣を渡すことは出来ない。まずは訓練用の武器をしっかり扱えるようになってからだ…………そうなれば、陛下が街一番の鍛冶師が作ったかなりの業物をみんなにプレゼントする。とか、なんとか言ってたな……」



 ライオットさんの言葉で文句を言っていた奴を含め主に男子たちがやる気を見せた。武器。特に剣や槍なんかは男にとってはロマンそのものだ。




 さすが騎士団団長。みんなを上手くコントロールしているな。




「よーし!みんな武器を選んでくれ!全員選び終わったら訓練開始だ」



 ライオットさんの言葉で全員が動き出し、武器を選ぶ。



 俺は片手剣にするか。



 剣の中でもオーソドックスな両刃の剣の「片手剣」を選ぶ。理由としては中二病時代にとあるVRMMOを題材にしたデスゲームものの作品の主人公に憧れて片手剣のレプリカを購入して振り回してたからだ。



 ――フッ……俺は、ソロだ!



 と言ってみたり、



 ――二刀流!!



 って言って剣を振り回したり……







 …………ああああああああああああああああ



 俺の黒歴史がぁぁぁあああ!!近所の奥さんに冷たい目線を向けられた思い出がぁぁぁあああ!!




 と、とにかくそういう理由で扱いが慣れてるからだ。こういうのは自分が一番使いやすいものを選んだ方がいいしな。




「全員選び終わったな。さっそく始めるぞ!……では全員周りの人に武器が当たらないように間隔をとって広がってくれ……よし!まずはその状態で武器を振ってみようか。最初は上から下に……」



 そう言われ各々武器を振る。上から下に振り、また上から下に。



 それを見てライオットさんは一人ずつ悪いところを的確に直していく。腕に力が入りすぎ、重心は中心に、足と腕の動きをそろえて……



 ライオットさんに直された面々は一様に良くなっていく。さすがだとは思うが、これはかなりきつい。出来るまでずっと振り続けなければいけないからだ。




「よし!では次は下から上に……その次は右から左に……その次は左から右に……その次は斜めに……」



 出来たら次、出来たら次というループを繰り返し…………四時間が経過した。




「つ、疲れた~~」



「あ~~、もう立てね~」



 という声が各地から上がる。俺も疲れて地面に座ってるし、柔道経験者の大介ですら座っている。



「いや~、久しぶりに汗かいたぜ!!」



「お前は楽しそうだな」



「だってよ春樹。こういうの楽しくないか?」



 いや、そう聞かれても中学、高校を通して帰宅部だった俺には分からねぇよ。大介も高校からは帰宅部だし。



「そういえば、大介。なんで柔道部に入らなかったんだ?そんなに体動かすの好きなら入ればよかっただろ?」



「お前、今聞くのか?……まあ、いろいろあんだよ」



「そっか……」



 大介がこう言葉を濁すってことは聞かれたくないことだと分かったから俺はもう何も聞かない。おそらく入学直後、俺と大介が出会ったときのことも関係しているだろうからな……



「しかし、朝飯が簡単なものでよかったな。がっつり食ってたら絶対に吐いてたぜ」



 なるほど、朝食がシンプルなものだったのは訓練があることが分かってたからか。



「まぁ、初日はこんなものだろ。明日以降はさらに訓練メニューが増えるから今日はゆっくり休めよ!」



 ライオットさんのその言葉に顔を引きつる奴らが続出した。今この場で立っていられているのは馬鹿げたステータスを持っている桐生と脳筋の原崎だけで、他の人たちは座っているか倒れている状態。



 今日の訓練だけでこんな状態になるのに明日はこれにさらにメニューが増えるのかと思うと絶望するのも分かる。



「はっ!!なんだよお前ら!この程度でへばってるのかよ!」



 原崎がそんな光景を見てここぞとばかりに威張り散らす。特に、佐藤に向かって……



「そうは言うがな、ゴウキ。お前たちは今日訓練を始めたばかりだ。ステータスにより体力と力が上がっているお前とユウキは別だが、他のみんなにとっては相当きついはずだぞ」



 見かねたライオットさんが原崎を鎮めようとするが、



「はっ!!じゃあ俺は特別ってことだ!!おい、騎士団団長だか何だか知らないがお前、さっきから偉そうじゃねぇか?ああん?勇者様にそんな態度でいいのかよ?」



 何を勘違いしたか知らないがライオットさんに向かってそんなことを言う原崎。さすがに言いすぎだ。桐生も止めに入る。



「原崎くん。言い過ぎだ!ライオットさんに謝るんだ!」



「あぁ?なんだよ、桐生。俺たちは勇者なんだぜ!!こいつなんかよりも偉いんだぜ!……なぁ、騎士団団長様よ?俺と勝負しねぇか?」



 原崎がいいこと思いついたというようにライオットさんに提案する。



「勝負?」



「ああ、そうだ。俺が勝ったらこんなくだらない訓練、俺は参加しねぇ……あと、この城の中の物を自由に使える権利も付けろ!」



「俺が勝ったら?」



「別に何も?明日も訓練に参加する……それだけだ」



 なんつーめちゃくちゃなことを吹っ掛けるんだ?このバカは?



 仮にもこの国トップの実力者だぞ?確かに俺たちは勇者だけど、まだレベルは1。



 初期能力は高いだろうけどライオットさんには及ばないし、戦いは能力値だけでは決まらない。相手との駆け引きや技、技術も必要になる。鑑定はしてないけどライオットさんはここにいる全員を相手にしても勝てる実力を持っていると思う。



 そんな相手に勝てるわけない。それにそんな条件、不釣り合いにもほどがある。さすがの桐生も絶句していて原崎を止める余裕がない。



「……わかった。勝負しようか」



 まさかの騎士団長様勝負受けちゃったよ……うわ、めっちゃニヤニヤしてるじゃん。



「へっ!!余裕ぶりやがって。後悔しても遅いぞ!」



 いや、それお前のことだぞ!完全にブーメランじゃん!




 ということで原崎とライオットさんの勝負が始まった。お互いに訓練用の剣――原崎、ライオットさんともに片手剣――だがそれでも当たれば痛いだろう。



「はっ!!」



 まずは原崎が仕掛ける。上から下への切り下ろし攻撃。それをライオットさんは剣で防ぐ。防がれた原崎はそのまま攻撃。今度は右から左への切り払い攻撃。しかし、それもライオットさんが防ぐ。



 ――ガンッ!ガンッ!



 という木で出来た剣特有の音が響く。先ほどから原崎はライオットさんに一撃すら入れれてない。



「どうした?守るので精一杯か?」



 ライオットさんが攻撃してないのを「攻撃できない」と捉えた原崎はさらに攻撃を加える。




 ……分からないのか?



 ライオットさんは守ってるんじゃなくて原崎の攻撃を全ていなしている。守るのではなくいなしだ。



 それは似ているようで全くの別物。いなしには相手の攻撃を正確に見極め、力が乗る前に的確に力を逃がす。途轍もないほどの技術が必要。それがいなしだ。



「はぁ、はぁ、どうしたよ!あぁ??」



 いや、息切れしてんじゃん。そんな原崎の様子を見てライオットさんはもういいとばかりに剣を振るう。



「がhぁぁ!!」



 一閃。たったの一振り。



(っ!?は、速すぎて、見えなかった……)



 あまりの速さの攻撃にその剣筋を追うことは出来ず―――それは原崎もだ。防御できずに攻撃を食らってしまい吹っ飛んだ。



「剛毅!?大丈夫か!?」「息できる!?」



 と、取り巻きの二人が原崎の介抱をする。



「お前たち、今の戦いの内容、わかったか?」



 分かった半分。分からない半分といったみんなの顔を見てライオットさんが解説する。



「ゴウキは確かに力はある。が、それだけだ。今の戦い、ゴウキは力任せに剣を振るった。対して俺はその力任せの剣を受け流し、いなしていた……ただたんに武器は振るえばいいというものではない。武器を正しく使うには技術が必要だ。技術があってこそ力が役に立つ。お前たちは勇者だからこそ力はある。だが、技術がまだない。それが俺とお前たちとの差だ。俺はこの訓練で技術を学んでほしいと思う」



 分かったな。という騎士団団長の言葉にみんなは真剣に耳を貸す。さっきの戦いでこの人の強さが分かったからだろう。



「よし!もうお昼の時間だから、お前たち食堂に行って飯食ってこい!午後からは座学だからな」



 みんなが食堂へと向かう中、俺は密かに妄想再現で再現したスキル《鑑定・極み》でライオットさんのステータスを見た……言っとくがこんなおっさんの個人情報は興味ないからな!あくまでユニークスキルがあるかどうかだからな!



 幸いライオットさんは原崎に何か声をかけているようでこちらに気付いてない。



 名前 ライオット・ハルクニル

 ・王国騎士団団長


 性別 男


 年齢 42

 ・誕生日12月20日


 Lv 68

 ・経験値 70,9870


 HP    3580/3580

 MP    600/600

 攻撃力   1050

 物理防御力 980

 魔法防御力 910

 敏捷性   920

 魔法力   550

 運     60



 スキル

《剣豪》《剛力》《武装支配》《剣技連携》《精神統一》《状態異常耐性》



 称号

【剣帝】【騎士団長】【王国の英雄】


【身ちy……

 はいいぃぃい!!!ここまで!!!



 ここまでで十分だ!!



 いや、いやいやいや。



 てかやっぱりめちゃくちゃ強いな!攻撃力に関しては1000越えだし……



 そりゃ、剣筋みえないよな~。



 一人納得して食堂に向かう。



 俺は納得できたけど問題は原崎だな。あいつ変なプライドとかあるから……











 昼食を食べ終えてからは座学だ。メイドさんが座学を行う場所まで案内してくれる。場所は王城の入り口から見て左側。ちょうど俺たちが召喚された聖堂と反対のところにある建物だ。



 入るとそこは大学の教室のような場所だった。一番前の教卓の場所では一人の女性が本を読んでいた。



「お!来たね!勇者たち!」



 背中までかかる綺麗な赤い髪、整った顔立ちにそれに似合う丸いメガネ。胸は目を引くほどに大きく、スタイルも抜群。



 そんな女性の登場で一瞬固まったが、席に着くように促されてみんな直ぐに席に着く。全員座ったが、さっきライオットにやられた原崎の姿はなかった。



「みんな初めまして!今日からみんなの座学の授業を見るメアリー・アルジェリアだよ!私のことはメアリー先生って呼んでね!よろしく!」



 メアリー先生が自己紹介をしたことにより、それに倣いみんなもそれぞれ自己紹介をする。全員の紹介が終わったのを確認し、さっそく座学がスタートする。



「まずはこの国の歴史についてからね」



 この国は自然豊かな国として遥か昔より栄えていた。


 そして200年前、この世界に魔王が誕生した。それと同時に大量のモンスターがこの世界を蹂躙しだした。人々はモンスターに立ち向かったが、魔王の強力な力で強化されたモンスターにことごとく返り討ちに会ってしまう。


 そんな時にこの国の王女に特殊なスキルが発現する。王女はそのスキルを使い異世界より魔王に対抗できる存在「勇者」を召喚した。


 召喚されたのは5人の男女。その男女はこの世界を回り、力を身に着け、モンスターを倒し、そして魔王に戦いを挑んだ。


 途轍もない激戦の末、なんとか魔王を封印することに成功する。



 そして、この世界に平和が訪れた……



 ここまでの話を真剣に聞いているのは半分くらいだ。俺はラノベを読んでいるようで楽しいが興味がない奴には退屈な話だろう。女子の一部、ギャル組なんかは話し込んで時々笑い声が聞こえるし……



 そんな様子を見てメアリー先生は困った顔をするがすぐに切り替え、



「さて、次はいよいよ魔法についてです」



 みんなが興味をそそる話をすることにした。













 座学が終了したのは午後5時頃だったが、さすがに今日はみんな疲れたのか静かに自分の部屋に戻り、夕食の時間になったらご飯を食べ、お風呂に入り寝た。








 時間は遡り――午後1時頃。原崎がライオットにやられた直後だ。




「剛毅、大丈夫か!?」



 なんだ?誰かの声が聞こえる……



 ゆっくりと意識を戻すとそこには見知った顔があった。



「か、ずき……?」



 いつもつるんでるメンバーの斉藤和樹だ。すぐ近くに清水昭の姿も見える。



 ――あれ?俺はどうしたんだ?



「気が付いたか?」



 その声がした方に顔を向けるとそこにはこの国の騎士団長ライオットがいた。



「気が付いたなら聞け。ゴウキ、お前には力がある。それはステータスだけでなく勇者としての力もだ。だが、その力を使いこなす技術が不足している。それが俺とお前の勝負を決めた差だ。しかし、その技術を身に着ければお前は強くなる。俺をも超すほどにな……悔しかったら技術を磨き知識を身に着け、力に振り回されることなどないように強くなれ!」



 座学をする場所は聖堂の反対側だ。ライオットはそう言い、原崎のもとから離れた。



 俺はその言葉を噛み締める。俺は負けたんだ。



「……っ!?剛毅?」



「自分の部屋に戻る……ついてくんな」



 ついてこられたら感情を出せなくなる。



 俺は城の中をゆっくり歩き、自分の部屋に到着する。



 そして……




「クッッソガアァァァアアア!!!!!!!!」



 感情を爆発させた。



「クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソクソクソクソガアァァァァアア!!!!」



 ふざけんじゃねぇぞ!!どの分際で俺に偉そうに口きいてんだ?あぁ?



 俺は勇者様だぞ!!!!



 なにが技術だ!なにが知識だ!



 この世界では力が全てなんだよ!!!!



「あいつ!!俺に偉そうな口ききやがって!!!俺を傷めつけやがって!!!……殺す!!絶対にぶっ殺してやる!!!!!!」



 あの場には西山もいたんだぞ!!!無様な姿みられたじゃねぇか!!!!!それなのにあいつは!!!



 ぜっっったいにぶっ殺す!!!!!!!!



 そこでふとあいつの言葉が蘇る。



 ――技術を身に着ければお前は強くなる。俺をも超すほどにな。



 そうだ……強くなればいいんだ……



 強くなってあいつをぶっ殺す……そして佐藤もぶっ殺す……そうすれば西山も俺のもんだ……



「フフッ……アハハハハハ」



 その薄気味悪い笑い声が部屋に響いた。









 原崎のもとを去ったライオットは国王に報告に行く道で先ほどのことを考えていた。



(少々手荒な真似はしたが、これで彼が強くなってくれるのならそれでいい。その目的が俺を倒すことだとしても……この国を救う勇者が強くなるなら……希望があるなら……)



 ライオットは原崎のことを「勇者になって調子に乗っている子供」と判断し、勝負に乗った。



 ここで痛い目を見て、挫折を経験させ、悔しい思いをさせればそのリベンジに燃える……と。



 しかし、このときライオットは原崎のクズさを見落としていた。同じリベンジでも全く方向性の違うリベンジに燃えるとは、この時、ライオットは思ってなかった。

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