第8話 男じゃ無いの?

香が俺の家に籠城した。

何を言っているのかと言われたらその通りとしか言いようがないんだが。

簡単に言ってしまうと俺の事で嫉妬して籠城したのだ。

それはそうと何で嫉妬しているのだ。


中野と俺が一緒の姿を見てからの話だ。

そして籠城してからの話としては中野が一応、香を説得して開けてもらい。

香と中野と共に俺は話していた。

その中でジュースを飲んでいる中野が香を見つめる。

そして顎に手を添える。


「でも香君は何度見ても女の子の様に見えるね」


「.....え?そ、そうかな.....」


「うん。何だか.....男の子に見えないかなって感じ」


俺は答えながら.....顔を引き攣らせる。

何というかビクビクな感じだ。

本当に何時バレるかと思いながら、だ。

前にも言ったかも知れないがバレる訳にはいかない。


それは香にとっては一番嫌な事だから、だ。

俺は冷や汗を流す。

すると香が横から小声で突っついてきた。

そしてジト目をして俺を見てくる。


「兄貴。冷や汗流したらバレるって。マズいって」


「す、すまん。しかしな.....」


「もー。しっかりして」


「は、はい」


その様子に中野は目を丸くする。

何の話をしているの?、と、俺に向いてくる。

俺は、何でもないぞ、と否定する。


そして、ハハハ、と隠す様に苦笑した。

中野は?を浮かべながら、そう?、と答える。

そしてそんな様子を見ながら中野は、あ、と声を上げて香を見た。

それから笑顔を見せる。


「そういえば香君って好きな食べ物ある?もし良かったらお菓子作って来るから」


「え?僕ですか?.....そうですね.....マドレーヌかな.....」


「じゃあ八重島君は?」


「俺はクッキーだが.....何故そうなるんだ?」


何でって言われたら.....作りたくなったからね。

言いながら、じゃあ今度、作ってくるね。

と満面の笑顔を見せる.....中野。

それに対して目を合わせる事が出来ず赤面した。

すると足を踏ま.....イッテ!?


「.....兄貴.....」


「.....す、すまない」


キッと香に睨まれた。

俺は苦笑いを浮かべる。

どうしろってんだ.....しかも女に赤面するのは男だから仕方が無いんだぞ、と思いながら香を見る。

しかし何でここまで嫉妬しているのだ。

俺は考えながら香を見る。


「うーん。それにしても仲が良いんだね。香君と八重島君」


「そ、そうだな。うん」


「兄貴とは仲が良いですよ。し・ん・み・つです」


それなりにニコニコする香。

いやいや香.....お前。

言葉に怨念が籠っている気がするんだが。

何だってんだよ.....。


と思いながら見ていると香が立ち上がった。

トイレ行って来るね、とである。

そして俺をギロッと見てくる。

変な事をしないでね、と威圧でも掛ける様に、だ。

それから去って行った。


「本当に仲が良いんだね。嫉妬しちゃうな」


「まあな。それなりには仲が良いよ。でも.....アイツも来たばっかりだからな」


「だね。気を付けない.....あれ?何か落ちてる」


言いながら足元に有った赤い手帳の様な物を拾った。

俺は、え?こんな場所に誰の手帳だ?、と思いながら見る。

それから中野は手帳の背を見てから。

思いっきり見開いた。

え?と言いながら、だ。


「.....これ.....香君じゃ.....?」


俺に手帳の裏を見せてくる中野。

目をパチクリしながら立ち上がって見る。

それから青ざめた。


香の.....幼い頃だろうか?スカート姿が映っているプリクラが貼られている。

とても可愛い女の子.....ってそういう問題か!

え!?あの馬鹿野郎?!

ドジにも程が有るだろ!?


「.....えっと.....え?」


「.....こ、これはだな。落ち着け。中野」


「.....待って。もしかして.....香君って.....香さんなの?」


「.....ッ」


しまった。

何でこんなドジな事を.....!

と思っていると香が帰って来た。

そして俺達を見て思いっきり目を見開いた。

それから青ざめる。


「.....な.....何で.....」


「お前な.....バレたぞ。香.....何で手帳を落とした事に気が付かなかったんだ.....」


すると中野がゆっくり立ち上がった。

そして香を真剣な顔で見つめる。

香はタジタジした。


それから中野は.....何故か知らないが。

香を抱き締めてから優しく背中を撫でた。

驚愕する香。


「.....え?」


「.....君も悩んでいるんだね。私みたいに」


「.....え?.....それって.....」


そして中野は涙を浮かべた。

俺は目を大きく開ける。

香は.....ジッと中野を見つめた。

そして、一緒って?、と聞く。

中野は直ぐに答えた。


「.....私も同じだよ。男装していた。.....その事は八重島君も知っている。話したんだけど.....うん」


「え?どうなって.....」


「私も強くありたかったんだ。でも.....違ったんだよ。それを八重島君に教わったの」


「.....お兄ちゃんが?」


アハハ、お兄ちゃんって言うんだね普段は。

と中野は涙を拭う。

それから.....笑顔を見せた。

そして俺を見てくる。

でも酷いなぁ、と言いながら、だ。


「隠さなくても良いじゃん。八重島君」


「.....それがソイツのポリシーだったんだよ。御免な」


「.....でもそうだよね。隠したくなるよね。うん」


「.....」


それから中野は香の手を握る。

そして優しく撫でた。

確かに女の子の手だね、と。

懐かしいなぁ、男装。

とも呟く。


「.....私も毎日が戦いだった。だから.....貴方の気持ち、凄い分かる」


「.....」


「初めてかな。こうして.....同じ人に出会ったの」


「.....私もです」


恥ずかしがりながら頬をゆっくり掻く香。

俺はその姿を見ながら、なんかバレて良かったんじゃないだろうか、と思う。

何だかそんな気がした。

俺は少しだけ顔が柔和になる。

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再婚して義弟.....?が来ました。でも義弟の本来は???だった。 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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