淡く茶色の髪
ツヨシ
第1話
私は当時、カタログ販売の会社で品質管理部門に勤めていました。
会社は販売するだけなので、商品は他社で製造しており、私の仕事は企画と検品でした。
そして担当していた商品は靴下です。
会社に入荷された商品の一部を選んで検品していました。
ある日、検品した靴下に一本の長い髪の毛が編みこまれていました。
靴下は基本的に機械で編み上げるのですが、その髪の毛はきれいに編みこまれており、どう見ても製造過程で混入したものでした。
淡い茶色の髪の毛で、少し光沢を帯びています。
私はふと、どこかで見たような髪の毛だと思いましたが、考えてもなにも浮かびませんでした。
当然不良品なので、取引工場に返品しましたが、工場側から「こんな髪の従業員はうちにはいない」と申し出がありました。
それでもやはり不良品と判断されました。
それ以降も同じ髪の毛が混入した靴下が納品されました。
その都度工場側との話し合いが行なわれましたが、結局全て返品され、最終的には会社創業以来の取引があるその工場との契約が解除されるまでに至りました。
それから数日後の日曜日。
仕事が休みの私は起きて出かけようと、靴下を履こうとしました。
これまでに何度となく履いてきた靴下です。
しかしその靴下に、長く淡い茶色の髪の毛が編みこまれていたのです。
終
淡く茶色の髪 ツヨシ @kunkunkonkon
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