第4話 妄想再現の力
なんで今まで気が付かなかったんだろう。妄想再現を使ってスキルを再現すればいいだけなのに……
俺疲れてるのかな。今日は早く寝るか。
いや、今はそれより妄想再現を使って鑑定スキルを再現する。
これだな!
よし!さっそく……
ってどう再現するんだ?
妄想すればいいんだよな?
俺はスキル《鑑定》をイメージする。
アニメやラノベにある鑑定……相手のステータス、スキルが目の前に現れる。
それを妄想する。
…………
…………再現できねぇじゃんか!!!
いや、やり方が悪いのか……
待てよ、ひょっとして――
俺はステータスを出し、妄想再現の説明を出す。
《妄想再現》……自身が妄想したスキルを再現し、使用することが出来る。一度に再現できるスキルは5つまで。(再現できるスキルの種類に制限はない)
任意でスキルの解除が可能。解除されたスキルは一定時間経たないと再現できない。(ただし解除しない限り、使用の制限はない)
この説明にはスキルを妄想とは書いていない。自身が妄想したスキル。すなわち自分自身がそのスキルを使用しているのを妄想すると再現できるってことか……
…………
ああああああああああああああああああああああ
まじかあああああああああ
くっっっそが!!!!
それって、中二病になれ!!!って言ってるようなもんじゃん!!!
…………
……いいよ!!やってやるよ!!!!
元中二病なめんじゃねぇ!!!
俺は再び妄想する。今度は鑑定ではなく、鑑定を使っている俺。
――フッ。スキル《鑑定》(低めの声)
――この俺にかかればどんなものでも視ることが出来るぜ!!(キリッ)
あああああああああああああああああああ
何だよ!!その低音は!!何だよ!!その表情は!!
【妄想再現の条件が達成しました】
俺の前にメールが来たみたいに突然メッセージが浮かび上がる。どうやら妄想再現が成功したようだ。
くっっそが!!!
中二病時代の俺の黒歴史が……
しかし、続く次の文でその黒歴史は吹き飛んだ。
【スキル《鑑定》 《鑑定・極み》どちらを再現しますか?】
…………はい?
《鑑定》と《鑑定・極み》?
《鑑定》は普通の鑑定。で《鑑定・極み》は《鑑定》の上位互換ってところか?
効果としては普通の鑑定よりも詳しく鑑定できたり普通は見ることの出来ないものも鑑定できたりする………とか?
マジで?
妄想再現って上位互換のスキルも再現できるの?
確かに説明では再現できるスキルの種類に制限はないって書いてあったけど……
これがマジならやっぱりチート過ぎないか?妄想再現。
とりあえずここはせっかくだから《鑑定・極み》を再現しよう。
目の前にあるメッセージの《鑑定・極み》の方に意識を向けると、
【妄想再現によりスキル《鑑定・極み》を再現しました】
よし!成功。念のためにステータスを見てみると
名前 朝比奈 春樹
性別 男
年齢 16
Lv 1
HP 180/180
MP 100/100
攻撃力 80
物理防御力 75
魔法防御力 70
敏捷性 60
魔法力 80
運 30
スキル
《勇者》《武器強化》《魔法強化》《鑑定・極み》
ユニークスキル
《妄想再現》
称号
【架空の勇者】
よし!しっかりと再現されてる!
これで他の人のステが視れる!
でも、クラスのみんなはさっき見たしな……出来れば王国側の人がいいな。
ふと、周りを見渡すとみんながご飯を食べている光景を楽しそうに見ている王女が映った。
よし!決めた!王女にしよう!
俺は王女に向けて《鑑定・極み》を発動するように意識を向ける。すると、目の前にステータスが浮かび上がる。
よし!成功!
さっそく内容を見てみる。
名前 フレリーカ・フォン・アイゼンブル
・アイゼンブル王国第二王女
性別 女
年齢 16
・誕生日11月11日
Lv 15
・経験値 13,137
HP 162/162
MP 180/180
攻撃力 70
物理防御力 65
魔法防御力 80
敏捷性 75
魔法力 160
運 90
スキル
《世界への導き》《火魔法》《水魔法》《風魔法》《守護術》
称号
【王女】【導き手】
【身長 160㎝】【体重 42㎏】
【バスト 78】【ウエスト 55】【ヒップ 81】
ちなみに処じy……
うおいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
何を鑑定してんだぁぁぁああああああ!!!
余計なもんまで鑑定してんじゃねぇよ!!!
くっっそ!!鑑定・極みになるとこんなことまで分かるのかよ!!
ごめん、王女様……と心の中で謝っておく。
とりあえず、スキルにユニークスキルはなかったな!うん!
ふとここで本当にさっきのステータス確認でしっかりとクラスのみんなのステータスとスキルが分かったのか疑問になった。
いやだって、俺と同じでユニークスキル持ちがいたかもしれないし、隠蔽なんかのスキルで偽装されてたかもしれないし。
レアなスキルってやっぱり勇者が持っているもんだと思うんだよね。俺は。
……いやホントだぞ!
ということでさっそくクラスの女子――佐々木に恐る恐る目を向ける。
そして、鑑定。
名前 佐々木 唯香
・佐々木家長女
性別 女
年齢 16
・誕生日8月30日
Lv 1
・経験値 0
HP 150/150
MP 180/180
攻撃力 30
物理防御力 80
魔法防御力 110
敏捷性 40
魔法力 210
運 45
スキル
《勇者》《賢者》《魔法最適化》《魔力増加》《自然治癒》
称号
【癒しの勇者】
【身長 162㎝】【体重 45㎏】
【バスト 82】【ウエスト 60】【ヒップ 84】
ちなみに処じy……
っよっっっしゃあああぁぁぁぁぁあああああ!!!!!
何がよっしゃぁああ!!か、知らないがよっしゃぁああ!!!
とりあえずユニークスキルはなかったし、ステータス確認で見たステータスと変わらないのが分かった。
これはいい収穫だ!うん!!
で、ふと気になったんだが「である」のか「でない」のか疑問になってきた。
何がとは言わない。が非常に気になる。
おそらく前に「非」が付くのであろうけどそれでも気になる。
何がとは言わないが……
ということでクラスのギャルである霧島奈々を鑑定する。
こいつ、いつも教室で「彼氏がさぁー」とか「ベッドのうえでー」とか平気で言ってたしな。
名前 霧島 奈々
・霧島家次女
性別 女
年齢 17
・誕生日5月26日
Lv 1
・経験値 0
HP 110/110
MP 60/60
攻撃力 40
物理防御力 45
魔法防御力 50
敏捷性 35
魔法力 40
運 35
スキル
《勇者》《魅了》
称号
【魅惑の勇者】
【身長 165㎝】【体重 51㎏】
【バスト 88】【ウエスト 67】【ヒップ 80】
ちなみに非処じy……
うおっっしゃああああぁぁぁぁ!!!!
何がうおっしゃああぁぁ!!か、知らないけどな!!
よし!とりあえずユニークスキルはなかったし、さっきみたステータスと一緒だったな。
「おい、春樹?さっきからきょろきょろして何してんだ?」
「い、いや、なんでもないよ」
「そうか?」
あぶね。鑑定に集中しすぎて周りのこと見えてなかった。
もうこれで鑑定はやめとくか?
いや、いやいやいや
まだいける!
もう少しならいける!!
やましい気持ちはないぞ!やっぱりちゃんとステータスを見なきゃな!って思ったんだよ!
ということで俺はクラス全員のステータスを見た。もちろん男子もだ。
…………嘘じゃないぞ!
結果としてステータス確認の時に見たステータス通りでユニークスキルを持っている奴は一人もいなかった。
やっぱりユニークスキル持ちは俺だけ。40人いる勇者の中で俺だけってことは相当レアってことだな。
これは下手に喋らない方がいいな。こんなスキル持ってるって分かったらみんなにどんな視線を向けられるか分からないし、王国側に利用されるかもしれない。
国王や王女を見ていると疑いたくはないけど、こういう異世界召喚系のラノベは貴族が裏で暗躍していて勇者を利用する……っていうパターンが定番だし。
…………
…………念のためもう一回鑑定するか。
もう一回だけ佐々木に鑑定を使う。
…………うん。やっぱりユニークスキルは黙っておくか。
その後、食事が終了し部屋に戻った俺は部屋に用意されてあった寝間着に着替え寝た。
勇者たちが部屋に戻り寝静まった深夜の時間帯。
王城内の一室にて国王のローランド・フォン・アイゼンブルとこの国の内政を任せている大臣。そして古くから存在する貴族たちが集まっていた。
――ガチャ
そんな部屋に一人の初老の男性が入ってきた。
「勇者たちの中に部屋から出た者はいるか?」
その男性が入ってくるとすぐにローランドが口を開いた。
「いえ、全員部屋にいます」
その男性はローランドに恭しく頭を下げながら答える。男性は春樹たちを部屋へと案内した執事服の男性だった。正確にはこの城にいる執事、メイドを統括する執事長だ。
「そうか。ではこれより会議を始める」
ローランドのその言葉でその場にいた全員が気を引き締める。
「議題は勇者について。特にキリュウ・ユウキについてだ」
「あの勇者のステータスを見た時は驚いて倒れるかと思いましたぞ」
そう言った白髪を後ろで束ね、髪と同じく白い髭を生やした鋭い目つきの男はヘルマン・フォン・オールフェイ公爵だ。ここにいるのは古くからこの国を支える貴族、通称「四大貴族」と呼ばれる貴族の当主たち。そのため口調も少し軽いものになっている。
「本当に……ササキ・ユイカとニシヤマ・カエデの二人のステータスにも驚きましたが……キリュウ・ユウキだけは別格ですね」
次に口を開いた丸いメガネをかけ、紫色の髪を真ん中で左右に分けた髪形の痩せた男はクリフト・フォン・ブライトヒー公爵。
「大臣。勇者に施したアレは問題ないのだろうな」
ローランドの問いにこの国の大臣――ちょび髭を生やした男――コーリック・フォン・ルーズウェルが答える。
「はい、しっかりと付与されているのを確認しました。それに勇者の中には《鑑定》のスキルを持っている者はいませんでした……仮にいたとしてもアレは特殊なのも。例え勇者と言えど、レベル1の勇者にはどうすることも出来ません」
「うむ。ならよい」
「では、陛下。計画通りに?」
そうローランドに低い声で聞いたガタイのいい短髪の赤髪の大柄の男はジーゼット・フォン・アルガンス公爵だ。
「ああ、それで頼む。幸い勇者たちはキリュウ・ユウキを中心にまとまっている。彼さえどうにかしてしまえば大丈夫だ」
「確かに……だが、同じ勇者でもこれほどに違うのか。と思いましたな。確か……サトウ・ケントと言いましたかな?」
そう嫌味を含むように言った緑色の髪を七三分けにした小柄の太った男はデグッド・フォン・エクイラー公爵。これらの貴族、オールフェイ、ブライトヒー、アルガンス、エクイラーが四大貴族と呼ばれる貴族だ。
「あの者は本当に勇者なのですか?ステータスが低すぎる……あれでは田舎の子供にすら劣っています」
「スキルには勇者専用の《勇者》がありましたし、称号にも【勇者】とありましたので、間違いなく勇者かと……」
「勇者であることは間違いない。だがはっきり言って役に立たないだろうな」
「そうですな。まぁ、役に立たないのならこちらとしても脅威にならないということ。放っておいても大丈夫でしょう」
「そうだな。とにかくキリュウ・ユウキに気を付けてそれぞれ行動してくれ」
「分かりました」
春樹たちが知らないところで密かに計画が始動していた………
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