第5話 魔法と宗教(ゴブリンスレイヤー考察)
ゴブリンスレイヤーという、とても面白いライトノベルがあります。
めちゃくちゃヒットして、コミカライズ、アニメ、映画と色々な媒体で作品が作られていますので、きっと触れたことのある方も多いでしょう。私も大好きで、既刊を何度も読み返す作品です。
さて今回の話題は、魔法と宗教。
この観点でゴブリンスレイヤーという物語を見ると、色々考えさせられることがありましたので、とっかかりとして語っていきます。
この物語では、いわゆる魔法に類するわざを使う人々を、大きなひとくくりで「呪文遣い」としています。
呪文遣いの中には、ざっくり分けて、信仰の力(奇跡)を使う職業と、術(魔法)を使う職業があります。
主人公たるゴブスレさんのパーティには呪文遣いが三人おり、前者に属するのが女神官と蜥蜴僧侶、後者が鉱人道士(ただしやや中間寄りの雰囲気もある)、であると読み取れます。
また信仰は、同地域内でたくさんの神がそれぞれ祀られており、信徒に様々な恩恵や奇跡を授けています。
これらが、善の側の状況。
対して、闇の勢力には
つまり基本的には、善の側に属する人々は祈るものになるのですね。
まあ特別な信仰を持ってはいなさそうな人物もたくさんいる、というか職業で明記されていない限り何も信仰していないようにも見えます。
(ちなみに、ゴブリンスレイヤーの世界観はTRPGが下敷きなので、
さてここで、リアルの地球の宗教事情を考えると、大手の一神教、伝統宗教の視点では、自分のところ以外の神を信仰する者は異端であると考えます。なんなら戦争になります。
しかしどうやら、異端でも信仰があるだけまだ理解できる範疇、とも考えるようです。無宗教、無神論者となるとそれはもうとてつもない不埒ものと思われるのだとか。
なるほど
ちなみにゴブスレ世界では、基本的には宗教対立はほとんど描かれません。違う神を祀っていても相手を否定しないし、よその神は別の神として尊重しているようです。
おたくのとこでは◯◯って呼ぶみたいだけど、それうちの神と同じものだからね、とか、それ神じゃねーし、みたいな考え方ではないので、ざっくり大きくは多神教に近い思想なのかもしれません。(一部、邪神として扱われる闇の勢力が崇める神もいるようです)
このざっくり多神教的な思想の世界観は、魔法がある世の中を描く場合に便利です。
なんでかというと、一神教がメインの地域を描く場合、魔法はそこに属するものか?それとも迫害を受けるものか?を考える必要が出てくるからです。
だって神はうちのとこの一人だけで、あとは違うよ、って思想なら、人智を超えた力を自分とこの神以外が振るうのを許さないと思うんですよね。
かつて私が書いていた物語(個人サイトでの連載で、現在はどこにも公開していないもの)で、『魔法の存在する地球』のヨーロッパの架空の国を舞台にしたことがあります。
この話では、某大手の伝統一神教は、一部の奇跡を除いて原則魔法を異端として扱う設定にしました。
舞台となる架空の国は、迫害を受けた魔法使いを保護した領主が祖となった国で、某大手との関係としては、総本山ではなく独自の宗派を国教とする、魔法使いが起こした国だから信仰はあまり熱心じゃない、みたいな設定だったと記憶しています。すでにややこしい。
多神教的世界観は、これらの問題をえいやとスルーできるところが便利、というわけです。みんな違ってみんないい、仲良く喧嘩しなってやつです。
しかし、リアル地球や、リアル地球寄り異世界を舞台にする場合、ここらの問題って本当に悩ましい。
なにしろヨーロッパ圏の文化って、人名から思想風俗まで、何もかも某大手が土台になってるので、そこを引っこ抜くとおかしなことになるんですよね。
かといって、某大手そのものとか近いものを描写する場合、魔法を普通に受け入れてるように書くの、歴史を思うと違和感があるわけです。
同じ場所に架空の一神教を突っ込むか、完全に宗教についてスルーするか。
でもスルーしたらしたで、冠婚葬祭の描写が果てしなくいづく(方言)なる……!
なんなら昔のヨーロッパで教会(あっ言ってしまった)は人口把握つまり戸籍のような役割も担っていたので、出生や死亡の情報をどうしていたのか問題も発生してしまう。
ほんとに悩ましい。
皆さんはどうしていますか?(またこのしめかた……)
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