第2話 ステータス確認


「では皆さん。これから皆さんは私の父、この国の国王に会ってもらいます。ついてきてください」



 そう王女に言われみんなついてはいくが、かなり動揺している。国王。つまり王様にこれから会いに行くんだから当たり前だよな。



「あの、王女様。俺たちはこの国の礼儀や作法を知らないのですが……」



「大丈夫ですよ。国王陛下は優しい方なので」



 桐生がみんなを代表して不安な要素を口にするが王女の回答で気が緩む。



 俺はクラスの最後尾を歩いてゆっくりと辺りを見渡す。城は白色を基調とした造りで、柱には彫刻が彫られている。窓からは中庭が見えることから相当な大きさの城なんだろう。



(そういえば王女様がステータスやスキルって言っていたな)



 勇者だからこの世界の人達より高いステータス、スキルがあるって……



 定番っていえば定番だけどステータスとか確認できたりするのか?



 こういうときは……




「ステータス……」



 出るわけないよな~と思いながらもボソッっと定番のセリフを呟いた。



 すると……



――シュン



「……は?」



 半透明なプレートのようなものが俺の目の前に現れた。



 いや、出ちゃったよ!!



 びっくりして一瞬足が止まった。



 よかった、俺最後尾で。



 前に追いつきながら俺はそのプレートに書かれている自分のステータスを確認する。



 名前 朝比奈 春樹


 性別 男


 年齢 16


 Lv 1


 HP    180/180

 MP    100/100

 攻撃力   80

 物理防御力 75

 魔法防御力 70

 敏捷性   60

 魔法力   80

 運     30



 スキル

《勇者》《武器強化》《魔法強化》


 ユニークスキル

《妄想再現》


 称号

【架空の勇者】





 比較できるステータスがないからこれが強いのか弱いのか分からないな。王女の話では高い方だとは思うんだけど……



 スキルとか確認できないか?っとスキルの欄に触れてみると各スキルの説明が出てきた。



《勇者》……勇者専用のスキル。武器に魔族に有効な聖属性を付与することが出来る。



《武器強化》……武器を扱う際に練度・威力を補填する。(すべての武器に対して有効)



《魔法強化》……魔法を使う際に練度・威力を補填する。(すべての魔法に対して有効)



《妄想再現》……自身が妄想したスキルを再現し、使用することが出来る。一度に再現できるスキルは5つまで。(再現できるスキルの種類に制限はない)


 任意でスキルの解除が可能。解除されたスキルは一定時間経たないと再現できない。(ただし解除しない限り、使用の制限はない)



 …………



 …………は?



 ――いや、いやいやいやいや



 上3つはまだいい。だけどこのユニークスキル《妄想再現》はチート過ぎないか?



 だって妄想しただけでどんなスキルでも使用可能。しかも、使用の制限はないって。




 あまりのチートスキルっぷりに唖然としているといつの間にかとても豪華な広間にやってきた。そして正面にはきらびやかな装飾の椅子。おそらく玉座だ。



「では皆さま。陛下が来るまでしばしお待ちください」



 しばらくすると右手の方から50歳くらいの男性が出てきた。王冠を着け、右手には杖。髭を生やし、マントを着けている。いかにも王様って感じの人だ。


 その男性が玉座に座ると同時に王女が俺たちのことを紹介する。



「陛下、こちらが異世界より召喚した勇者たちです」



「うむ。われがこの国の国王、ローランド・フォン・アイゼンブルだ。異世界の勇者たちよ、われらの願いに応じてくれて感謝する。城では手厚い待遇で迎えるので、この世界を救ってくれ」



「ありがとうございます、陛下。我々も全力で戦います」



 クラスを代表して桐生が答える。この答えに国王が納得した顔で頷く。



「では、みなさんにはこれからステータスを確認をしていただきます」



 ステータスを確認?と誰かがボソッと呟く。オタク組やラノベを読んだことのある奴らは「待ってました!」と言わんばかりの笑顔でいた。



「ステータスとは一人一人が有している能力のことです。その能力を数値化して確認するのがステータス確認です。こちらにある水晶に手を当てるとステータスを確認することができます」


 王女がそういうと国王の目の前に紫色をした丸い水晶が出されてきた。あれでステータスを確認することが出来るのか?というよりか自分で確認できるんじゃないのか?



「ステータスはレベル、HP、MP、攻撃力、物理防御力、魔法防御力、敏捷性、魔法力、運の9つのステータスがあり、他にも持っているスキルや称号がこれで分かります。では一人ずつこちらに来て、この水晶に手を当ててください」



 王女がそういうが最初に行くのは中々に勇気がいる。誰もいかなそうだったので桐生が手を上げそうになった時、



「はっ!!みんなビビってんのかよ!俺から行くぜ!!」



 そう言って出てきたのは原崎だ。その取り巻きの二人――清水昭しみずあきら斉藤和樹さいとうかずきもいる。



「では、こちらの水晶に手を当ててください」


「ああ」



 原崎が水晶に手を当てると水晶が光だし、真上に半透明のプレートが出現した。そこに書かれているステータスは……



 名前 原崎 剛毅


 性別 男


 年齢 16


 Lv 1


 HP    210/210

 MP    60/60

 攻撃力   150

 物理防御力 55

 魔法防御力 50

 敏捷性   35

 魔法力   20

 運     15



 スキル

《勇者》《狂戦士》《筋力増加》



 称号

【狂気の勇者】




 このステータスをみて王国側の人達にどよめきが起きる。



 ――なんだ?



 確かに俺と比べてHPと攻撃力が高いけど完全に脳筋のステータスだし、何よりもチートなスキルであるユニークスキルがない。俺からしたら微妙なステータスだ。



――普段威張ってる原崎も俺よりか下だな



 ちょっと気持ちよくなっているとき、王女が声を上げた。



「さすが勇者さまですね……この世界の人達の平均的なステータスはレベル1でHPが100、MPが50、運以外が30前後なんですがそれを大幅に超えています」



「さすが剛毅!」「さすがっ!!」と取り巻き二人が褒め称える。それに良くした原崎は周りにいばり散らかす。



 その後、取り巻き二人も確認し、それにつられる形でみんなも確認する。それで分かったけど原崎のステータスは他のクラスメイトたちよりも少し高かったようだ。攻撃力が高かったり防御力が高かったり、敏捷性が高かったりとそれぞれ高い能力はあれど、みんな似たり寄ったりなステータスやスキルだ。



 中には勇者としては微妙なステータス、スキルの奴らもいた。オタク組(ヒョロ、メガネ、デブの三人)や普段クラスでギャアギャア騒いでいるギャル組なんかがそうだ。



 例として、オタク組の一人(デブ)の鈴木忠すずきただしのステータスを挙げると



 名前 鈴木 忠


 性別 男


 年齢 16


 Lv 1


 HP    120/120

 MP    60/60

 攻撃力   40

 物理防御力 35

 魔法防御力 40

 敏捷性   25

 魔法力   30

 運     10


 スキル

《勇者》《短剣術》


 称号

【短剣使いの勇者】



 とこんな感じで微妙なステータスだ。それを見た時は見るからにへこんでたしな。



 そして、今のところユニークスキル持ちは一人もいない。



 これは俺だけがユニークスキル持ちとして注目されるパターンか?そうであれば凄い優越感を得られるけどその分注目されるから嫌だな~。



 とそんなことを考えているとクラスのマドンナ、佐々木唯香と西山楓の順番が来た。



 あの二人はユニークスキル持ってそうだな。完全にヒロインポジだし。



 まずは佐々木が水晶に触れる。そこに表示されたステータスは……



 名前 佐々木 唯香


 性別 女


 年齢 16


 Lv 1


 HP    150/150

 MP    180/180

 攻撃力   30

 物理防御力 80

 魔法防御力 110

 敏捷性   40

 魔法力   210

 運     45



 スキル

《勇者》《賢者》《魔法最適化》《魔力増加》《自然治癒》


 称号

【癒しの勇者】



 広間にかなりのどよめきが起きる。俺も少し驚いた。突出すべきは魔法力。まさかの210だ。そして、スキル。みんな2つから3つ程なのに佐々木は5つ所持している。



「すごい……」



 これには王女も唖然としている。



「すごいじゃん!!唯香!!」



「うん、ありがとう。楓ちゃん」



「よし!私も負けてられないぞ!」



 と意気込んで西山が水晶に手を当てる。現れたステータスは……




 名前 西山 楓


 性別 女


 年齢 16


 Lv 1


 HP    170/170

 MP    200/200

 攻撃力   60

 物理防御力 85

 魔法防御力 95

 敏捷性   65

 魔法力   190

 運     25


 スキル

《勇者》《五属性魔法》《魔法最適化》《魔力増加》《魔法範囲指定》


 称号

【魔道の勇者】



 またもやどよめきが起きる。MP200に魔法力190。そしてスキル5つ。王女はまたもや唖然としている。



「すごいよ!楓ちゃん!」



「ありがとう!唯香!」



 お互いを褒め称える二人。そんな二人に王は



「素晴らしい!さすが勇者だ!!」



 と興奮気味に二人をほめた。ありがとうございます!と返す二人。



 だけど、ユニークスキルは持ってなかったな。あの二人も持ってないならユニークスキルって相当レアなスキルなんだろう。まあ、ユニークって付くくらいだからな。



 すると俺の隣にいた大介が声をかけてきた。



「さすがだな~あの二人は」



「まあ、ヒロインポジだからな~」



「いいのか?そんな呑気なこと言ってて」



「何がだよ……」



「いや、あれだけ高いステータスだ。あの二人いろいろ狙われるぞ」



 まあ、元からいろいろな男に狙われてるけどな――と大介は付け加えた。



――こいつ俺が佐々木のことを好きなこと知ってるから茶化しやがったな。



 だが、大丈夫だ。俺にはユニークスキルがあるからな。と少し余裕ぶってみる。



「……なんかお前余裕そうだな」



「そうか?」



「まあ、ここで言ってても仕方ない。ステータスを確認しに行くか」



「了解」



 俺たちは水晶の前まで行く。まずは大介からだ。




 名前 会津 大介


 性別 男


 年齢 17


 Lv 1


 HP    190/190

 MP    50/50

 攻撃力   45

 物理防御力 100

 魔法防御力 100

 敏捷性   35

 魔法力   30

 運     20


 スキル

《勇者》《盾術》《護り手》


 称号

【護りの勇者】



 ステータスとスキルをみるからに防御役だな。そして、ユニークスキルはない。



「なるほどね、俺は防御特化か……」



「まあ、お前にあってんじゃね?背高いし、柔道やってたから体格いいし」



「だな……」



 と大介が水晶の前から退いたことでいよいよ俺の番が来た。ここまで来ればもう確定だろう。



 ユニークスキル持ちは俺しかいない!



 目立つのは嫌だが仕方がない!ここは俺の見せ場だな!



 そして、俺は水晶に近付き、



 視よ!!我がステータスを!!!



 ドヤ顔で意気揚々と水晶に手を置いた。そして、表示されたステータスは……




 名前 朝比奈 春樹


 性別 男


 年齢 16


 Lv 1


 HP    180/180

 MP    100/100

 攻撃力   80

 物理防御力 75

 魔法防御力 70

 敏捷性   60

 魔法力   80

 運     30



 スキル

《勇者》《武器強化》《魔法強化》



 称号

【架空の勇者】



「ふむ、ステータスもスキルも大したことはないな」



 と、国王様ボソッと一言。













 …………は?なんで……?



 呆けている俺の隣に来た大介は一言。



「どんまい……」



 そう言い俺の肩に手を置いた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る